起業家精神とは構想力。いかなる時代環境でも利益を出す仕組みの書評

sticky notes on paper document beside pens and box

いかなる時代環境でも利益を出す仕組み
大山健太郎
日経BP

いかなる時代環境でも利益を出す仕組み(大山健太郎)の要約

構想力は、起業家精神の中核をなす要素として、企業の持続的な成長と発展を支える基盤となります。それは単なるビジネスプランニングの能力を超えて、社会における企業の存在意義を描き出し、人々の心を動かす力なのです。真の起業家精神とは、このような構想力を持ち、それを現実のものとしていく不断の努力の過程なのです。

起業家精神とは構想力

常に高い志を持ち 常に未完成であることを認識し、革新成長する生命力に満ちた組織体をつくる。(大山健太郎)

起業家に求められる資質は多岐にわたりますが、その中でも特に重要なのが構想力だとアイリスオーヤマ会長の大山健太郎氏は指摘します。構想力とは単なるビジネスアイデアを思いつく能力ではありません。それは、社会に対してどのような価値を提供し、どのような未来を創造していくのかという、より大きな視座から企業の存在意義を描く力なのです。

起業家精神において構想力が最も重要視される理由は、それが他の全ての要素の基盤となるからです。大山氏は、説得力、実践力、結果責任と構想力が起業家精神に必要な4つの資質だと言います。明確な構想なくして、起業家は人々を動かし、実践を積み重ね、責任を全うすることはできません。

しかし、ここで注意しなければならないのは、構想力は単なる願望とは異なるということです。「お金を稼ぎたい」「誰かの役に立ちたい」といった個人的な願望は、確かに起業の動機になりうるものですが、それだけでは真の構想とは呼べません。なぜなら、企業とは本質的に社会的な存在だからです。

真の構想力とは、社会における企業の存在意義を明確に描き出す力です。それは「何を売るか」「どうやって稼ぐか」という表層的な事業計画を超えて、「なぜこの事業が必要とされるのか」「どのような社会的価値を創造できるのか」という本質的な問いに向き合うことから生まれます。 このような深い構想があってこそ、人々は共感し、共に歩もうと思うのです。世の中に貢献したいという気持ち=パーパスが構想力を鍛えてくれるのです。

起業家は決して一人では事業を成功させることはできません。志を同じくする仲間との出会いがあって初めて、企業は真の意味で動き出すのです。そして、そのような仲間を得るためには、単なる利益追求を超えた、社会に対する明確なビジョンが必要不可欠なのです。

構想力は、起業家精神の中核をなす要素として、企業の持続的な成長と発展を支える基盤となります。それは単なるビジネスプランニングの能力を超えて、社会における企業の存在意義を描き出し、人々の心を動かす力なのです。真の起業家精神とは、このような構想力を持ち、それを現実のものとしていく不断の努力の過程なのです。

イニシアチブが経営者に重要な理由

イニシアチブ(主体性)とマネジメントは別物です。リーダーがビジョンを示し、確固たる意志を持って、周囲を率先して行動するのが、イニシアチブ。

大山氏は企業を「企業理念を共有している組織」として捉えています。これは、単なる集合体ではなく、明確な使命を共有することで成り立つ独自の存在です。家族や学校とも異なる企業という形態において、理念の共有はその核となるものです。この理念が言葉として明確に示されていることが、組織としての一体感を生む鍵となります。仮に社員がたった一人だったとしても、理念を明示することで企業は再生可能なのです。

実際、大山氏もアイリスオーヤマを理念を明確にすることで再生させることができたと語ります。 さらに、企業の使命には、非効率な仕組みを効率的なものへと変える役割も含まれます。現実には、この世に完璧な製品や仕組みなど存在しません。どの市場にも、非効率や無駄が潜んでいます。それを改善することで、ユーザーに喜びを提供するのが企業の責務です。

例えば、アイリスの炊飯器がその好例です。同等の機能を持つ他社製品が10万円する中、アイリスは3万円という価格で提供し、ユーザー・インの発想で、圧倒的な競争力を発揮しました。価格の優位性は、ユーザー視点で製造や流通の仕組みを根本から見直した結果です。アイリスは生活者に寄り添う姿勢を貫き、業界の慣習にとらわれない新たな経営形態を確立することができたのです。

また、企業は経営資源の集合体として、社会の変化に対応することが求められます。資本や人材、技術、ブランドなどを適切に活用し、変化に順応するのです。特に、人材の意識を変えたり、技術を育てたりするのは容易ではありません。大規模な組織になるほど、組織の論理が優先されがちで、柔軟性を失うリスクも伴います。

しかし、ここに経営の面白さと難しさが存在すると大山氏は言います。リーダーがどのように集合体を動かし、未来に向けた一歩を踏み出すかが鍵となります。 リーダーシップとマネジメントは別物です。リーダーシップとは、ビジョンを示し、強い意志を持って行動し、周囲を巻き込む力=イニシアチブです。

一方で、マネジメントは与えられた環境下でアウトプットを最大化するためのスキルと言えます。これまでの経営者にはマネジメントスキルが重視されてきましたが、これからの時代にはリーダーシップが必要とされています。その根底にあるのが「こんな会社をつくりたい」という明確な構想力です。

このビジョンを社員に語り、共有することが重要なのです。 イノベーションを起こすには、リーダーシップが不可欠です。自らの考えを明確に持ち、それを社会や社員に伝える。そして実践し、結果に責任を持つ。このような主体性こそが、起業家精神の根幹です。

これからの経営者は、自身の志を明確に定め、リーダーシップを発揮して組織を率いていかなければなりません。「こんな会社をつくりたい」という志を胸に刻み、それを周りに共有し、未来への一歩を踏み出すことで、企業を強くできるのです。

最強Appleフレームワーク


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
リーダーパーパスフレームワーク経営学イノベーション書評生産性向上ブログアイデアクリエイティビティマーケティングライフハック起業
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました