トーマス・フリードマンの遅刻してくれて、ありがとう 常識が通じない時代の生き方 遅刻してくれて、ありがとう 常識が通じない時代の生き方の書評


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遅刻してくれて、ありがとう 常識が通じない時代の生き方 遅刻してくれて、ありがとう 常識が通じない時代の生き方
著者:トーマス・フリードマン
出版社:日本経済新聞出版社

本書の要約

テクノロジーが進化するなかで、適応を止めることでチャンスを失います。テクノロジーの加速に合わせて、変化し、動的安定を目指すことで、自分の可能性を広げます。そのためには、学び続け、自分をアップデートし続ける必要があります。

テクノロジーの進化が加速するなかどう生きる?

地球上の3つの大きなカテクノロジー、グローバリゼーション、気候変動が、いまはすべて同時に加速している。その結果、私たちの社会、職場、地政学的要素が変容しつつあり、新しく捉え直す必要が生じている。多くの分野で変化の速度が一気に変わると、私たちはそれらに圧倒されてしまう。そういう状況を、いま味わっている。(トーマス・フリードマン)

テクノロジーが進化することで、世界の様子は一変しました。2007年にiPhoneが登場し、Facebookやtwitterが登場することで、変化のスピードは加速し、幾何級数的なことがリアルライフでも起こるようになったのです。半導体の集積率が18カ月で2倍になるという「ムーアの法則」が、21世紀になるとソフトウェアの分野でも増幅されることで、世のなかは激変しました。半導体の世界で起こっていたムーアの法則が、私たちの生活のなかでも起こり、人は新しいテクノロジーに追いかけられるようになったのです。

著者は、ある時から相手の遅刻が気にならなくなったと言います。相手が遅刻してくれたおかげで、何もしない時間、自分のための時間が創れるようになったのです。本来なら遅刻してきた人に怒りを感じるはずなのに、時間をもらえたと思えるようになり、感謝の言葉を相手に伝えるようになったのです。

もっとも重要なのは、その空き時間に、何日ものあいだ考えあぐねていた思いつきをまとめられたことだった。だから、謝ってもらう必要はない。それで、「遅刻してくれて、ありがとう」なのだ。最初にその言葉を口にしたときは、あまり考えもせずにそういった。しかし、二度目には、スケジュールにない思いがけない空き時間が持てるのは、いい気分だと悟った。それに、そう感じるのは、私だけではなかった。理由もわかっていた。私も多くの人々とおなじように、めまぐるしい変化の速度に打ちのめされ、 疲れ果てていた。

iPhoneやソーシャルメディアに隙間時間を占領され、自分との対話の時間を現代人は持てなくなっています。しかし、待ち合わせ相手が遅刻することで、自分らしい時間を人は過ごせるのです。めまぐるしい変化の時代だからこそ、私たちはもっと考える時間を持つべきです。ただ、これはテクノロジーの進化を無視するということではありません。

では、テクノロジーに追いかけられるなかで、私たちはどう生きていけばよいのでしょうか?ロボットやAIやセンサーが私たちの労働を奪い始めています。労働者が何も投資をしなければ、失業したり、低賃金に喘ぐことになります。ある程度のスキルがあれば、平均的に稼げるというホワイトカラー的な考えは幻想になりつつあります。工場の熟練工のスキルは様々なセンサーに置き換えられていくのです。

「スーパーノバ」というクラウドが2007年に登場することで、ビジネスや教育システムを変えてしまいました。個人のパワーを大幅に増幅させ、建設的あるいは破壊的に行えることを増やしています。当然、個人だけでなく、多くの人のパワーも増幅できます。

このスーパーノバは、おおぜいのパワーも増幅する。それもまた、あらたな一線を超えている。人間の集合はいま、ただの自然の一部ではない。自然の力になっている。人類史上になかったような速度と規模で、気候や私たちの惑星の生態系を乱し、変化させている。だが、これもまた、逆の面も真実なのだ。スーパーノバで増幅されて、みんながともに行動する私たちみんなが行動するための意識を共有すれば、いまだかつてなかったような速度と規模で、環境悪化を逆転させ、食糧、家、衣服を、地球上のすべての人間に供給するのに役立つ力を持てる。種としての人類は、これまでそういう共同の力を持ったことがなかった。

今後、スーパーノバは、あらゆるかたちのテクノロジーと、ひいては個人、企業、アイデア、機械、集団をより強力に変え、世界をよりよくしてくれると著者は指摘します。スーパーノバを活用することで、環境問題など今までは解決が難しいと考えられた難問の答えも出せるようになります。

変化の時代には「動的安定」を目指せ!

私たちはみんな、制御を失っているという気持ちになる。なぜなら、世界の変化に追いつくほど速く適応できないからだ。その変化に慣れたころには、もうそれは変化の主流ではなくなっている新しい変化が起きてるんだ。(エリック・テラー)

テクノロジーの進化に追いついていけないことで、人は不安になっています。テクノロジーを減速させることは不可能なので、私たちをアップデートするしかありません。私たちの適応能力をすこしでも強化できれば、かなりの大きな変革がもたらされるようになります。テクノロジーの進化に追いつけなければ、多くのチャンスを失います。古い仕事がなくなり、新しい仕事が生まれるなかで、自らの可能性を閉じることになります。

適応力をきょうかし、学習速度を早めることで、進化するテクノロジーを活用できるようになります。私たちは迅速に動き、失敗を恐れてはいけないのです。動的安定を目指し、自分をアップデートすることを諦めてはいけません。個人だけでなく、企業、大学、政府はイノベーター並みの創造力を使って、テクノロジーを試す必要があります。失敗から学び続け、ムーアの法則の速度で活動しなければならないのです。

変化のペースがこれほど速くなると、生涯、働く能力を維持するには、一生学びつづけなければなりません。 テクノロジーの加速がほんとうに激しいときに、適応するために減速すると、人生を棒に振ることになります。ある程度の生活が保証されるミドルクラスでいるためには、クリエイティブな存在になるべきです。

新しいミドルクラスには、クリエイティビティ、コラボレーション、コミュニティ、コーディングの4つのCが求められます。インド人や中国人、新たなテクノロジーに仕事を奪われないために、自分のスキルを向上させ、時代遅れにならないようにすべきです。これからのキーワードは生涯学習で、自分の仕事の未来を想像し、備えを怠らないことです。どんな時代になっても、新しい仕事が生み出されます。人間の工夫と意志の力があれば、テクノロジーにできない仕事を創造することができると著者は言います。テクノロジーと共存するために、動的安定を日々繰り返すことが、自分を守ることにつながります。

テクノーロジーが発達することで、人口が爆発的に増えています。貧しい国でも医療の恩恵に預かる人が増え、死亡率が低下し、出生率が高まることで、人口のバランスが崩れています。人口は人類始まって以来の水準に増加し、地球への負荷を高めています。それだけでなく、世界規模での工業化により、気候変動が起こり、世界中に自然災害を巻き起こしています。アフリカの奥地でもiPhoneや電気が使えるようになり、彼らが様々なプロダクトを求めることで、環境破壊が起こっています。

私たちがいますること、あるいは怠ることが、未来を左右するでしょう―私たちの未来だけではなく、地球の全生命の未来を。(シルビア・アール)

今こそテクノロジーの力を活用し、安価にクリーンエネルギーを実現させる投資を行うべきです。一度失った自然は、3Dプリンターを使っても復元できません。加速するテクノロジーを活用すれば、効果的な環境対策を行えるのですから、企業や政治家、官僚はここにパワーを注ぎ込むべきです。

テクノロジーの歴史を振り返ることで、私たちは未来を予測できます。テクノロジーを活用した個人や国家が成長を手に入れます。

貿易、情報、金融、文化、教育のフローにもっとも開放的な社会や、そこから学び、それに貢献する意欲が高い社会が、加速の時代にもっとも繁栄する可能性が高い。それができない社会は、苦労するだろう。

著者のこのメッセージを読んで、日本の未来に悲観的になりました。政治家や多くの経営者がテクノロジーに対する理解が低いことが、日本の問題かもしれません。若いリーダーや経営者がこの法則を理解してくれることを望みます。

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