ビル・ゲイツに学ぶ、最貧国を救うシンプルな方法


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遅刻してくれて、ありがとう(下) 常識が通じない時代の生き方
著者:トーマス・フリードマン
出版社:日本経済新聞出版社

本書の要約

鶏小屋、緑地帯、テクノロジーの支援を行うことで、アフリカなどの最貧国を救うだけでなく、難民対策に苦しむ先進国も救えます。住民と農地を守る対策を行うことで、環境破壊も防げるのです。ニワトリやグリーン基金を馬鹿にせず、そこにお金を使うべきです。

ニワトリが極貧国を救う理由

ニワトリを所有することについて、私はずいぶんいろいろなことを学んだ。……極端に貧しい暮らしをしている人々がニワトリを飼うと、暮らし向きがよくなることが、はっきりとわかった。それどころか、私がそういう立場だったら、かならずそうするニワトリを飼う。(ビル・ゲイツ)

トーマス・フリードマン遅刻してくれて、ありがとう(下) 常識が通じない時代の生き方 の中に、ニワトリを飼うことが極貧国の救済につながるという考え方が紹介されています。ニワトリはとても世話が簡単で、飼育するのにあまりお金がかからりません。たいがいの品種が、地面に生えている草を食べるため、飼料代が不要です。また、死ぬ率が高いニューカッスル病にかかるのを防ぐワクチンは、20セント以下です。メンドリには雨風をしのげて巣を作れる場所が必要なため。数が増えたら簡単な鶏小屋を建てる必要がありますが、その時にはニワトリでお金が稼げています。

実際、ニワトリはいい投資になります。農家が5羽から養鶏を始めることで、短期間で結果を出せます。近所にオンドリを飼っている農家があれば、メンドリの卵を受精卵にでき、3カ月後には5羽が40羽に増えています。ニワトリ1羽5ドルというのがアフリカ西部の相場ですから、1年に1000ドル以上稼げます。それに対して、極貧と見なされるのは年収700ドル以下ですから、ニワトリを飼うことで、極貧生活から抜け出せます。ニワトリは子供の健康維持にも役立ちます。卵を食べることで、栄養不良で死ぬ子供(年間310万人)を減らす効果も期待できるのです。

ニワトリは女性の力を強める。ニワトリは小さく、だいたい家の近くで飼われるので、山羊や牛のような家畜とは違い、女性が世話をするものだと見なしている文化が多い。ニワトリを売る女性は、その利益を家族に再投資する可能性が高い……。

ブルキナファソの人類学者バタマカ・ソム博士は、母国でニワトリを飼うことの経済的影響の研究をつづけ、その価値を立証しました。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、今ではニワトリの飼育に力を入れ、サハラ砂漠以南の田園地帯の家族の30%が、ワクチンを投与した改良品種を飼うことを目標にサポートを続けています。貧困との戦いでニワトリが大きな役割を果たしていますが、一方で気候変動がアフリカ諸国に悪い影響を及ぼしています。

サハラ砂漠でグリーン基金が重要な理由

解決策は”源に”築かなければならない。(モニーク・バルビュー)

国連砂漠化対処条約(UNCCD)事務局長のモニーク・バルビューは、気候変動がアフリカの住民に悪影響を及ぼしていると言います。住民は過去に旱魃があったときには、旱魃が終わるまで移動し、また帰ってくることができました。しかし、気候変動の影響で旱魃が激しくなることで、住民の移動が難しくなりました。いまでは旱魃が3、4年つづくので、季節だけ渡り歩くのではなく、完全に移住しなければなくなったのです。このため、多くの人々が土地を失ってしまうのです。

この傾向がつづけば、アフリカ南部と南米大陸最南端の数百万人が、生活手段を失うと言います。そして、このエリアでは小規模農業で生計を立てる人が多く、気候変動や森林破壊のためにサバンナが全滅したら、大規模な危機が起こります。一旦、劣化した農地を取り戻すのは難しいため、バルビューはマリからジブチにいたる13ヵ国で5000人(各村から一人)のグリーン部隊に資金を提供すべきだと言います。基礎訓練をほどこして、土と水を維持する植物の植え方を教え、植えた植物を世話する手間賃としてひと月200ドルの給料を支払うことで、グリーンを復興できます。

砂漠化を押し戻し、住民の定住を支援することで、難民を減らせます。難民対策に支払うコストより、はるかに少ないお金で住民を救えるのです。砂漠がひろがるのを食い止め、土と水が貯まる肥沃な土地に回復させるために、大量の植物を植え直す必要があります。それで数億人が仕事に戻れます。人々を養い、CO2を植物に蓄えることで、気候変動への対応にもなります。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団元CEOで、レイクス財団の共同創設者のジェフ・レイクスは次のように述べています。

農業はサハラ砂漠以南の労働力の3分の2近くを占めている。2002年にアフリ力連合は、政府予算の10%という大きな額を農業セクターに投資するよう加盟国に呼びかけた。応じたのは13力国のみだったが、それらの国の投資研究開発、研究のあらたな成果を農民が利用できるようなサービス、融資の優遇、商品取引、その他のマーケティング活動に対する投資は、すでに配当を生み出している。その13力国では、農業生産、国民1人当たりGDP、栄養摂取が改善された。(ジェフ・レイクス)

サハラ砂漠以南の田園地帯の世帯で、金融機関から融資を受けられるのは、わずか6%にすぎないと言います。農民に融資することで、状況を変えられるのです。さらに、アフリカの農地の3分の2近くで重要な栄養分が不足していますが、多くの農民は自分たちの土地をもとどおり肥沃にする技術的知識と資源を持たず、新しいテクノロジーを全面的に活用することができずにいます。

アフリカの村すべてに高速ワイヤレス・ブロードバンドを導入すれば、国の経済成長を生み出すのに貢献するはずです。貧困層を教育し、情報化社会に適応させることで、農地を守だけでなく、経済成長を加速させ、故郷にいても収入を得られるようになります。

農家への融資やデジタル化の支援を行うことで、彼らを救えるのです。鶏小屋、緑地帯、テクノロジーの支援を行うことで、アフリカなどの最貧国を救うだけでなく、難民対策に苦しむ先進国も救えます。住民と農地を守る対策を行うことで、環境破壊も防げるのです。ニワトリやグリーン基金を馬鹿にせず、そこにお金を使うべきです。

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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