AIは人を見る目を持ったのか: 人事評価・採用・育成はどう変わるのか(三橋由寛)の書評

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AIは人を見る目を持ったのか: 人事評価・採用・育成はどう変わるのか
三橋由寛
MEDIA WAVE 出版

30秒でわかる本書の要点

結論:AIは人事評価を壊しに来たのではない。評価の曖昧さを可視化し、より本質的な「人を見る力」の再定義を促している。
原因:これまでの評価は感情や主観に左右され、一貫性と客観性に欠けていた。評価者の「見ているつもり」が信頼の低下を招いていた。
対策:AIを単なる判断ツールではなく、プロセスの可視化と対話のきっかけと捉える。人間がやるべきは、意味づけとやる気を引き出す視点を持つこと。

本書の3行要約

人事評価におけるAIの活用は、属人的な判断の限界を乗り越え、透明性と一貫性をもたらします。AIは目に見えにくいプロセスや行動の積み重ねを可視化し、新しい「人を見る力」の形を提示します。判断の最終責任は人間にあり、AIはその支援者として、より深い理解と対話を可能にします。

こんな人におすすめ

・AI導入を検討中の経営者、人事責任者
・評価や育成に悩んでいるマネージャー
・人事制度の設計・見直しに携わる実務担当者
・人間的な評価とは何かを問い直したいすべてのビジネスパーソン

読者が得られるメリット

・AIを活用した透明性ある評価の仕組みが理解できる
・属人的な評価から脱却し、一貫性ある人材マネジメントを実現できる
・プロセス重視の視点で、人の成長を捉えるヒントが得られる
・AIを「判断ツール」ではなく「対話のきっかけ」として活用する視点を得られる
・組織文化に合わせたAI活用のあり方を学べる

AI時代、人事評価は感情からデータへ

AIは感情を持たない。それは事実だ。だが、感情を持たないことは、必ずしも欠点とは限らない。人が判断を誤るとき、その多くは感情が原因になる。AIは、こうした揺らぎを持たない。その代わりに、行動の履歴、選択の傾向、変化のパターンといった 人が見落としがちな情報を、淡々と見続ける。 それは「冷たい判断」ではなく、 一貫した観察だ。(三橋由寛)

AIは人事評価の精度を高めるのか、それとも冷たさを持ち込むのか——。AIは人を見る目を持ったのか: 人事評価・採用・育成はどう変わるのかは、この問いに真正面から向き合います。評価の曖昧さをどう乗り越えるか、感情に左右されず「人の成長」をどう見抜くのか。人事の現場を知り尽くした社会保険労務士・三橋由寛氏が、AIと人事の関係を根本から再定義します。

三橋氏は、AIは感情を持たないがゆえに、かえって人事評価において重要な役割を果たせると指摘します。人が判断を誤る背景には、感情が無意識に影響を及ぼしているケースが少なくありません。

AIは、感情に左右されることなく、行動の履歴や選択の傾向、変化のパターンといった、これまで見落とされがちだった情報を一貫して記録・分析することができます。それは冷淡な判断ではなく、揺るぎのない観察による支援です。

同じ基準で人を評価しても、ある人は納得し、別の人は不満を抱く。この違いの背景には、「その人の文脈」が評価に反映されていないことがあります。与えられた役割や状況、周囲との関係性といった背景を無視した公平さは、ときに冷たく、非合理的に映ります。公平さを追求するあまり、かえって信頼を失うこともあるのです。

評価者の多くが「ちゃんと見ている」と言いますが、その「見ているつもり」こそが、最も危ういのです。忙しい日常の中で、部下の行動をすべて把握するのは不可能です。評価者が合理的なつもりでも、感情は静かに判断を揺らがせます。

そして、その影響が自覚されないまま「客観的評価」として扱われてきたことが、人事の信頼性を下げる要因になっています。

また、人事判断が属人化すると、評価者の異動や退職によって評価の軸が失われ、「あの人がいないと分からない」といった事態が頻発します。これは人事に限らず、組織の継続性や公平性にも深刻な影響を及ぼします。

こうした課題に対し、AIは判断を下すのではなく、判断の材料とその理由を提供します。最終的な意思決定は人間が行うものですが、AIの活用によってその判断は、これまでよりも透明で再現性があり、組織内で共有しやすいものになります。

 プロセスを評価できるAIが、見逃されてきた価値を浮かび上がらせる

AIは、連続した変化の軌跡を見る。その結果、「今はまだ成果が出ていないが、このまま進めば伸びる人」が、 早い段階で見えるようになる。AIは、繰り返される行動を見る。その結果、目立たないが価値のある貢献がデータとして浮かび上がる。

AIは成果だけでなく、日々の行動履歴や選択の傾向、失敗後の行動変化、周囲との関係性の変化など、感覚ではとらえにくい情報を記録・可視化します。「なんとなく良くなっている」と感じていたことを、具体的な変化として確認できるようになるのです。

AIがプロセスを見るようになることで、これまで見過ごされてきた価値ある行動が浮かび上がります。たとえば、問題が起きる前の予防的行動や、チームの摩擦を減らす働きかけ、小さな改善の積み重ねなどです。これらは目立つ成果にはつながらなくても、組織の安定と持続性には不可欠な要素です。

AIは「目立つ行動」ではなく「繰り返される行動」を捉えることで、見えにくかった人の価値を静かに可視化していきます。 さらに、AIは連続的な変化を追いかけることに長けており、「今はまだ成果が出ていないが、このまま進めば伸びる人」を早期に把握することができます。

こうしてプロセスが可視化されることで、評価の重心はプレゼンテーション力から、日々の行動の積み重ねへと移っていくのです。 評価は、最終結論を出すためのものではなく、新たな問いを立てるための材料にもなり得ます。

AIが示すプロセスデータは、上司と部下の対話のきっかけとなり、評価面談の意味を大きく変えます。すべての答えを上司が持つ必要はありません。一緒に考え、学ぶ姿勢こそが問われます。 AI導入がうまくいっている組織には共通点があります。

それは、AIに判断を丸投げせず、データをうのみにせず、最終判断は人間が責任を持って行っているという点です。AIはあくまでツールであり、主役は人間。考える力を放棄せず、判断の質を高めようとする人間の姿勢が、AIの価値を最大化します。

これから評価される人にはいくつかの共通点があると著者は指摘します。
・学び続けていること。
・行動を進化させていること。
・周囲との関係性を丁寧に育んでいること。
・自分の仕事を客観的に見つめる視点を持っていること。

こうした行動が、一時的な成果ではなく、持続的な価値を生むのです。実際、AI時代にはこうした人間力を持った人物を採用したいと私も考えていました。

AIは中立的でありながら無色ではありません。人を管理したい組織では管理を強化するツールに、人を理解したい組織では理解を深めるパートナーになります。AIは、その組織が本来持っている価値観や姿勢をそのまま増幅させるのです。

AI時代における「人を見る力」とは何か。それは、感情や好みに左右されず、その人のプロセスを一貫した視点で見つめ続ける力です。AIは、その視点を支える存在として、私たちの人事判断に欠かせない存在になっていくはずです。

経営者や人事担当者にとって、AIは評価制度を壊す存在ではありません。むしろ、評価に内在する曖昧さを明らかにし、進化の機会を与えるパートナーです。AIがもたらす変化は、評価そのものではなく、評価を通して見えてくる「人間の可能性」なのです。今こそ、AIというレンズを通じて、人を見る目をアップデートするタイミングです。

本記事は書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大が執筆しました。

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