誠実な組織 信頼と推進力で満ちた場のつくり方(ロン・カルッチ)の書評

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誠実な組織 信頼と推進力で満ちた場のつくり方
ロン・カルッチ
ディスカヴァー・トゥエンティワン

誠実な組織 信頼と推進力で満ちた場のつくり方(ロン・カルッチ)の要約

組織が誠実であるとは、目的を達成するために行動すること、公正であり公平な行いをすること、相手を尊重しながらも妥協せずに真実を伝えることを意味します。組織における誠実さを追求し、信頼と推進力に満ちた場を創り上げることで、企業は圧倒的な成長を実現できます。

誠実な企業の業績が良くなる理由

我々人間は誠実でいることを好み、相手にも誠実さを求める。(ロン・カルッチ)

ロン・カルッチは、戦略的組織改革とエグゼクティブ・リーダーシップの専門家として、コンサルティング会社・ナバレントを経営しています。彼の長年の研究から、誠実な経営が組織の成功の鍵であることが明らかになりました。

近年、組織の持続的な成長と存続のための戦略として「誠実さ」が注目されています。誠実な組織とは、以下の3つの要素を持つ組織を指します。
・目的
より良い善を追求し、社会に貢献することを目指す。

・公正
全てのステークホルダーに対して公平で正しい行動を取る。

・真実
相手を尊重しながらも、真実を隠さず、率直に伝える。 これらの要素を持つ組織は、信頼され、長期的な成功を収める可能性が高まります。

組織のリーダーや経営者は、これらの価値を組織文化に取り入れ、実践することで、未来に向けた強固な基盤を築くことができるようになります。

誠実でいるためには、 ● 正しいことを言い(真実)、 ● 正しいことを行い(公正)、 ● 正しい動機に基づいて正しい言動(目的) をしなければならないのだ。 組織のパーパスのために尽力したいと心から願わなければ、かつ、そうすることで自分自身のパーパスも高められると信じていなければ、公平な職場づくりに貢献しようというモチベーションが湧くことはない。

著者によれば、自己中心的な損得勘定だけで行動を続ける組織は、真の信頼や絆を築くことが難しいと指摘しています。組織内で公正を追求する強いコミットメントがなければ、従業員は自らの意見や声に価値があると感じることは難しいでしょう。

その結果、特定の声や意見だけが優先され、多様性や異なる視点が疎外される恐れがあります。 企業内での多様な背景や文化、部署間のコミュニケーションが不足していると、難しいテーマや問題についての議論の場が生まれにくくなります。

特定の意見や声だけが重視される組織では、多様性の欠如や異なる視点の疎外が生じるリスクが高まります。企業内で多様な背景や文化を持つ人々の間のコミュニケーションが不足すると、複雑な問題やテーマについての議論が難しくなり、組織の信頼が低下する恐れがあります。このような状況が続けば、内部の対立や不平等が無視され、組織の健全性が損なわれる可能性が高まります。

さらに、人々が普段誠実であっても、不誠実な行動を促す環境や状況にさらされると、その誠実さが揺らぎ、不誠実な行動を取る可能性が増えることが研究で示されています。これは、組織の文化や環境が個人の行動や価値観に大きな影響を与えることを示しており、組織としての誠実さや公正さを維持するための取り組みが不可欠であることを強調しています。

人々は自分の仕事を通じて影響を与えたいと強く望んでおり、実際にそうできると信じているということだ。誠実な企業は、真実、公正、目的に基づく行動を通じてそうした機会を生み出しており、誠実でない企業よりも圧倒的に優れた業績を残している。

カルッチは、真実、公正、目的の3つの要素が調和することで、組織は真の「誠実さ」を手に入れることができると強調しています。これらの要素が結びつくことで、組織は一つの強力な力を持つことができるのです。この3つの要素が揃い、調和することで生まれる力こそが、誠実な組織を築く鍵となるのです。

また、希望があると、組織の雰囲気が明るくなりますが、その逆の場合、その空気の重さは明らかに感じられます。希望は、情熱、忍耐力、そして信念の3つの要素から生まれます。

これは、より良いものを追求する情熱、困難を乗り越えるための忍耐力、そしてその先に成功があるという信念を意味します。リーダーや組織、国家にとって、困難な時期を乗り越える力は希望によって与えられます。組織やチームの誠実さを鍛えあげるには希望が欠かせないことを忘れないようにしましょう。

真実、公正、目的のすべてを行動に取り入れるために必要な4つのこと

著者は、企業やリーダーが真実、公正、目的のすべてを行動に取り入れるために必要な4つのことを明らかにしています!

組織のアイデンティティと誠実さ言葉と行動の一致を重視
企業のミッション、ビジョン、バリュー、パーパス、ブランド・プロミスの5つが一致しない場合、それは経営者と従業員にとって警戒すべきサインとなります。研究によれば、組織のアイデンティティが不明瞭な場合、従業員の不正行為のリスクが3倍増加することが示されています。

実際、パーパスドリブンな経営を行った企業(葉と行動の一致を重視した組織)は、顕著な成果を上げています。消費者の生活の質を高めるという明確な目標を持つブランドは、市場平均よりも120%の高いパフォーマンスを達成しています。さらに、過去10年でパーパスを中心としたブランドの企業価値は、驚異の175%成長を記録しました。

また、17年にわたる調査で、28の企業を対象とした結果、S&P500の平均成長率が118%であったのに対して、パーパスを持った企業はなんと1681%の成長を達成しています。

②公正とアカウンタビリティー人々の尊厳を尊重する
人々は自分が公平に評価されていないと感じると、自己保身のために自分の業績を過大に表現することがあります。しかし、失敗を学びの機会として受け入れる文化がある場所では、従業員は自分の業績を正直に報告し、他者に対しても公平に接する確率が4倍高まります。

③透明性とガバナンスー信頼性の高い意思決定を目指す
真実を話すことができる場がなければ、オープンな対話は失われ、組織内での噂や陰口が増える可能性があります。従業員が組織の意思決定プロセスを理解していない、または信頼していない場合、不正行為のリスクが3.5倍増加します。効果的な意思決定のためには、オープンな議論の場が必要です。

④グループ間の連携ー全員を結びつける共通の物語を作る
組織内での意思決定の透明性は、全員が一致団結して目標に向かうための鍵です。誰が、いつ、どのような背景や情報に基づいて意思決定を行ったのかを明確にすることで、組織全体の信頼と理解が深まります。こういった情報共有は、組織の各部門やチームが互いに連携し、共通の物語やビジョンのもとで効果的に動くための土台となります。

逆に、組織内の部署間の対立が放置されると、従業員の不正行為のリスクが約6倍に増加します。異なる部署間の協力が求められる場面で、組織の壁を越えて協力し合い、競争心よりも協力の精神を大切にすることで、より健全な組織文化を築くことができます。

研究結果からわかったのは、誠実さとは筋肉のようなものであり、強くするためには鍛え上げなければならないということだ。それも、定期的に。ジムを出るときのアスリートや、リハビリを終えた患者は、体は痛んでも心は満たされている。 誠実さを鍛えるのも同じだ。

もし、あなたやあなたの組織が真の目的のために努力を続けたいのであれば、その道のりに立ちはだかる障害や矛盾を乗り越える必要があります。そのためには、鋭い洞察力、継続的なフィードバック、そして創造的な思考が求められます。また、常に否定的な意見を持つ人々に振り回されず、障害を取り除く勇気を持つことも大切です。 公正な組織を築くためには、組織内の深い偏見やバイアスに取り組む必要があります。

多くの場合、これらのバイアスは無意識のうちに一部の人々に特権を与えてしまいます。さらに、アカウンタビリティの制度も見直すべきです。従業員の評価基準、彼らの貢献の評価方法、キャリアの成長やチャンスの提供方法、そして従業員とのコミュニケーションの方法など、すべての従業員に平等な機会が提供されているかを確認することが重要です。

上司が部下に対して自身の弱さを見せることは、信頼関係を築く上で非常に重要です。その信頼関係があるからこそ、部下は自らのコミットメントに対する責任を感じ、失敗についてもオープンに話すことができるようになります。上司としては、自らの過ちを認め、それを改善する方法を示すことで、部下にとっての手本となるべきです。

「誠実さ」と「公正さ」は、私たちが幼いころから学んできた基本的な価値観の中心に位置しています。これらの概念に関しては、さまざまな文脈や方法で語られてきました。

しかし、ビジネスで重要な判断をする場面で、これらの価値観は時として軽視され、企業に巨大な損失をもたらす事例が散見されます。

著者も強調するように、ビジネスの舞台での成功は、誠実さと公正さに基づいて築かれます。これらの価値観は、組織の持続的な成長と信頼の維持に不可欠です。私たちは、日常の選択や判断の中で、常に誠実さと公正さを大切にし、それを実践することが求められています。


 

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