ストーリーテリングが経営者に不可欠な理由。トニー・ファデルのBUILDの書評

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BUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック
トニー・ファデル
早川書房

本書の要約

人々は物語によって感情的に結び付きやすく、論理的な情報よりもストーリーからのメッセージを受け入れやすい傾向があります。経営者はストーリーテリングを積極的に行うことで、メンバーを一つにまとめ、ビジョンを実現できるようになります。また、顧客がファンになり、自社を応援してくれるようになります。

なぜ、経営者はストーリーを語る必要があるのか??

何か新しいことに挑戦するとき、周囲にあなたを信頼してついてきてもらう手段がストーリーテリングだ。大きな決断はつまるところ自分自身が語るストーリー、あるいは誰かの語るストーリーを信じられるかどうかにかかっている。誰もが理解でき、信じることのできるストーリーをつくる能力は、前へ進み、困難な決断を下していくうえでカギとなる。(トニー・ファデル)

トニー・ファデルBUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック書評を続けます。ベンチャー経営者は顧客や従業員、パートナーからの共感を得るため、自社のビジョンやパーパスを物語にして語るべきです。

ストーリーテリングは、物語を通じて自分自身や目標に対する思いを伝えることです。人々は物語によって感情的に結び付きやすく、論理的な情報よりもストーリーからのメッセージを受け入れやすい傾向があります。特に大きな決断を下す際には、自分自身が語るストーリー、または他人が語るストーリーを信じることが重要です。

信じられるストーリーを作り出す能力は、進むべき道や難しい決断をするために必要不可欠です。たとえば、仕事で新しいプロジェクトに挑戦する場合、そのプロジェクトの意義や目的をストーリーに組み込むことで、チームメンバーはより一体感を持ち、共感しやすくなります。

プロジェクトの成功を想像するストーリーを共有することで、参加者は自分たちの役割や貢献の重要性を理解しやすくなります。 信じられるストーリーを作り出すためには、以下の要素を考慮することが重要です。
①目的と意義の明確化
ストーリーは明確な目的や意義を伝える必要があります。それによって、聴衆はなぜそのストーリーが重要なのかを理解しやすくなります。

②感情的な結び付き
ストーリーは感情的な結び付きを生み出す力を持っています。人々が物語の登場人物と共感し、感情的に参加できる要素を組み込むことが重要です。

③共感と理解
ストーリーは理解しやすく、共感を呼び起こす必要があります。抽象的な概念や専門用語を避け、聴衆がストーリーの中に自分自身を重ね合わせることができるような具体的な要素を取り入れることが効果的です。

④メッセージの明確化
ストーリーは明確なメッセージを伝える必要があります。主題や教訓を明示し、聴衆がストーリーから何を学び取るべきかを示すことが重要です。

ストーリーテリングの力を最大限に活用するには、自分自身や目標についてのストーリーを継続的に考え、改善していくことが重要です。

そのストーリーをうまく語り、周囲を旅路に巻き込むことができれば、たとえ提案を裏付けるような確固たるデータがなくても誰もがあなたのビジョンを支持してくれるだろう。

パッションを持ってストーリーを語ることは、人々に信じてもらう上で非常に重要です。私たちは、データや情報だけではなく、心に響くストーリーを通じて感動し、行動に移すことがあります。ストーリーテリングの力は、自身の思いを伝えるために大いに役立ちます。 データや情報が完璧でなくても、ストーリーを通じて自分の思いを表現することで、共感を呼び起こし、他者の心を動かすことができます。

ストーリーは、単なる言葉の羅列ではなく、相手にとっても興味深く魅力的なものである必要があります。相手に対して、自分が何者であるかをストーリーに込めることで、信頼を勝ち取ることができます。

また、目の前の人を味方にするためには、話すタイミングも重要です。データや裏付けが揃うのを待つことが、ときに失敗の理由になることもあります。ストーリーテリングは、相手の心を動かすためのツールですから、適切なタイミングで自分の思いを語ることが大切です。

他の人々のストーリーも注意深く聴き、学ぶことで、より包括的な視点を得ることができます。信じられるストーリーは、人々を鼓舞し、共感を生み出し、大きな決断をする際の道標となるでしょう。

あなたのプロダクトにストーリーが必要な理由

あらゆるプロダクトにはストーリーが必要だ。なぜそれが存在する必要があるのか、顧客の抱える問題をどのように解決するのかを説明する筋書きだ。優れたプロダクトストーリーには3つの要素がそろっている。
・理性と感情の両方に訴える。

・複雑な概念をシンプルに伝える。
・プロダクトが解決しようとしている問題を明確にする。「なぜ」の部分にフォーカスする。

「なぜ」は製品開発において非常に重要な要素です。なぜその製品が必要なのかを明確にすることは、製品開発プロセスにおいて基盤となります。

なぜが重要な理由は以下の通りです。
①パーパス(存在意義)と市場需要の明確化
なぜその製品が必要なのかを明確にすることで、製品の存在意義と市場での需要を把握することができます。この情報は、製品の開発やマーケティング戦略を策定する際に重要な指針となります。製品のなぜを理解することで、その後の開発プロセスがより具体的かつ効果的に進められるでしょう。

②顧客の関心と共感を引き出す
製品を購入する顧客は、なぜその製品が必要なのかを理解し、自身のニーズや問題解決に繋がると感じることが重要です。なぜの説明によって、顧客は製品に関心を抱き、共感を覚えることができます。その結果、製品への興味や購買意欲が高まります。

③ストーリーテリングの基盤となる
製品開発においては、魅力的なストーリーを通じて製品を伝えることが重要です。その際になぜの明確化は欠かせません。なぜその製品が必要なのかをストーリーに取り入れることで、聴衆は製品に興味を持ち、共感を抱くことができます。

④チームや投資家の関与を促す
製品開発においては、チームや投資家の支持と関与が不可欠です。なぜの明確化は、チームメンバーや投資家に製品のビジョンや価値を伝えるための基盤となります。共感を得ることで、より多くの人々が製品に参加し、その成功に貢献する可能性が高まります。

以上の理由から、製品開発においてなぜの明確化は重要な要素となります。なぜその製品が必要なのかを明確にし、それをストーリーテリングに活かすことで、製品の魅力や利点を伝えることができます。それによって、顧客の関心を引きつけ、チームや投資家の支持を得ることができるでしょう。  

スティーブ・ジョブズはストーリーテリングの達人でした。彼は日々ストーリーを紡ぐことで、そのクオリティを高めていたのです。

理由は簡単だ。スティーブはただプレゼンのための原稿を読んでいたわけではない。製品開発の続く何カ月ものあいだ、同じストーリーを毎日毎日社員、友人、家族に語り続けてきた。絶えずストーリーに修正を加え、改善していった。そうとは知らずにストーリーの聞き手となった人々が、困惑した表情を浮かべたり詳しい説明を求めたりするたびに表現を磨き、微調整を繰り返し、完壁に仕上げていった。

ストーリーブランディングは、製品の単なる販売だけでなく、その製品の背後にあるストーリーを通じて顧客に魅力を伝える手法です。この手法を使用することで、資本力のある大企業にも対抗できる可能性があります。なぜなら、ストーリーはお金をかけずに作り出すことができるからです。

成功するストーリーブランディングには、以下の3つの要素があります。
・感情を揺さぶるストーリー
ストーリーは顧客の感情に訴えかけるものでなければなりません。顧客が共感し、心に響くようなストーリーを作り出すことが重要です。感情的なつながりを生み出すことで、顧客は製品やブランドに強い結び付きを感じ、それを支持したくなるでしょう。

・独自性を持つストーリー
ストーリーは独自性を持つ必要があります。他の企業と差別化し、自社の製品の特徴や価値を際立たせるストーリーを作りましょう。顧客にとって特別な体験や付加価値を提供することで、競合他社から差別化されるでしょう。

・シンプルでわかりやすいストーリー
ストーリーはシンプルでわかりやすく伝えることが重要です。複雑なストーリーは顧客の興味を引くことができません。ストーリーを簡潔かつ明快にまとめることで、顧客はストーリーを理解しやすくなり、製品やブランドに対する関心を高めることができます。

ストーリーを作る際には、「なぜ」を考えることが重要です。なぜこの製品が存在する必要があるのか、なぜ重要なのか、なぜ人々はそれを必要とするのか、なぜ夢中になるのか。これらの疑問に対する答えをストーリーに盛り込むことで、顧客に対する説得力を高めることができます。 

他社があなたより優れたストーリーを語ることもある!

市場シェアと同様、マインドシェアにおいても競争がある。ライバル会社があなたよりも優れたストーリーを語れば、あるいはライバルがストーリーを語っているのにあなたが語らなければ、向こうのプロダクトの質が低くても関係ない。世間の関心は向こうに集まる。

マインドシェアとは、人々の心に印象を残し、関心を引くことです。ライバル会社が魅力的なストーリーを持っている場合、顧客や投資家、提携先、求職中の人材など、それらの人々の目にはライバルが業界のリーダーであるかのように映るでしょう。人々が話題にするほど、ライバル会社のマインドシェアは高まり、ますます多くの人々がその話題について言及するようになります。

結果、あなたの会社は顧客の心に残り、顧客自身があなたの会社や製品について話題にするようなストーリーを生み出す機会を見つけなければなりません。顧客がすでにあなたの会社や製品をよく知っていても、専門知識があっても、彼らのために取り除くことのできる摩擦や障害はまだ存在するはずです。

顧客があなたの会社や製品に関心を持っている場合でも、その関心を維持するためには、定期的なコミュニケーションや情報提供が必要です。顧客にとって有益な情報やニュースを提供することで、彼らの関心を持続させることができます。

マインドシェアを確保するためには、競合他社との差別化が重要です。他社とは異なる独自のストーリーや価値提案を持ち、顧客にとって魅力的な要素を提供することが求められます。 

同じプロダクトでも、ライバル会社ではなくあなたの会社で購入したほうがいい理由を説明しよう。自社製品に精通している、あるいは顧客ニーズを理解していることを示し、相手の信頼を勝ち得よう。顧客に有益なサービスを提示してもいい。あなたの会社こそが正しい選択肢だと、顧客が確信するような絆を作ろう。

ストーリーテリングは、顧客が自身と繋がりを感じることができるようなエピソードを描くことです。このエピソードは、感情的な魅力と事実の両面から観客に語りかけるものでなければなりません。 まず、事実を伝えることが重要であり、それは必ずしも衝撃的なデータである必要はありません。

しかし、顧客に対して、提供する情報が信頼性を持つものであるという印象を与えることが求められます。ただし、情報だけを提供しても、顧客が行動を起こすには至らないかもしれません。それゆえ、顧客の感情に訴えるストーリーが必要となります。

顧客の感情に触れるためには、彼らが価値を見いだしているもの、または彼らが抱える問題や恐怖と連動したメッセージを作ることが重要です。心に響くストーリーを構築し、更には顧客にとって魅力的な未来のビジョンを示すことが効果的です。これにより、顧客は自身の未来を明るく想像し、行動を起こす動機を得ることができます。

ただし、情報と感情への訴えのバランスを保つことが重要です。過度な感情的アプローチは反発を引き起こす可能性もあります。客観的な情報と感情的なストーリーを組み合わせることで、観客からの共感を引き出すことが可能になります。

共感性のあるストーリーテリングは、顧客との関係を深め、信頼を築くための必要な手段です。顧客がストーリーに共感し、それを自分自身のこととして受け入れることで、あなたの商品やサービスへの興味や関心が増すでしょう。それは彼らが行動を起こす意欲を引き立てます。


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