人生を変えるTips100~今日から始めるエビデンスベースの小さな行動~
リズ・ムーディー
光文社
人生を変えるTips100~今日から始めるエビデンスベースの小さな行動~(リズ・ムーディー)の要約
科学的根拠に基づいた100のTipsを紹介するリズ・ムーディーの著書は、食習慣やマインドセットの改善に役立つ一冊です。中でも自分に合った習慣を見極める「N-of-1実験」や目標達成を助ける思考法「WOOP」が、自分自身を理解し行動を変えるための実践的な手法として紹介されています。
エヌ・オブ・ワン(N-of-1)実験で自分にフィットした方法を見つけよう!
私が好きなのは、自分に最適なアドバイスは幅広い領域のどこかにある、という考え方だ。(リズ・ムーディー)
世の中には、さまざまなアドバイスが存在します。このブログでも、これまでに多くのメソッドやライフハックを紹介してきましたが、それらが自分に合うかどうかは、試してみなければ分かりません。実際に取り入れて効果を感じたものもあれば、まったく響かなかったものもあります。
ベテランジャーナリストのリズ・ムーディーは、人生を変えるTips100~今日から始めるエビデンスベースの小さな行動~の中で、「自分に最適なアドバイスは、幅広い領域のどこかに必ず存在している」という考え方を提案しています。多くの人に効果があるとされるアドバイスもあれば、半数の人にしか合わないもの、あるいはごく少数の人だけに効果を発揮するが、その効果が非常に大きいものもあるのです。
人は誰しも、より良い健康、より良い人生を求めて行動します。ある人は、科学的エビデンスが不十分な方法にも希望を託し、またある人は、確かな裏づけのある方法であっても効果がないと感じるかもしれません。著者はそのどちらの立場も否定しません。重要なのは、「自分にとって何が効果的か」を見極めることだと言います。
そこで登場するのが、サラ・ゴットフリード博士の提唱する「エヌ・オブ・ワン(N-of-1)実験」です。これは、臨床試験の一種で、たった一人の被験者、つまり自分自身を対象として、ある方法や介入の効果を比較・検証するアプローチです。第三者の意見や一般論ではなく、自分という一人のデータをもとに、自分にとって何が有効かを見つけ出す実験なのです。
この実験を始めるにあたっては、まず自分に問いかけてみることが大切です。今、自分が本当に望んでいることは何か。どんな変化を期待しているのか。そして、何を改善したいと思っているのか。明確な目標が定まったら、小さな行動を取り入れ、その変化をしっかりと記録していきます。
今の時代、スマートウォッチやアプリなどのテクノロジーを活用すれば、こうしたセルフトラッキングは驚くほど簡単にできるようになっています。 リズ・ムーディーの本は、こうした自己実験を行う上でも非常に参考になります。
著者は、これ以外にも、世界のトップクラスの医師や科学者、思想家へのインタビューを通じて得た知見をもとに、私たちが実践しやすい100のTipsを本書で紹介しています。
途中で挫折した習慣を書き出して、その理由を考えよう。
ムーディーは、途中で挫折してしまった習慣について、あえて書き出し、「なぜ続かなかったのか」を冷静に振り返ることの重要性を説いています。 まずは、その習慣に取り組もうとした動機を、自分の内面に正直に向き合いながら言語化してみましょう。
その上で、マインドセットを切り替え、より前向きな視点から「本当の理由」を掘り下げていくのです。
・なぜ、その習慣を身につけたいのか?
・それは、自分のどのような未来像に結びついているのか?
もし、心から納得できる理由に辿り着けたなら、モチベーションは意志の力に頼らずとも、内側から自然と湧き上がってくるはずです。 意味が見出された習慣は、もはや「こなすべきタスク」ではなく、「自分を成長させ、満たす営み」へと変化していきます。
逆に、どうしても納得のいく理由が見つからない場合は、その習慣に本当に価値があるのかを、ゼロベースで見直すべきかもしれません。 目的地が同じであっても、そこに至るルートは一つではありません。 あなたにとって自然体で続けられる、より適切な手段が他に存在する可能性は大いにあります。
私たちは、「〜すべきだ」という社会的な期待に囲まれて生きています。しかし現実には、他人の目標や理想に自分の時間を費やすほど、人生は長くはありません。 だからこそ、自分の価値観やニーズに即した習慣だけを精選し、自覚的に選び取ることが重要です。
仮に、これまで取り入れようとしていた習慣に「理由がなかった」と気づけたなら、それは挫折ではなく、むしろ知的な取捨選択による“解放”と言えるでしょう。 これからは、自分自身の軸に沿った、本当に意味のある習慣だけで、日々を丁寧に満たしていけばよいのです。
成功のフレームワークWOOPの法則
WOOPの法則が効果を発揮するのは、ポジティブ思考に頼ることなく、課題を克服して達成可能な結果に向けて計画を立てるという、具体的なステップに踏み込んでいるからだ。
人生をより良くしたいと思ったとき、私が出会ったのが「WOOPの法則」でした。正確には、出会ったというより、後からその存在を知り、自分が実践していたことがまさにそれだったと気づいたのです。
かつての私はアルコールに依存することで、さまざまな夢をあきらめてきました。しかし、自分の人生を変えると決めたとき、著者になること、取締役になることを強くイメージし、断酒を決意しました。 体調が悪化していたこともあり、ドクターのアドバイスに従って、まずは「アルコール」という障害を取り除くことに集中しました。
そして、コーチと共に人生のビジョンを作り、理想と現実のギャップを少しずつ埋めていったのです。その時はWOOPの法則を意識していたわけではありませんが、振り返れば私は自然とWOOPのステップを踏んでいたのです。望みを明確にし、未来を思い描き、障害と向き合い、具体的な行動計画を実行に移す。それによって夢が現実になっていったのです。
WOOPとは、Wish(望み)、Outcome(結果)、Obstacle(障害)、Plan(計画)の頭文字を取ったもので、たった五分で目標達成の確率がぐんと高まると科学的に証明されている思考法です。ニューヨーク大学の心理学者ガブリエル・エッティンゲン博士の研究に基づいたもので、多くの分野で成果を上げてきました。
このWOOPの第1ステップは、あなたの「望みは何か?」を明らかにすることです。ポジティブ・心理学者のサマンサ・ボードマン博士は「スマートフォンに費やす時間を減らしたいですか? それとも家族との時間をもっと充実させたいですか?」と問いかけます。自分が本当に求めているものに、まず向き合ってみましょう。
私自身は、こう問いかけました。 「子どもたちに、アルコールに依存した父親として記憶されたいのか? それとも、本を出版し、社会に貢献するビジネスパーソンとして見られたいのか?」18年前のこの問いが、私の人生を変えてくれるきっかけになったのです。
次に来るのが「結果」です。つまり、その望みが叶ったときにどんな未来が待っているかを、リアルに思い描くのです。その結果、人生はどう変わるでしょうか? その未来のイメージが、自然とモチベーションを高めてくれます。
しかし、WOOPの本当の力は、後半の「障害」と「計画」にあります。「障害」は、夢の実現を妨げている内なる要因です。たとえば、毎週決まった朝にジムに行こうと思っても、目覚ましを止めて二度寝してしまう。そんな自分に何度もがっかりしてしまう。あるいは、ジムに通うこと自体に納得していない自分がいるかもしれません。その正直な感情を無視せずに認識することが、とても大切なのです。
障害を明確にしたら、次にすべきは「計画」です。 どのようにしてその障害を乗り越えるか――具体的な対処法を考えます。 たとえば、早めに就寝する、目覚まし時計を手の届かない場所に置く、あるいは運動の時間帯そのものを見直すなど、些細な工夫が意外なほど大きな変化をもたらします。
私自身のケースでは、家にあったアルコールをすべて処分し、飲み友達との距離を意識的に調整しました。 そして、その代わりに読書や執筆に時間を充てるようにした結果、ついには書籍を出版するという目標を実現するに至ったのです。
WOOPの法則が優れているのは、ポジティブ思考だけに頼らず、困難を越えるための「行動」と「現実的な準備」に軸足を置いている点です。運動の習慣化だけでなく、学習、ストレス管理、時間の使い方にも応用できます。目標と行動のギャップが埋まることで、ストレスも軽減され、心も軽くなっていきます。
一枚の紙に横線を四本引き、縦にWOOPの文字を書き、それぞれの行に自分の望み・結果・障害・計画を記入する。すると、漠然としていた夢が、はっきりとした計画に変わっていきます。
科学的な裏づけのある夢の実現法が、たった数分で手に入るのです。 人生は自分で変えられる。そう信じることからすべてが始まります。
リズ・ムーディーは、食生活や運動といった日常の習慣から、自己変革に至るまで、幅広いテーマについて科学的な知見をもとに丁寧に解説しています。 また、特定の悩みや関心がある場合には、該当するセクションだけを選んで読むことも可能です。 ページをめくるごとに、すぐに実践できる工夫や、前向きなマインドセットを育むためのヒントが詰まっており、日常に新たな視点と行動のきっかけをもたらしてくれる一冊です。
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