同じ地域で肥育された牛でも、エサや水、育て方によって味が変わってきます。それを一括りにしてブランドにするのは無理があるんです。尾崎牛はわたし独自のやり方で育てていますから、他とはまったく違う、しかも一定した品質をお客様に届けられます。これこそが本来のブランドでしょ?(尾崎宗春)
地元の焼肉屋さんが宮崎産の尾崎牛を提供していることを知ってから
私は尾崎牛にはまっています。
月に一度はそのブランド牛を食べに行きたくなります。
28年前にアメリカから帰国した尾崎宗春氏が育てている尾崎牛は
良質の水、新鮮な空気、風抜けを含む環境にこだわり適地を探した牧場で
抗生物質、防腐剤、肉骨粉等を一切使用しない自家配合飼料で育てられています。
美味しい尾崎牛は、今では有名なシェフや料理人から支持され
松坂牛などのブランド牛よりも評価されているのです。
そもそも尾崎牛については、仲間のブロガーの松村太郎氏から
美味しいと和牛があると何度も聞いていたので、食べたい!とずっと思っていました。
なんと、灯台下暗しで地元の焼き肉店の大福で扱っていることがわかり
一度食べたら、その美味しさに惹かれ、それ以来この店に通うようになったのです。
コンセプトのつくり方(山田壮夫著)を読んでいたら
なんとその尾崎牛のコンセプトが冒頭で紹介されていました。
この話題から、一気に本書への親近感が湧きました。
では、なぜ尾崎牛は世界中のシェフに認められたのでしょうか?
尾崎牛はなぜ宮崎牛として、流通しなかったのでしょうか?
なぜ、尾崎さんは霜降りではなく、赤身の牛肉を生産したのでしょか?
そこには、尾崎さんの畜産に対する猛烈なこだわりがあったのです。
コンセプトのつくり方 [ 山田壮夫 ] |
自分の食べる牛肉を作る、次に家族、社員、そして友人、最後に消費者の方々に食べてもらうという想いで牛作りをしています。自分が感動していないのに、人を感動させる事はできません。毎日食べてもしつこくなく、次の日もまた食べたくなるような牛肉を目指してやってきました。 尾崎牛の特徴は脂がくどくなくあっさりしています。シャブシャブをしてもアクが出ません。
尾崎さんは自分が食べたい美味しい牛肉作りを決心します。
その際、他のブランド牛のように産地を表示するのではなく
自分の名前をブランドにすることを決めます。
毎日食べる牛肉を目指す尾崎さんは他の生産者とは異なり
こってり濃厚な味わいとは一線を画す和牛作りを目指しました。
味わいをユニークにするという戦略で
脂の融点が低くて胃にもたれない肉を作ることで、女性からも評価されます。
自分や家族や仲間が毎日食べて、感動できる和牛をコンセプトにしたのです。
また、産地名で売るという常識を覆して
生産者として販売するという独自のアプローチを始めました。
こうした常識を覆したからこそ、尾崎牛は世界中から評価されたのです。
産地から生産者にサーチライトの当て方を変えることで
自分と家族と消費者のための和牛という新しいアイデアが生まれてきたのです。
イノベーションを「ひとの行動・習慣・価値感にもう戻れないような変化をもたらすモノ・コト」と定義するなら、「尾崎牛」は黒毛和牛産業におけるイノベーションに成功しました。(山田壮夫)
大きな成果を得るためには「常識」を覆さなければなりませんし
世の中の常識を覆すためには「コンセプト」が必要なのです。
スターバックスのサードプレイスや
サウスウエスト航空の空飛ぶバスなどの新しいコンセプトが
居心地の良いカフェや格安航空というビジネスを生み出したのです。
食というテーマでコンセプト作りを解説した本書は
身体的思考という切り口が斬新で、とても面白く読めました。
身体的に進むべき方向を直感できなければ
コンセプトとは言えないという著者の言葉が響きました。
イノベーションには、非常識なコンセプトが必要だということが
本書の身近なケーススタディから学べます。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
私の好きな本や自分の著書をピックアップしています。
ぜひ、書籍の表紙をクリックしてご一読ください。
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photo credit: Decision-Making via photopin (license)
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