ぼくがジョブズに教えたこと(ノーラン・ブッシュネル)の書評

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ぼくがジョブズに教えたこと
ノーラン・ブッシュネル
飛鳥新社

ぼくがジョブズに教えたこと(ノーラン・ブッシュネル)の要約

アタリ創業者で”スティーブ・ジョブズの最初の上司”として知られるノーラン・ブッシュネルは、組織をクリエイティブにするための51の実践的アドバイスを本書で提供しています。リスクを恐れず、失敗を許容し、多様性を重んじる文化づくりこそが、次世代のイノベーターを育む鍵となるのです。

創造性が企業の優位性になる!

ほかの業種の会社も、実は同じくらい創造性が重要である。皆、それが理解できていないだけだ。創造性が重要となるのは競争があるからだ。どのような会社も、なにがしかの競争にさらされる。(ノーラン・ブッシュネル)

ビデオゲーム産業の先駆者であり、アタリ社の創設者として知られるノーラン・ブッシュネルによる本書は、現代企業が直面する最も本質的な課題、すなわちイノベーティブな人材の発掘と育成について、教えてくれる経営指南書です。

ブッシュネルは、自身がスティーブ・ジョブズを発掘した経験を軸に、創造性豊かな人材を見出し、育成するための具体的な方法論を展開しています。本書は、そうしたブッシュネルがジョブズに授けた数々のヒントをもとに、創造的な会社をつくりあげるための秘訣を51条にまとめています。

創造性は、どの業界においても競争力を高めるための基盤です。著者は、「創造性が重要となるのは競争があるからだ」と述べ、優れた企業は常に製品やサービス、プロセスの改良を追求し、競争の中で先を行く努力を続けると指摘します。

しかし、多くの企業はこの本質を見落としており、従来の枠組みに囚われた採用や評価方法が創造性を阻む要因になっています。創造性は会社のあらゆるレベルで醸成されなければならないのです。

創造性のある人材を採用するためには、従来の採用手法に囚われない柔軟な視点が欠かせません。

スティーブ・ジョブズとほかの社員を分ける特質をひとつだけ挙げろといわれたら、それは情熱だろう。

スティーブ・ジョブズをアタリ社の40番目の社員として採用した時、著者が見出したのは履歴書の向こう側にある情熱でした。「常に全速力で突っ走る」という姿勢は、単なる若さゆえの性急さではなく、後にアップル社を世界的企業へと成長させる原動力となる資質だったのです。

この採用判断は、人材発掘における重要な示唆を私たちに提供しています。情熱を基準とした採用は、組織の核となる人材を見出す有効な手段となり得るのです。

しかし、その情熱を見極めるためには、従来の採用プロセスを超えた創造的なアプローチが必要となります。 ブッシュネルが提唱する斬新な採用手法は、候補者の多面的な評価を重視します。今日は著者の51のアドバイスから私がよいと思ったものをいくつか紹介します。

できる社員の人脈を活用せよ!

クリエイティブな人をみつけるには、採用権限を委譲するといい。世の中には、この権限をつかんで放さない人が多すぎる。権力を振りかざすのが楽しくて、他人に任せようとしないのだ。採用の権限を囲い込んではならない。

人口減少が続く中、多くの日本企業が採用活動において大きな壁に直面しています。特に、創造性に溢れ、革新的な視点を持つ人材を見つけ出し、活用することがますます難しくなっています。ただスキルを備えた人材を探すだけでなく、柔軟な発想と独自の視点を持つクリエイティブな人材を採用することは、企業の競争力を維持するために不可欠です。

しかし、現状の採用プロセスが硬直的であったり、権限が一部の限られた人に集中している場合、こうした人材を見つけ出すことがさらに難しくなります。 本書には、このような課題に対する解決のヒントが散りばめられています。

特に、採用権限を分散し、柔軟性を持たせること、そして社員のネットワークを最大限に活用することが、クリエイティブな人材を見つけ出す鍵になると彼は説いています。 企業が採用活動をより効果的に進めるためには、まず権限の集中を見直す必要があります。

採用を一部の人事部門や管理職に任せるだけでは、多様な視点が失われ、結果として創造性豊かな人材を逃してしまうリスクが高まります。現場で実際にその人材と働くことになるチームメンバーや、柔軟な視点を持つ社員が採用プロセスに関わることで、より適切な判断が下せるようになります。

また、採用権限を委譲することによって、社員自身が主体的に採用活動に関わり、より良い結果を生むための意識改革にもつながります。

さらに、社員が持つ人脈を活用することで、採用の幅を広げることができます。現在の社員は、自分が「また一緒に働きたい」と思う人材を自然と知っています。

このようなネットワークを活用し、社員に推薦を依頼することで、信頼できる候補者を効率的に探し出すことができます。特に、実際に仕事を共にした経験のある人材を推薦してもらう仕組みを構築することで、企業文化に適応しやすい候補者に出会う可能性が高まります。社員同士の信頼関係を基盤にした採用は、スムーズな導入と活躍への道筋を作る上でも非常に有効です。

クリエイティブな人材を活用するためには、彼らの独特な視点や発想を歓迎する文化を醸成することも重要です。創造性を発揮するためには、自由な発想が許される環境が必要です。時に「狂気」とも呼ばれるほどの大胆なアイデアや風変わりな提案が飛び交う場を作ることが、次の革新につながるのです。

ほとんどの会社では、このような奇抜なアイデアが出されると、それを最初から否定してしまう傾向があります。しかし、歴史的に見ても、世界を驚かせた革新的な発想の多くは、当初「そんなのあり得ない」と見られていたものです。

日本の企業が採用活動で成功を収めるためには、柔軟性と想像力を発揮するプロセスを導入する必要があります。新しい採用方法や文化を取り入れることで、企業全体が活性化し、未来に向けた競争力を高めることができるでしょう。クリエイティブな人材の力を引き出す鍵は、企業の文化そのものに根ざしているのです。

読書体験を面接で質問しよう!

クリエイティブな人々をみつけたければ、「どういう本が好きですか」と尋ねるのもいい。読書の質問に体を乗りだしてこないのにクリエイティブな人というのは、会ったことがない。私は、いつもこの質問で採用候補から雑草を取りのぞく。

採用において、クリエイティブな人材を見つけることは、企業の未来を左右する重要な課題です。ブッシュネルが提案する「どにような本が好きですか」という質問は、候補者の内面を探る有効な方法として注目されています。この質問を通じて見えるのは、その人がどのような世界観を持ち、どのように発想を広げているかです。

そして、「好奇心と情熱を持つ人は読書する」という言葉の通り、読書を通じて知識を吸収し、アイデアを形にする力を持つ人材を見つけることができるのです。 著者は、自身の経験から「読書に興味を示さない人がクリエイティブだったことはない」と断言しています。

面接で読書の質問をした際、目を輝かせて語り始める候補者と、空虚な反応を示す候補者では、後者を選ぶ理由が見当たらないかもしれません。これは単なる趣味の話ではなく、その人の好奇心や知的な熱意、さらには独自の視点を持つ能力を見極める指標となるのです。「大事なのは本を読むかであって、どういう本を読むかではない」という著者の言葉が刺さりました。

SF小説を好むエンジニアは、科学や技術の可能性を追求するだけでなく、現実を超えた発想をする傾向があります。一方で、ミステリー小説を愛する人は問題解決の思考が得意であるかもしれません。また、詩や文学を読む人は感受性や表現力に優れていることが多いでしょう。

どのジャンルを好むかは、その人がどのような思考回路を持ち、どんな視点で世界を見ているのかを知るための手がかりとなります。

面接を受ける側にとっても、読書の話題は自身をアピールする絶好のチャンスです。面接に臨む際には、自分が感銘を受けた10冊の本を用意しておくとよいと著者は言います。その本の中で特に印象に残った点や、自身の考えに影響を与えたエピソードを語ることで、自分の好奇心や情熱を伝えることができます。本は単なる知識の源泉ではなく、自分がどんな人間であるかを相手に示すための一つのツールです。

読書は、好奇心を満たし、情熱を燃やす行為です。面接官がこの質問を通じて探っているのは、候補者が新しいことに興味を持ち、それを深掘りして考える姿勢を持っているかどうかです。逆に、読書の話題に何も答えられない場合、それはその人が知的な冒険心を欠いている可能性を示唆します。

好奇心と情熱を持つ人は、読書を通じて得た知識を発想や行動に結びつけられる力を持っています。そのような人材こそ、企業にとって貴重な財産となるでしょう。 採用面接でクリエイティブな人材を見極める際、この読書の質問を取り入れることで、その人が持つ本質的な価値を知ることができます。

失敗を歓迎せよ!

よくないかもしれないと人が提案を渋るのは、失敗を恐れるからだ。そして、失敗を恐れる人が成功することはまずない。だから、まず、失敗してもかまわないという雰囲気を社内に作らなければならない。

新しいことを試みるとき、失敗は避けられないものです。しかし、それは恐れるべきものではありません。むしろ、失敗は上達や成長のプロセスにおいて欠かせない要素です。

ブッシュネルがスキーを例に挙げて述べているように、「一度も転ばないスキーの練習者は上達することはない」のです。この考え方はスキーに限らず、人生や仕事のあらゆる領域に当てはまります。新しいスキルを習得するためには、新たなリスクを取らなければなりません。そして、そのリスクが失敗という形で現れたとしても、それを受け入れ、活用することが重要なのです。

失敗は私たちに多くを教えてくれる「重要な教師」です。成功ばかりを求め、失敗を避けようとする人は多いですが、その姿勢では真の学びを得る機会を逃してしまいます。失敗は、私たちに何がうまくいかないかを教え、次の行動に向けた価値あるデータを提供してくれるものです。

特に新しいことに挑戦する際には、失敗を恐れず受け入れる心構えが不可欠です。 さらに、失敗は全面的な否定ではありません。一つのアプローチがうまくいかなかったからといって、その挑戦全体が失敗というわけではないのです。注意深く振り返り、何が良かったのか、何が間違っていたのかを分析することで、次の挑戦に向けた貴重な教訓を得ることができます。

このプロセスを繰り返すことで、成功への道がより鮮明になり、確実に前進することができるのです。 失敗を恐れる人々は、その背後にある豊富な学びの機会を見逃してしまいます。特に、「失敗について話すこと」を避けることで、さらに大きな問題に直面する可能性があります。

なぜなら、失敗を共有しないことで、その経験から得られる学びが他の人に伝わらず、同じ過ちが繰り返される危険性があるからです。逆に、失敗をオープンに共有し、そこから得られた教訓を組織全体で活用することで、チーム全体の成長を促進することができます。

著者がさらに強調するのは、「失敗にこそ賞を与えるべきだ」という考え方です。彼は、失敗を恥ずべきものではなく、むしろ称賛されるべき行動として捉えています。なぜなら、失敗したということは、それだけ新しい挑戦を試み、リスクを取った証拠だからです。このような文化を育むことで、組織は社員に新しいことを試す勇気を与え、挑戦を奨励する風土を作ることができます。

失敗が評価される環境では、社員は恐れず行動し、次々とイノベーションが生まれるのです。 最も重要なことは、「行動すること」です。行動を起こさなければ何も変わりませんし、失敗を避けようと立ち止まっていては、成長のチャンスを逃してしまいます。

成功への道は、数多くの失敗と、そのたびに得られる学びの積み重ねによって形成されます。挑戦を重ねる中で、私たちは自分の限界を押し広げ、新しいスキルや視点を獲得し、より良い結果を生み出す力を培うことができます。 失敗に賞を与える文化を持つこと。

それは、個人や組織が失敗を恐れずに挑戦を続けられる環境を作るための鍵です。失敗を恐れず、それを学びの機会と捉えることで、企業も人も成長し続けることができます。そしてその中で、新しい成功が生まれるのです。挑戦の先にあるのは、失敗ではなく、成長と可能性なのです。

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