イノベーションの経済学 「繁栄のパラドクス」に学ぶ巨大市場の創り方(クレイトン・M・クリステンセン)の書評

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イノベーションの経済学 「繁栄のパラドクス」に学ぶ巨大市場の創り方
クレイトン・M・クリステンセン
ハーパーコリンズ・ジャパン

イノベーションの経済学(クレイトン・M・クリステンセン)の要約

市場創造型イノベーションは、発展途上国の「無消費者」に新たな製品やサービスを提供し、彼らを消費者に変えます。これにより経済全体が活性化します。政府の支援と他の起業家への刺激により、イノベーション文化が途上国に根付き、持続的な繁栄への道が開かれます。

無消費の中にイノベーションの種を見つける!

繁栄を「多くの地域住民が経済的、社会的、政治的な幸福度を向上させていくプロセス」と定義した。  この定義は重要である。国によっては──たとえば天然資源に恵まれた国では、「豊か」ではあっても繁栄していない可能性がある。繁栄は、経済的、社会的、政治的な自由度を高め、石油など特定の資源への依存度を下げる。(クレイトン・M・クリステンセン)

クレイトン・M・クリステンセン、エフォサ・オジョモ、カレン・ディロンによるイノベーションの経済学(The Prosperity Paradox)は、世界の貧困問題に対する斬新なアプローチを提唱する画期的な著作です。本書は、従来の経済開発モデルの限界を指摘し、市場創造型イノベーションこそが持続可能な繁栄をもたらす鍵であると主張しています。

著者らは、トップダウン式の援助や資源投入だけでは真の経済発展は望めないと説きます。その代わりに、地域のニーズに根ざした持続的な繁栄の創出が、雇用を生み出し、経済成長を促進する強力な手段となると論じています。

著者らは繁栄を単なる経済的な豊かさではなく、より包括的な概念として捉えています。天然資源の豊富さは必ずしも社会的流動性や持続可能な豊かさにつながりません。 真の繁栄は人々の自由度を高め、特定資源への依存を減らします。また、機会の探求、イノベーション、多様な市場を育む文化が必要です。

著者たちは、繁栄への道を理解するには貧困の根本原因を理解することが重要だと説きます。この視点は、持続可能な経済発展の新しいアプローチを考える基盤となります。

本書では、セルテル、Mペサ、オプティカス・ベル・デ・ベルダッド、マイクロエンシュア社のケースを紹介し、途上国でのイノベーションの起こし方を示しています。

クリステンセンが提示する「無消費」というコンセプトは、イノベーションと市場創造の重要な出発点となります。著者たちは、不便さが「無消費」の表れであることが多いと指摘しています。

無消費とは、潜在的な消費者が生活の質を向上させたいと強く望んでいるにもかかわらず、それを実現するための製品やサービスを購入する余裕がない、あるいはその存在を知らない、または入手方法がわからない状況を指します。このような状況下では、人々は必要なものなしで我慢するか、不十分な代替策を見つけ出すことになります。

その結果、生活の質はほとんど向上せず、不便さが続くことになります。 従来の経済指標では、この「無消費」の状態を捉えることが困難です。そのため、多くのビジネスパーソンや政策立案者は、こうした市場の潜在的な可能性を見逃してしまいがちです。

しかし、本書で紹介されるイブラヒム・バガシとセルテル社の事例は、「無消費」の中に潜むビジネスチャンスを見事に示しています。イブラヒムは、アフリカにおける通信インフラの不足を「無消費」の状態と捉え、そこに市場を創造するチャンスを見出しました。

当初、セルテル社の設立時には資金も乏しく、従業員もわずか5人でした。しかし、イブラヒムはアフリカ全土のモバイル通信網の構築という大きなビジョンを掲げました。この取り組みは、多くの困難に直面しながらも、最終的にアフリカの通信革命を引き起こすことになります。

セルテル社の成功は、「無消費」の状態に着目し、そこに革新的なソリューションを提供することで、全く新しい市場を創造できることを示しています。この事例は、従来の経済指標や市場分析では見落とされがちな機会が、実は大きな潜在的価値を秘めていることを教えてくれます。

貧困の解決と長期的な繁栄はつながらないのだ。繁栄をもたらすのは新しい市場を創造するイノベーションである。教育や医療、行政機構、インフラなど、繁栄との関連が強く示唆される指標を改善するための資源を貧困国にいくら注ぎ込んでも、持続性のある真の繁栄が創出されるわけではない。国が繁栄しはじめるのは、特定のタイプのイノベーション、すなわち市場創造型イノベーションに投資したときだ。

価値あるモノにお金を払う人を顧客にすることで、新たなイノベーティブな市場を創造できます。著者たちは、このような市場創造型イノベーションこそが、持続可能な経済発展と真の繁栄をもたらす鍵であると主張しています。

それは単に既存の市場で競争するのではなく、これまで存在しなかった市場を新たに作り出すことで、多くの人々の生活を改善し、同時に経済成長を促進する力を持っているのです。 この視点は、特に発展途上国における経済開発のアプローチに大きな示唆を与えています。

従来の援助や投資に頼るのではなく、現地の「無消費」の状況を深く理解し、そこにイノベーションの種を見出すことが、真の発展につながる可能性があるのです。

イノベーションの3つの型

クリステンセンはイノベーションを3つの型に分類しています。これらの型は、経済発展と繁栄に異なる影響を与えるため、理解することが重要です。

・持続型イノベーション
持続型イノベーションは、既存の市場に存在する製品やサービスを改良するものです。これは、多くの企業が日常的に行っているイノベーションの形態です。例えば、スマートフォンの新モデルが毎年リリースされ、カメラ性能やバッテリー寿命が向上するのは、持続型イノベーションの典型例です。

この型のイノベーションは、既存の顧客基盤を満足させ、市場シェアを維持するのに重要です。しかし、著者たちは、持続型イノベーションだけでは新たな雇用を生み出したり、経済全体を大きく成長させたりすることは難しいと指摘しています。

・効率化型イノベーション
効率化型イノベーションは、より少ない資源でより多くのことを行えるようにするものです。これは、生産性を向上させ、コストを削減することを目的としています。例えば、製造プロセスの自動化や、ビジネスプロセスの最適化などが該当します。 効率化型イノベーションは、企業の収益性を高め、競争力を強化するのに役立ちます。

しかし、著者たちは、この型のイノベーションが採用には良い影響を及ぼさないと指摘します。短期的には企業にとって有益であっても、長期的には経済全体の成長を抑制する可能性があるのです。

・市場創造型イノベーション
著者たちが最も重視しているのが、この市場創造型イノベーションです。これは、全く新しい市場を創造するイノベーションです。市場創造型イノベーションは、これまで製品やサービスにアクセスできなかった「無消費者」を新たな消費者に変えることで、経済全体に大きな影響を与えます。

ケニアのMペサは、携帯電話を使った革新的な送金・決済システムで、銀行口座を持たない多くのケニア人に金融サービスへのアクセスを提供しました。 これは単に既存の銀行サービスを改良したのではありません。Mペサは、全く新しい市場を創造したのです。その結果、多くのケニア人が初めて正式な金融システムにアクセスできるようになり、個人間送金や支払いが容易になりました。

著者たちは3つのイノベーションをT型フォードの飛躍とシェアの後退で説明します。フォードのモデルTは、単なる自動車の発明以上の影響をアメリカ経済にもたらしました。この市場創造型イノベーションは、莫大な雇用と税収を生み出し、アメリカ経済に大きな波及効果をもたらしました。

モデルTの普及に伴い、競合企業が現れ、自動車業界全体の効率と活力が増大しました。アメリカ人の車への愛着が高まり、行政は道路整備で応えました。この好循環により、1909~1927年の間にフォードは1500万台のモデルTを製造しています。

フォードの革新は、単に自動車を作り出しただけではありません。新しい市場を創造するビジネスモデル自体が重要でした。このイノベーションの成果は、製品そのものよりも、フォードが構築したバリューネットワークとビジネスモデルにありました。大衆向けの自動車販売には、低価格車の製造だけでなく、ガソリンスタンドの整備や輸送インフラへの投資、新たな顧客層へのマーケティングなど、多面的な取り組みが必要でした。

しかし、フォードは市場創造には成功したものの、持続型イノベーションへの投資が不足していました。その結果、1921年に60%あった市場シェアが、1936年には第3位に転落しています。一方、頻繁なモデルチェンジや多色展開、掛け売り制度などを導入したGMが43%で首位、クライスラーが25%で2位となりました。

この例は、市場創造型イノベーションが成長の基盤を作り、持続型イノベーションと効率化イノベーションがその基盤上で企業と経済の活力を維持し、発展させる役割を果たすことを示しています。長期的な成功には、これら3つのイノベーションのバランスが重要であることがわかります。

市場創造型イノベーションによる3つの成果

市場創造型イノベーションは、高機能で高価なプロダクト/サービスをシンプルで安価なプロダクトに変換し、われわれが「無消費者」と呼ぶ人たちから手の届く状態にする。

市場創造型イノベーションの本質は、高機能で高価な製品やサービスを、シンプルで手頃な価格のものに変換することにあります。 国家の経済を見るとき、私たちは通常、消費者と無消費者という2つのグループに分けることができます。消費者は既存の製品やサービスを利用している人々で、これを「消費経済」と呼びます。

一方、無消費者は何らかの理由で既存の製品やサービスを利用できていない人々で、これを「無消費経済」と呼びます。 この区別は重要です。なぜなら、市場創造型イノベーションにとって最も有望な領域は、この「無消費経済」の中にあるからです。既存の製品やサービスを利用できていない人々のニーズを満たす新しいソリューションを提供することで、全く新しい市場を生み出すことができるのです。

また、この視点は従来の経済指標の限界を理解するのにも役立ちます。GDP成長率などの一般的な経済指標は、主に既存の「消費経済」の状態を反映しています。しかし、これらの指標は「無消費経済」の潜在的な機会を見逃しがちです。 著者たちは、こうした従来の指標から、市場創造型イノベーションにあまり関係のない「ノイズ」を除去することの重要性を強調しています。

つまり、単に既存の経済活動の規模や成長率を見るだけでなく、まだ満たされていないニーズや潜在的な市場機会にも注目する必要があるのです。

途上国での市場創造型イノベーションは、この無消費者を消費者に変えることで、経済全体に大きな影響を与えます。 このイノベーションが成功すると、3つの重要な成果がもたらされます。
①新しい雇用の創出。
新しい製品やサービスの生産、流通、販売には多くの人員が必要となるためです。雇用の創出は、国の繁栄を測る上で極めて重要な指標となります。

②消費者の増加によって生み出される利益
この利益は、教育やインフラ、医療など、社会の公共サービスに投資されることがあります。これにより、社会全体の生活の質が向上し、さらなる経済発展の基盤が整備されていきます。

③社会全体の文化を変容させる可能性
著者たちは、今日の繁栄国の多くも、かつては貧困、腐敗、劣悪な統治機構に苦しんでいた時期があったと指摘します。しかし、市場創造型イノベーションによって、こうした状況を転換するプロセスが始まりました。

例えば、19世紀のアメリカは、現代の発展途上国と同様の課題に直面していました。しかし、シンガーのミシン、イーストマン・コダックの写真機、フォードのモデルTなどの革新的な製品が登場し、これらが新しい市場を創造しました。これらのイノベーションは単に新製品を提供しただけでなく、アメリカ社会にイノベーションの文化を根付かせ、国全体の発展を促進しました。

著者たちは、これらのイノベーションとそれを生み出した多くのイノベーターこそが、アメリカの運命を変え、世界をリードする経済大国へと押し上げたと主張しています。

同様に、第二次世界大戦後の日本の急速な経済成長も、市場創造型イノベーションによるものだと著者たちは指摘しています。ソニー、トヨタ、ホンダなどの企業が生み出した革新的な製品やサービスが、日本を先進国の仲間入りをさせる原動力となりました。

これらの例は、市場創造型イノベーションが単に企業の成功だけでなく、国全体の経済発展と繁栄をもたらす力を持っていることを示しています。新しい市場を創造することで、雇用が生まれ、経済が活性化し、さらなるイノベーションを促進する好循環が生まれるのです。

新しい市場が創造されると、それは他の要素も引き寄せます。インフラ整備、教育の充実、制度の改善、さらには文化的変容までもが促進されます。これらの要素は、新しく生まれた市場の存続と拡大を支えるために必要不可欠なものとなります。こうして、社会全体の発展の軌道が変わり始めるのです。

著者たちの主張は、従来の開発アプローチに新しい視点を提供しています。単に援助や投資を行うのではなく、無消費者のニーズに着目し、彼らを消費者に変えるイノベーションを促進することが、持続可能な経済発展につながるというのです。 この考え方は、特に発展途上国の経済開発に大きな示唆を与えています。

既存の市場で競争するのではなく、全く新しい市場を創造することで、より多くの人々に機会を提供し、経済全体を活性化させることができるのです。

ケニアの金融革命 Mペサは、ケニアの通信会社サファリコムが開発した革新的な送金・決済システムです。2007年のサービス開始以前、ケニアでは国民の85%以上が銀行口座を持っていませんでした。Mペサは、携帯電話を使って送金や支払いができるシステムを提供し、銀行口座がなくてもモバイルマネーの受け取りや支払いが可能となりました。

このサービスは、ケニアの金融環境に劇的な変化をもたらしました。現在では2200万人のケニア人がMペサを利用しており、全国4万カ所以上の代理店を通じて、毎月45億ドル以上の取引が行われています。Mペサは、個人間送金を容易にし、小規模ビジネスの成長を支援し、ケニアだけでなく、アフリカの金融マーケットを大きく変え、アフリカの人たちのデジタル化を推進しました。

メキシコでは、国民の約43%が矯正眼鏡を必要とする視力でありながら、既存の解決策は高価すぎるため、多くの人々が眼鏡をかけずに、よく見えないまま生活していました。この問題に対し、オプティカス・ベル・デ・ベルダッドは、手ごろな価格の眼鏡と視力検査サービスを提供する革新的なビジネスモデルを展開しました。

2011年12月に1号店をオープンして以来、同社は平均単価17ドルの手ごろな眼鏡を販売しています。これまでにメキシコ国内で24万件以上の視力検査を行い、15万本以上の眼鏡を売り上げました。この取り組みにより、多くのメキシコ人が適切な視力矯正を受けられるようになり、生活の質の向上と経済活動への参加機会の拡大につながっています。

著者らは、Mペサやオプティカス・ベル・デ・ベルダッドのような革新的なビジネスモデルこそが、持続可能な経済発展の原動力になると主張しています。これらの事例は、地域のニーズと機会に基づいた市場創造型のイノベーションが、いかに効果的に社会問題を解決し、同時に経済成長を促進できるかを示しています。

市場型イノベーションを起こすために必要なこと

無消費は、途方もないイノベーションのカギとなる。だが、無消費を見つけるには、ほかの人が見逃しているものをとらえる新しいレンズが必要だ。

イノベーションの成功には、顧客が製品やサービスを使って解決しようとしている「ジョブ」を深く理解することが重要です。市場創造型イノベーションは、これまで適切に解決されていなかった問題に対処することで生まれます。

例えば、セルテル社のモ・イブラヒムは、アフリカの人々が遠方の家族と連絡を取るのに苦労していることに気づきました。マイクロエンシュア社のリチャード・レフトリーは、多くの人々が適切な保険にアクセスできていないことを認識しました。

著者たちは、人々は不満足な解決策よりも、無消費のままでいることを選ぶ傾向があると指摘します。レフトリーの保険商品は既存の保険と競争しているのではなく、実際には「何もしない」という選択肢と競争していました。 無消費者の真のニーズを理解することで、新たな市場機会が見えてきます。

無消費は、その地域の人々の苦痛や不便をイノベーションで解決できる大きな可能性を示しています。 この視点は、特に発展途上国での新しいビジネス機会を見出すのに役立ちます。既存の市場を見るだけでなく、まだ満たされていないニーズに注目することで、革新的なソリューションを生み出し、経済発展を促進する可能性があるのです。

その際、イノベーターは、未来の顧客の立場に立って考える必要があります。たとえ競争相手が「無」(何も選択しないこと)であっても、顧客が解決しようとしている「ジョブ」を深く理解することが重要です。 顧客が新しい製品やサービスを「雇用」する(選択する)際の意思決定プロセスは複雑です。著者たちは、この過程で働く2つの重要な力を指摘しています。

1、変化を推進する力
顧客が感じている不満や課題は、行動を起こすほど重大なものでなければなりません。

2、新しいソリューションを引き寄せる力
新しい製品やサービスは、顧客のペインを明らかにした上で、生活を明確に改善し、進歩をもたらすものでなければなりません。

これらの力を理解することで、イノベーターは無消費者の「無関心」や「次善の策」を「解雇」させ、新しいソリューションを「雇用」させることができます。 この視点は、特に新しい市場を創造しようとする際に重要です。

顧客のニーズと行動を深く理解することで、真に価値のあるイノベーションを生み出すことができるのです。これは、既存の製品やサービスを改良するだけでなく、全く新しい市場を創造する可能性を秘めています。

成功するイノベーションは、顧客の真のニーズを満たし、その生活に実質的な改善をもたらすものでなければならないのです。

市場創造型イノベーションは、単なる新製品やサービスの開発以上のものです。それは、企業に利益をもたらすビジネスモデルと結びついた総合的な解決策を指します。この種のイノベーションを実現するために、企業はインフラ、工場、物流、販売網など、ビジネスモデルに必要な全ての要素を整備します。

重要なのは、これらの投資が企業だけでなく、地域社会全体にとっても重要なインフラの基盤となることです。つまり、企業の成長が地域の発展にも直接的に貢献するのです。

ナイジェリアでのトララム社のインドミーヌードルでの事例がこれを象徴しています。30年前にはほとんど知られていなかったインスタントラーメンを、トララムはナイジェリアで一大産業に育て上げました。国からの支援を受けるのではなく、自らバリューチェーンを構築するなどのリスクを取ったのです。

現在、トララムは原材料の92%を自社で管理し、ナイジェリア国内に13の製造工場を持っています。年間45億食以上のインドミーヌードルを販売するまでに成長し、企業としての成功を収めています。

同時に、この成功はナイジェリア経済全体にも大きな恩恵をもたらしています。雇用の創出、技術移転、インフラ整備など、トララムの事業展開はナイジェリアの経済発展に多面的に貢献しているのです。

国が長期的に豊かさを持続するには、イノベーションの文化を育み、支えてくれる政府の存在が最終的には必要になる。ただし、最初の火を点けるのは市場創造型のイノベーターたちであり、政府にできるのはその火を大きくすることだ。多くの繁栄国がたどった成功パターンのとおり、市場創造型イノベーションは国の良質の統治機構に点火し、長期にわたって繁栄を持続させる好循環のきっかけとなることができるのだ。

繁栄の火を最初に点けるのは、市場創造型のイノベーターたちです。彼らは、既存の市場では見過ごされがちな「無消費者」のニーズを捉え、革新的な製品やサービスを生み出します。これらのイノベーションは、新しい市場を創造し、経済活動を活性化させる原動力となります。

政府の役割は、この火を大きくし、持続させることにあります。イノベーターたちが点けた火を、政策や制度を通じて育て、社会全体に広げていくのです。しかし、著者たちは政府が最初からイノベーションを主導することの難しさを指摘しています。多くの場合、政府主導のイニシアチブは、真の市場ニーズを捉えきれず、持続可能な経済発展につながらないことがあるのです。

著者たちは、多くの繁栄国がたどった成功パターンを分析しています。そこから見えてくるのは、市場創造型イノベーションが国の良質な統治機構の形成に寄与し、長期にわたる繁栄を持続させる好循環のきっかけとなるという図式です。

例えば、新しい市場が生まれると、その市場を支えるためのインフラ整備や法整備が必要になります。これらの需要に応えるために、政府は効率的で透明性の高い統治システムを構築する動機を持つようになります。また、新たな経済活動は税収を増加させ、政府がより多くの公共サービスを提供する能力を高めます。

さらに、市場創造型イノベーションは、社会全体にイノベーションの文化を根付かせる力を持っています。新しいビジネスの成功例が生まれると、それは他の起業家たちにも刺激を与え、さらなるイノベーションを促進します。この過程で、社会全体が変革と進歩を重視する文化へと徐々に変容していくのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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