Think Fast, Talk Smart 米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力(マット・エイブラハムズ)の書評

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Think Fast, Talk Smart 米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力
マット・エイブラハムズ
翔泳社

Think Fast, Talk Smart (マット・エイブラハムズ)の要約

著者はは、ビジネスにおける予期せぬ質問やプレゼンの機会に対処する方法を指南しています。冷静さを保ちながら、明確で効果的なコミュニケーションを実現するための具体的な戦略を教えてくれています。6つの方法を身につけ、トレーニングを積むことで、突発的な状況での対応力が向上します。

コミュニケーションを良くするための考え方と話し方とは?

思考のスピードを上げ、よりスマートな話し方を身につけること(Think Fast, Talk Smart)は、誰にでも可能です。 (マット・エイブラハムズ)

スタンフォード大学ビジネススクールの教授のマット・エイブラハムズは、現代のビジネス環境で不可欠なコミュニケーションスキルの向上に焦点を当てました。著者は、米国のスタンフォードでの豊富なワークショップ経験を基に、実際のビジネスシーンで直面する課題に対応するための実践的なアプローチを提供しています。また、TEDxスピーカーとしても活躍しています。

本書の核心は、瞬時の適切な反応を可能にする技術にあります。ビジネスの世界では、予期せぬ質問や突然のプレゼンテーションの機会が頻繁に訪れます。エイブラハムズは、こうした状況下でも冷静さを保ち、クリアで効果的なコミュニケーションを実現するための具体的な方法を読者に伝授します。人は好意的な反応が得られるとリスクを取ることに積極的になれるのです。結果、緊張が解け、チャンスを受け入れられるようになります。

本書で紹介されている6つのステップは、コミュニケーションスキルを身につけたい人には参考になると思います。この方法論は、即興的な対話や予期せぬ状況での発言に対する不安を軽減し、自信を持ってコミュニケーションを行うための実践的な戦略を読者に提示しています。

①CALM 不安感をなだめる
最初は、コミュニケーションにおける緊張や不安は普遍的な経験であるという認識からスタートします。特に即興的な発言が求められる場面では、この緊張感はより顕著になります。エイブラハムズは、この自然な反応を認識し、個々人に適した不安対処法を開発することの重要性を強調しています。
・「緊張」ではなく、「興奮」と捉え直す。
・マインドフルネスの実践。(他社視点で自分を観察し、緊張している自分を受け入れます。)
・呼吸に集中する、冷やす、水分補給をする。
・身体の動きを遅くすれば、喋るスピードも遅くなる。
・頭が真っ白になったら前言を繰り返す。

②UNLOCK 邪魔な完璧主義から脱する
次は、コミュニケーションに対する根本的な姿勢の変革です。従来の「評価される」という視点から、「関係構築の機会」という前向きな捉え方へのシフトを著者は提案します。

不完全なパフォーマンスでも良しとする意識を持ち、自分の頭を切り替えるのです。そこそこで良いと考えられるようになるほど、話しての能力が上がり、説得力も強まると著者は言います。

その際、ヒューリスティック(直感的な思考法)に話したり、行動するなどの決まりきったパターンから脱却し、自分が置かれている状況を確認します。いつも通りという視点をやめ、コミュニケーションを単なる情報交換以上のものとして捉え、相互理解と協力の基盤を築く重要な機会として認識すると、自分らしい答えが見つかります。

エイブラハムズは、コミュニケーションにおける「ミス」を映画の撮り直しのように考えることを提案し、失敗を恐れるのではなく、それを成長の機会として活用する姿勢を奨励しています。

しなやかなマインドセットが重要な理由

③REDEFINE 厄介なマインドセットを変える
3番目のステップでは、リスクを恐れず、失敗を学びの機会として捉える心構えを育成します。日々の決まりきった考え方から離れ、好奇心を持って新しいことに挑戦します。そうすることで、思わぬ発見や喜びが待っているかもしれません。 未知の場所に行ってみたり、予期せぬ会話に身を任せたりするのも良いでしょう。これらの経験を、不安に思うのではなく、成長のチャンスだと考えるのです。

そうすれば、コミュニケーション能力が向上し、人と話すことがより楽しくなるはずです。 突然の出来事や邪魔が入っても、逃げ出さずに向き合ってみましょう。そうすることで、意外と良い結果が得られるかもしれません。 誰もが、程度の差はあれ、新しい機会を前向きに受け止める力を持っています。 たとえ悪意のある人に遭遇しても、誠実に対応することで乗り越えられます。

話し手自身がリラックスし、その場に意識を集中して楽しめれば、周囲の人も同様の気分になります。前向きで、オープンで、好奇心にあふれた聞き手の姿勢によって、話し手の調子はさらに上がっていきます。 話を聞くマインドセットを持っていれば、解決策を授けようと焦ることなく、質問を投げかけ、その答えに耳を傾け、さらに質問を重ねるでしょう。

効果的なコミュニケーションと個人の成長を促進する4つのマインドセット転換を著者は紹介しています。

1. 硬直からしなやかに 成長マインドセットの採用
キャロル・ドゥエックが提唱した「成長マインドセット」は、能力や才能が固定されたものではなく、努力と学習によって発展させられるという考え方です。このマインドセットを採用することで、失敗を学習の機会として捉え、新しい挑戦に前向きになれます。批判を建設的なフィードバックとして受け入れ、継続的な自己改善への意欲が高まります。(成長マインドセットの関連記事はこちらから

実践には、「まだできない」ではなく「まだできるようになっていない」と考え、新しいスキルの習得に挑戦し、困難を成長の機会として捉えることが有効です。

2. 主役は聞き手 アクティブリスニングの重要性
効果的なコミュニケーションには、話すスキルと同様に聞くスキルも重要です。アクティブリスニングを実践することで、相手との信頼関係が深まり、誤解を減らし、より正確な情報交換ができます。また、新しいアイデアや視点を得られ、相手の感情や非言語的なメッセージをより良く理解できるようになります。 実践するには、相手の話を遮らず最後まで聞き、言葉を言い換えて確認し、適切な質問をして理解を深めることが大切です。

3. 「そう、でも」から「そう、それで」へ 肯定的な対話の構築
「そう、それで(Yes, and…)」というアプローチは、即興演劇の基本原則ですが、日常のコミュニケーションにも応用できます。このマインドセットの転換により、対話がより建設的になり、創造性と協調性が促進されます。相手の意見や提案を尊重する姿勢が育ち、批判的思考から解決志向の思考へと移行できます。 実践には、「でも」の代わりに「それで」を使う練習をし、相手の意見に付け加える形で自分の意見を述べることが効果的です。

4. 次の一手に集中 現在に焦点を当てる
過去の失敗や成功に固執せず、常に目の前の課題に集中することは、高いパフォーマンスを維持するために不可欠です。このマインドセットにより、ストレスや不安が軽減され、現在の状況に対する判断力が向上します。過去の失敗に囚われず新たな挑戦ができ、継続的な改善と成長が可能になります。 実践するには、マインドフルネス瞑想を取り入れ、「今、ここ」に意識を向ける習慣をつけることが有効です。

これら4つのマインドセット転換を意識的に実践することで、より柔軟で適応力のある思考が身につき、個人的および職業的な成長が促進されます。日々の小さな変化から始めることで、長期的には大きな変革をもたらすことができるでしょう。しなやかなマインドを培うことは、変化の激しい現代社会を生き抜くための重要なスキルとなります。 

準備と練習が重要な理由

④LISTEN 耳を澄ますことで聞き手のニーズを探り当てる
4番目のステップでは、積極的な傾聴スキルの開発に重点を置いています。相手の言葉だけでなく、言外の意味にも注意を払い、同時に自身の内なる声や直観にも耳を傾けることの重要性を説いています。この複合的な傾聴アプローチは、より深い理解と共感を可能にし、効果的なコミュニケーションの基盤を形成します。

相手が何を伝えようとしているかの本質にもっと注意を払うだけで、日常生活における大小さまざまなすれ違いは避けられます。

傾聴を効果的に行うために、3つの重要なステップがあります。 まず、ゆっくりと聴くことです。時間に追われず、相手の話に集中することが大切です。ゆったりとしたペースで聴くことで、相手への敬意を表すことができます。

次に、考える余裕を持つことです。相手の言葉を言い換えたり、質問したりすることで、内容を整理し理解を深める時間を作ります。これにより、より深い洞察を得ることができます。

最後に、自分にも優しくなることです。相手だけでなく、自分の内なる声にも注意を向けましょう。不安や完璧主義を抑え、予想外の展開をチャンスとして捉えることが大切です。

効果的なコミュニケーションのコツは、相手と自分の両方に意識を向けることです。相手の言葉と自分の内なる声を照らし合わせることで、より深い理解と心の通った対話が可能になります。このアプローチを実践することで、コミュニケーションの質を大きく向上させることができるでしょう。

⑤STRCUTURE 咄嗟に話の流れを組み立てる
5番目のステップではメッセージの構築と伝達のスキルを高めます。ここでは、情報をより明確に、適切に、そして説得力を持って伝える技術を学びます。このスキルは、複雑な考えを簡潔かつ効果的に伝える能力を高め、聴衆の理解と共感を促進します。

コミュニケーションを効果的に行うためには、柔軟性と準備が鍵となります。事前に基本的な枠組みをいくつか用意しておくことで、様々な状況に適切に対応できるようになります。ただし、これは台詞を暗記するということではなく、状況に応じて適切な構造を選択できるようにするためです。

コミュニケーションの基本は、話を「はじめ、中、終わり」という構成で組み立てることです。単なる情報の羅列ではなく、ストーリー性を持たせることが重要です。優れたストーリーは、単に情報を伝えるだけでなく、聞き手に意義を感じさせ、新たな気づきを与え、さらには行動を促す力を持っています。このようなシンプルで力強いストーリーは、自然と人々の間で共有されていくものです。

具体的な構成としては、話題と聴衆に応じて以下の3つのパターンを考慮するとよいでしょう。「問題-解決策-利得」という説得型、「過去-現在-未来」という時系列型、「比較-対比-結論」という対照型です。状況に応じて最適な構成を選ぶことで、メッセージをより効果的に伝えることができます。

このアプローチを実践することで、即興的な場面でも自信を持ってコミュニケーションを行うことができ、相手の心に響くメッセージを伝えることが可能になるでしょう。

⑥FOCUS 簡潔にまとまった伝え方で聞き手の関心を離さず、説得力を増す
最後のステップでは、焦点を絞ったコミュニケーションを習得します。核心を簡潔に伝え、不必要な情報で聴衆の注意をそらさない方法を学びます。この技術は、メッセージの明確さと影響力を最大化するのに役立ちます。

効果的なコミュニケーションを実現するためには、焦点の定まったメッセージが不可欠です。そのようなメッセージには4つの重要な要素があります。

まず「精度」です。これは情報の正確さと細部への注意を意味します。次に「関連性」で、聞き手にとって意味のある、適切な内容を提供することです。「わかりやすさ」は、複雑な概念を簡単に理解できるよう説明する能力を指します。最後に「簡潔さ」は、無駄を省き、核心をつく表現を使うことです。 これらの要素を意識的に磨くことで、コミュニケーション能力は大きく向上します。

精度の高い情報を、聞き手に関連する形で、わかりやすく、かつ簡潔に伝えることができれば、メッセージの影響力は格段に高まります。 結果として、聞き手の注意をより強く引きつけ、心に深く響くメッセージを届けることができます。また、こうしたメッセージは記憶に残りやすく、長期的な影響力を持つことになります。

アドリブでの対応に本当に必要なのは練習と準備です。時間をかけて古い習慣から抜け出し、意識的に選択することを学べば、誰でもその場で考えて話せるようになります。矛盾するようですが、いざという場面でうまく話せるように、あらかじめ準備が必要なのです。努力して話し方のスキルを習得しておくと、話す内容に考えを集中でき、自分らしさを存分に発揮できます。

エイブラハムズは、これらのテクニックの一部は即座に実践可能であると指摘しつつ、真の熟達には時間と練習が必要であることを強調しています。まずは試すことが重要だと言います。

本書で紹介されるテクニックは、ビジネスの文脈に限らず、日常生活のあらゆる場面で応用可能です。私は毎週大学でインタラクティブな授業を行っていますが、これがコミュニケーション力を磨く絶好の機会になっています。授業では、学生から思いがけない質問が飛び出すことがありますが、これらに即座に対応することで、アドリブでの会話力が自然と向上していきます。

このような経験は、教室に限らず日常生活のさまざまな場面でも見つけることができます。家族との会話、友人との雑談、職場でのミーティングなど、日々の対話の中にも実践の機会は豊富にあります。

大切なのは、これらの機会を意識的に活用することです。予期せぬ質問や状況に直面したとき、それを恐れるのではなく、スキルアップのチャンスととらえましょう。こうした姿勢で日々のコミュニケーションに臨むことで、どんな場面でも臨機応変に対応できる力が自然と身についていきます。

本書は単なる理論書ではなく、読者が実際の生活の中で即座に活用し、徐々に磨いていける実用的なツールとなっています。継続的な実践と反復を通じて、読者は自分のコミュニケーションスタイルを徐々に改善し、より効果的なコミュニケーターへと成長することができるでしょう。

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