パラサイト難婚社会の(山田昌弘)の書評

a bride and groom walking on a hill

パラサイト難婚社会
山田昌弘
朝日新聞出版

パラサイト難婚社会の(山田昌弘)の要約

山田昌弘氏は、現代の日本社会を「難婚社会」と呼んでいます。その理由は、結婚を取り巻く厳しい状況にあります。具体的には、結婚したカップルのうち3組に1組が離婚しており、60歳以上の3分の1がパートナーを持っていないという現状があります。 著者はこれらの難婚社会の問題点を明らかにし、その解決策を提案しています。

パラサイト難婚社会に突入した日本

いくら保育所を増設しても、男性の育児休業取得率を高めようとも、日本人の出生数は回復しません。なぜなら日本の少子化の背後には、極めて日本的な「結婚観」「未婚観」「離婚観」が隠れており、そこを直視しないことには、日本人は今後も積極的に「結婚しよう」「子どもを産もう」と思わないからです。(山田昌弘)

家族社会学者の山田昌弘氏は、本書で「難婚」というキーワードで、現代社会における結婚、未婚、離婚というテーマに焦点を当てています。個人化が進む日本の現代社会において、パートナーシップや結婚に対する考え方はこの数十年で劇的に変化しています。

家族社会学を論じる際に大切なのは、二つの視点だと著者は指摘します。
①社会の側からの視点
②個人の側からの視点

これらの視点を通じて、現代社会における結婚、未婚、離婚の現象をより深く理解することができます。
①社会の側からの視点
少子高齢化問題は国が早急に手を打つべき喫緊の課題です。国家としてのマクロな視点や対策を講じるためには、社会全体の動向や傾向を把握することが重要です。結婚率の低下や離婚率の増加は、社会全体に大きな影響を及ぼします。例えば、労働力の減少や高齢化による社会保障費の増大といった問題が挙げられます。これらの問題に対処するためには、政策的な介入や社会的な支援が必要です。

②個人の側からの視点
社会全体の動向を理解するためには、個々の人々の意識や行動を深く理解することが必要です。「なぜ、結婚したくないのか(したいのか)」「なぜ、子どもを持ちたくないのか(持ちたいのか)」「なぜ、離婚したいのか(したくないのか)」「なぜ、未婚のままでいたいのか(いたくないのか)」「そもそも、結婚・未婚・離婚の意味とは何なのか」──こうした表に出にくい声なき声にこそ、「結婚しなくなった日本人」のリアルな本音が潜んでいます。 これらの問いに対する答えは、個々の生活や価値観、経験によって異なります。

著者は、日本における結婚率の低下や離婚率の増加など、夫婦関係に関する様々な課題を浮き彫りにしています。例えば、経済的な不安定さや職場環境の変化、価値観の多様化が、結婚やパートナーシップに対する期待や現実を大きく変えています。

若者たちは、結婚を選ばずに独身を貫くことや、結婚生活の中での自由や個人の成長を重視する傾向が強まっています。このような現象は、家族や社会全体にどのような影響を及ぼしているのかを、著者は詳細に考察しています。 

さらに、山田氏は、パートナーシップや結婚における問題点だけでなく、その背後にある社会的な要因や構造も論じています。例えば、ジェンダーの役割や期待、経済的な不平等、育児や介護の負担など、結婚生活に影響を与える多くの要因を取り上げています。

これにより、読者は結婚やパートナーシップの問題を単なる個人の問題としてではなく、社会全体の構造や制度の問題として捉えることができるようになります。 

現代日本では、結婚という制度そのものが見直される時期に来ているとも言えます。若者の間では「結婚するメリット」が感じられにくくなっていることが、結婚率の低下に拍車をかけています。また、離婚率の増加は、結婚生活における期待と現実のギャップが広がっていることを示唆しています。結婚生活の中で感じるストレスやプレッシャーが、個人の幸せや満足感を損なうことが多くなっているのです。 

日本人の結婚観が変化した理由。なぜ日本は難婚社会なのか?

結婚・未婚・離婚をはじめ、子どもを持つ・持たない、家庭を持つ・持たないは、極めて個人的な問題です。しかしながら、その個人的な問題を「すべて皆さんの自由ですよ」と任せっきりにできないところに、つまり国家が介入せざるを得ないという点に、「少子化対策」の難しさ、大いなる矛盾が潜んでいます。基本的には、「結婚したい人はすればいい」「未婚という道を選ぶのも個人の自由」「離婚したい人はすればいい」と私も考えています。

「結婚した3組に1組は離婚する」「60歳の3分の1が人生を共にするパートナーを持っていない」「男性の生涯未婚率が3割に届こうとしている」——これが現代日本の現実です。

この現状は、個々の人生に大きな影響を与えるだけでなく、社会全体にも深刻な影響を及ぼしています。  生涯独身で、経済的に恵まれ、友人も多く、青春を謳歌し続けられる人もいるでしょう。

しかし、今後、多くの高齢者や若者が「孤立」「孤独」に追い立てられることになるとしたら、それは憂慮すべき未来です。特に高齢者の孤独死や若者の社会的孤立が増加する可能性があります。とはいえ、かつての戦時下のように、国が国民に対して「産めよ、殖やせよ」と大号令をかける時代ではありません。

現代は恋愛も結婚も未婚も離婚も、すべて「個人」が選ぶべき時代です。選べる時代であり、選ばなくてはならない時代なのです。しかし、「一億中流社会」から「格差固定社会」にシフトする中で、経済的自立ができない人たちは、結婚や出産に躊躇し、人口減少に拍車をかけています。

①経済的不安
経済的な不安定さや雇用の不確実性が、結婚や出産を躊躇させる大きな要因です。若者が安定した収入を得ることが難しい現代社会では、結婚や子育てに対する経済的な負担が重く感じられます。

②仕事と家庭の両立の難しさ
長時間労働や過労によるストレスが、家庭生活との両立を難しくしています。特に女性に対する出産や育児の負担が大きいことが問題視されています。

③価値観の多様化
個人の価値観やライフスタイルが多様化し、結婚や子育てが人生の必須条件ではなくなっています。自分の時間や自由を優先する若者が増えてきています。

④恋愛や結婚に対するプレッシャー
社会的なプレッシャーや期待が、恋愛や結婚に対する躊躇を生み出しています。結婚や出産が一つの「義務」として感じられることが、若者たちにとって負担となっています。

本書のベースとなる結婚の考え方は、結婚 とは「愛情」と「経済的安定性」 であり、特に後者の経済的安定性が重要だと言います。下流化が進行する日本においては、経済的に安定していることが結婚生活の基盤であり、それが愛情を育む土壌となっていると著者は言います。

特に女性にとって、誰と結婚するかによって自分の人生が大きく変わります。相手の職業や収入によって暮らしぶりは大きく変わり、どこに住むか、相手の親と同居するか、仕事を続けるか、子どもを産むかなど、さまざまな要因がその後の人生に大きな影響を与えます。結婚、同居、出産、育児というライフステージを経る際に生活基盤がないことに女性はリスクを感じているのです。

日本人(特に女性)は、「結婚」に、「愛情」と「経済的安定性」の二つを求めざるを得ないのです。

このような状況から、日本人は、結婚において「愛情」と「経済的安定性」の2つを求めざるを得ないのです。

現代の日本において、結婚は単なる愛情の結びつきではなく、経済的な安定も重要な要素とされています。これは、経済的な安定があることで、生活費や将来の不安を抱えることなく、夫婦が安心して愛情を育むことができるからです。

安定した収入や貯蓄があれば、将来に備えた計画的な生活が可能となり、精神的にも安定します。これにより、夫婦は日常生活の中でお互いを支え合い、安心して共に過ごすことができます。経済的な安定がないと、将来への不安や生活費の不足によるストレスが夫婦関係に悪影響を及ぼす可能性が高まります。

そのため、女性が婚活市場で「イケメン・高学歴・高収入」という条件を求めるのは、将来の安定した生活を築くための合理的な選択なのです。経済的な安定性と愛情の両方を求めることは、現代日本の結婚において避けられない要件となっています。

また、日本にはシングルマザーの貧困問題があります。シングルマザー世帯が経済的に困窮している現状を改善するためには、国家が養育費を払う仕組みを整えることが不可欠です。これは、先進国としての責務であり、少子化問題を解決するためにも重要な対策です。

日本は「皆婚」社会から「難婚」社会へと変化し、さらに「結婚不要社会」へとシフトしています。この変化は、結婚に対する価値観や社会的な役割が大きく変わってきたことを示しています。 

今、10年後、20年後どころか、数年先の生活も先行き不透明で、「子どもを生み育てられるのか」確信を持てない社会となった結果、人々は「愛情さえあれば、後は何とかなる」とは思えなくなっています。それこそが夢物語であり、「結婚」は「経済的安定性」がなければ持続可能ではないことを、「離婚が3組に1組の時代」だからこそ、若者は痛感しているのです。

現代日本の結婚は、愛情だけでなく経済的安定性も必要とされる複雑な関係です。女性が婚活市場で高い条件を求めるのは、将来の安心した生活を築くための合理的な選択であり、この背景には社会全体の変化が影響しています。日本が「結婚不要社会」へとシフトする中で、結婚に対する新しい価値観と社会支援が求められています。

新自由主義的経済発展により、あらゆる選択が個人の責任とされる時代になりました。政府の「自助・共助・公助」の方針により、個人の努力が求められ、結婚の成功や失敗も個人の責任とされています。 結婚には、情緒面を満たす「恋愛」と、経済面を保障する「結婚」の2つの重要な側面があります。

しかし、これら2つのゴールを同時に達成するプレッシャーは大きく、どちらか一方に集中するのが難しいのが現実です。もし結婚の条件が「相手のことが好き」という愛情問題だけであればシンプルですが、実際には「愛情」+「経済的安定性」の両方が求められます。この結果として、結婚率が低下し、少子化が進行しています。 

現代の日本社会では、新自由主義的な価値観が強調され、個人の選択と責任が重視されています。結婚においても、成功や失敗は個人の努力と選択に委ねられ、社会的・経済的サポートは限られています。このため、結婚に対する不安やプレッシャーを感じる若者が増え、結婚を躊躇するケースが多くなっています。この傾向は、日本の少子化問題とも深く関係しています。 

結婚相手に対する期待が高く、情緒的な充実と経済的安定の両方が求められ日本では、結婚することがが厳しくなっています。なぜなら、これら2つの要素はしばしば相反し、同時に達成することは難しいというのがその理由です。多くの若者が感じるプレッシャーは、このジレンマに起因し、結果として結婚に対する意欲が低下し、結婚率の低下や少子化が進行してると著者は指摘します。

日本社会の結婚・離婚の課題とは?

「学業」も「職業」も、「結婚」も「未婚」も「離婚」も「結婚相手」も、すべて自分で選べる自由。それは嬉しいことのように見えて、同時に怖いことでもあります。その結果を誰のせいにもできないからです。そうなると幸せすらも、そのすべてが自分自身の選択の結果になってきます。選択がたまたまうまくいけば「幸せな人生」となり、失敗すれば「それを選んだのはあなたでしょう」と言われる恐怖。その責任の大きさに、現代人はすでに疲れ始めています。

近年、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が実施した調査結果に注目が集まっています。この調査は、18歳から34歳の未婚者を対象に行われました。調査によると、男性未婚者の81.4%、女性未婚者の84.3%が「いずれ結婚するつもり」と答えています(2021年実施)。この結果からも、若年層の8割以上が実際には結婚を望んでいることが明らかになりました。 しかし、実態は追いつかず、日本は難婚社会になっています。

若年層が「未婚」でいる理由の最多は、「適当な相手にまだ巡り合わないから」です。この理由は24歳から34歳の男女共に共通しています。次いで多い理由は、「結婚する必要性を感じないから」や「結婚資金が足りないから」となっています。つまり、多くの若者が未婚であるのは自らの選択というよりも、結果としてそうなっているという現実が浮かび上がります。 

適当な相手が見つかり、結婚する必要性を感じ、結婚資金や生活資金が十分にあれば、未婚の若者たちは「いつでも結婚したい」と考えています。しかし、そのような理想的な状況を手に入れることは容易ではありません。現在同居中の父母が面倒を見てくれる便利で安心な生活を放棄してまで「結婚したい」と思える相手に巡り合うことが難しく、結婚してやっていけると確信が持てる経済的基盤を得ることも困難です。そのため、多くの若者が結婚に踏み切れないのです。 

私たちは「結婚」や「未婚」、「離婚」や「結婚相手」までもが自由に選べるようになりました。この選択の自由は一見すると喜ばしいことのように見えますが、同時に大きなプレッシャーともなります。選択の結果を誰のせいにもできないという現実があるからです。 たとえ選択がうまくいけば「幸せな人生」となりますが、失敗すれば「それを選んだのはあなたでしょう」と責められる恐怖があります。しかし、多くの現代人はこの選択の自由にプレッシャーを感じ、疲れ始めていて、結婚できずにいるのです。 

日本の未婚社会の実態は、適当な相手を見つけることの難しさ、結婚の必要性を実感できない状況、そして結婚資金や生活資金の不足が背景にあります。若者たちは結婚を望んでいるものの、その希望を実現するための条件が揃わないため、結果として未婚のままでいるのです。この現実を理解し、社会全体で支援していくことが求められています。

「個人化の時代」とは、当事者夫婦以外にも、「親の選択」が新世帯に大きな影響を与え続けるということです。夫婦の意思決定に、妻・夫・それぞれの両親という複数人の意思と選択肢が錯綜し、「正解」を悩み続けるのが「個人化の時代」の特徴なのです。

近年、日本では結婚の「正解」とされるロールモデルが消滅しつつあります。かつては、結婚とは一定の年齢で、一定のステータスを持つ相手と、定められた形で行うものという社会的な規範が存在しました。しかし、現代においてはこのような固定観念は次第に崩れ、多様な結婚の形が認められつつあります。これに伴い、社会全体で家族の在り方が大きく変化してきました。 

旧世代の価値観は依然として多くの家庭に根強く残っており、その影響は現代の若者にも及び、親子関係を複雑なものにしています。特に、個人の自立や子育てにおいて、経済的および精神的な負担が「社会」ではなく「家族」に大きく依存している現状は深刻です。このような価値観の影響下で、多くの家庭が個々のメンバーに過度な負担を強いる結果となっています。

このような背景から、日本では離婚数の増加が顕著に見られます。家庭内での不和やストレスが蓄積することで、「家庭内離婚」や「家庭内別居」といった現象も増加傾向にあります。これらは一見、表面的には結婚が維持されているように見えますが、実際には実質的な関係が破綻している状態です。こうした問題は、家族内での負担の不均衡やコミュニケーション不足が大きな原因となっています。

著者の『「結婚したら幸せ」という単純な図式はもはや通用しなくなっている』という指摘が刺さりました。現代の日本では、結婚生活における不幸や困難が広がっており、その結果、結婚を選ばない若者が増えているのも理解できます。

現在、日本社会は結婚と家族の在り方について大きな転換期を迎えています。旧世代の価値観が未だに多くの場面で影響を及ぼしていますが、これを見直すことが急務です。伝統的な結婚観にとらわれず、パートナーシップや共同生活など、多様な関係性を尊重することが重要です。 

また、互いの自立性を認め合い、コミットメントする覚悟が問われています。他者との比較ではなく、自分とパートナーの幸せの形を基準に結婚を考えることが必要です。この人にコミットメントしたいと思える相手を見つけることができれば、幸せになれそうです。当然、希望が足りない日本を変える努力も欠かせません。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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