無理をせず、無駄を楽しむ センスのはなし(秋田道夫)の書評

a neon sign that says itbegan as a mistake

無理をせず、無駄を楽しむ センスのはなし
秋田道夫
ディスカヴァー・トゥエンティワン

無理をせず、無駄を楽しむ センスのはなし(秋田道夫)の要約

センスは特別な才能ではなく、「自分を心地よく整える工夫」だとプロダクトデザイナーの秋田道夫氏は説きます。本書では、無駄を楽しみながらセンスを磨く方法や具体的な実践例が紹介されています。また、新しいアイデアは単なるひらめきではなく、観察から生まれると著者は指摘します。

センスとは何か?

わたしの思う「センス」とは、自分を心地よく整える作法や工夫です。センスについて考えると、日常の何気ないことにも、機微と気づかいが生まれます。 センスとは「余計なことをしないこと(秋田道夫)

「センスがいい」という表現を耳にした時、多くの人は生まれつきの特別な才能や、ブランド品など高価な物を身につけることが必要だと思い込むことがあります。

SNSで人気のプロダクトデザイナー、秋田道夫氏は、無理をせず、無駄を楽しむ センスのはなしの中で、そんな固定観念を覆しています。

著者はセンスを「自分を心地よく整える作法や工夫」と定義しています。つまり、センスとは特別なものではなく、日々の暮らしの中で自然に心地よさを生み出すためのものなのです。さらに秋田氏は、センスとは「余計なことをしないこと」とも表現しています。

一方で、矛盾するようですが「余計なことを知るためには、あえて余計なことをしてみることも必要」だとも述べています。

秋田氏の考え方には「無駄を楽しむことの重要性」が根底にあります。ただし、ここでいう「無駄」とは、単に時間を浪費することではありません。「ちょうどいいはたくさん失敗しないとわからない」という著者の言葉が示すように、試行錯誤を重ねる中で本当の心地よさが見えてくるのです。 むしろ、一見無駄に思えることの中にこそ、新たな発見や喜びが隠れています。

例えば、秋田氏は花瓶に合う花を選ぶとき、自分で決めるのではなく、花屋の店員にアドバイスを求めると言います。一見遠回りに感じられますが、そのプロセスを通じて専門家の視点や新たな美的感覚に触れることができます。

こうした経験の積み重ねこそが、センスを磨くことにつながるのです。 本書には、日常を豊かにするための具体的なヒントが詰まっています。センスを磨きたい人にとって、暮らしの中で無駄を楽しみながら発見を重ねることが、大切な一歩となるでしょう。

毎日の小掃除で部屋をリセットすること、会話は腹八分目で終えて次の機会につなげること、お店に入ったら「こんにちは」と挨拶すること。どれも特別な才能や高価なアイテムを必要とするものではなく、ちょっとした心がけで誰もが実践できることです。

センスは一部の特別な人だけが持つものではなく、日々の暮らしの中で磨かれていくものです。大切なのは、日常に作法や工夫を取り入れ、「無駄」を恐れず楽しむ心を持つこと。そうすることで、暮らしはより豊かで心地よいものになっていくのです。「センスがいい」とは、単なるスタイルや流行を追うことではなく、自分らしい心地よさを見つけることなのです。

アイデアは相手への「観察」から生まれる!

「何をしてほしいか」という答えは相手の要望の中に必ずあるんです。耳を澄まして、剣相手の顔をじっと観察しながら、「何をしてほしいか」を見つけたら、素直にそれに応えてあげ たらいい。

アイデアは観察から生まれると著者は指摘します。新しいアイデアを生み出すプロセスは、単なる偶然や天才的なひらめきではなく、周囲の世界を深く観察し、理解することから始まります。

観察とは、単に見ることではありません。それは、耳を澄まし、目を凝らし、心を開いて、相手や環境からのシグナルを受け取る行為です。ビジネスの世界では、顧客の言葉にならないニーズを感じ取ることが、イノベーションの出発点となります。芸術の分野では、日常の何気ない瞬間に美や意味を見出すことが、作品の種となります。

相手の要望の中には、常に答えが隠されています。しかし、それは表面的な言葉だけでなく、表情やしぐさ、声のトーン、そして言葉の行間に宿っています。優れたアイデアの創出者は、この隠れたメッセージを読み取る能力に長けています。彼らは、「何をしてほしいか」という本質的な問いに対する答えを、相手自身が気づいていない場所から見つけ出します。

アイデア創出において、もう一つ重要なメカニズムが、異なる要素の掛け合わせです。私たちの脳は、一見無関係に思える複数の情報や概念を組み合わせることで、まったく新しい価値を生み出します。例えば、ある分野の知識を別の領域に応用したり、既存の製品の特徴を組み合わせたりすることで、革新的なアイデアが誕生します。

この掛け合わせのプロセスは、観察によって得られた多様な要素があってこそ可能になります。観察の幅が広がれば広がるほど、掛け合わせの可能性も豊かになるのです。 観察から得られた洞察と、要素同士の掛け合わせによって生まれたアイデアは、やがて具体的な形へと結晶化します。

このプロセスには時間がかかることもあれば、一瞬のひらめきとして訪れることもあります。重要なのは、観察から得た情報を自身の知識や経験と結びつけ、新たな価値を生み出すことです。 アイデアが生まれた後に必要なのは、そのアイデアを素直に受け入れ、実行することです。

優れたアイデアは、時として常識に反し、リスクを伴うこともあります。しかし、それが真に相手のニーズに応えるものであれば、その価値は必ず認められるでしょう。 アイデアの創出は、繰り返しのプロセスでもあります。

最終的に、アイデアのメカニズムとは、外部からの情報と内部の創造性との絶え間ない対話です。それは受動的な待機ではなく、能動的な探求であり、相手の心の声に耳を傾け、その声に創造的に応答する芸術なのです。さらに、異なる要素を掛け合わせることで、予想もしなかった新たな価値を生み出す錬金術でもあります。

真のイノベーターたちが教えてくれるのは、優れたアイデアは孤独な天才の頭の中から生まれるのではなく、人々との深い共感と理解、そして多様な知識や経験の創造的な組み合わせから生まれるということです。だからこそ、アイデアを求めるなら、まずは相手をじっくりと観察し、さまざまな要素の掛け合わせを試みることから始めましょう。そこには、あなたが探し求めていた答えが、すでに存在しているはずです。

70歳を過ぎてもお洒落を楽しむ著者は、無理なく自然体で取り入れられる「暮らしのセンス」や「生き方のセンス」を、直筆のイラストや写真とともに紹介します。日常の中にある小さな喜びを見つけ、それを大切にする姿勢こそが、本当のセンスなのかもしれません。

センスは特別な才能ではなく、経験を積み重ねることで磨かれるものです。ときには失敗をしながら、お金や時間を使って試行錯誤することで、物事を見極める力が養われていきます。

本書は、自分の感性を信じ、日々の何気ない選択の中にこそセンスが宿ることを教えてくれます。肩の力を抜き、自分らしく心地よく生きることの大切さを、わかりやすく教えてくれる一冊です。

最強Appleフレームワーク
この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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