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ピボット・ストラテジー: 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方
著者: オマール・アボッシュ, ポール・ヌーンズ, ラリー・ダウンズ
出版社:東洋経済新報社
本書の要約
「賢明なピボット」によって成長するためには、過去の事業・現在の事業・未来の事業を通じて、継続的で勇気ある変化を進めなければなりません。リーダーはそれぞれの投資比率を再検討し、バランスを保つ必要があります。
グーグルでは新規投資のルールが明確になっており、収益性への道筋が明確になっています。
賢明なピボットの3つのステージ
簡単に言えば、企業は成熟したテクノロジー(過去の事業)から最後となる利益を搾り取ることで、中核となる能力を向上させる必要がある。また、ピークに近づいているように見える事業(現在)の成長を加速する必要もある。最後に、新しいテクノロジーを採用して革新的な製品とサービスを生み出し、それが顧客によって短期間で導入されることに備える必要がある(未来)。ピボットの知恵に従うことで、新しい中核能力が形成され、一連のプロセスを最初からやり直す準備が整う。( オマール・アボッシュ)
賢明なピボットでは、過去の事業・現在の事業・未来の事業というライフサイクルの各ステージの中で、経営者は投資のバランスを考える必要があります。その際、過去の事業に早めに見切りをつけるのはやめた方がよさそうです。
成熟した事業を早期に終了するのではなく、そこに新しいテクノロジーを活用し、他の企業が見落としている潜在的収益価値を解放すべきです。過去のビジネスを生き返らせることで、そこから得られた利益を他の事業の成長のために活用するのです。
今までは、コモディティ化した製品、サービス、事業は閉鎖するか売却するかして、撤退することが不可避でした。しかし潜在的収益価値のギャップが急速に拡大しているため、ライフサイクルの終わりに近づいた事業でもイノベーションを慎重に適用することで「第2の人生」を歩めることが多いことを著者たちは見つけます。
「賢明なピボット」によって成長するためには、過去の事業・現在の事業・未来の事業のバランスを保つ必要があります。それぞれのライフサイクルにフィットしたピボットの知恵を採用すべきです。
潜在的収益価値を解放する企業は、ライフサイクルの途中で中核事業を諦めてしまうのではなく、S字曲線を上に引き延ばして、売上の成長と利益を加速させるチャンスを探している。
新たなテクノロジーが次々にマーケットを築き、新旧様々な企業が争う中で、大企業が生き残るためには、過去、現在の商品の売上をテクノロジーの力で伸ばすと同時に、未来の投資を行うべきです。新しいテクノロジーを活用することで、過去・現在・未来の3つのS字曲線全ての売上と収益をアップできます。経営者は過去・現在・未来の投資のバランスを取りながら、それぞれの売上を伸ばせるようデジタル・ファーストで戦略を考えなければなりません。
グーグルが長期的に成長する理由
新しい市場とそれを牽引するテクノロジーに対し後追いするような戦略を採用するのではなく、将来の幅広いオプションを積極的に実験し、芽が出現した瞬間に迅速に事業を拡大できるようなバランスのとれたポートフォリオを構築しなければならない。
グーグルは賢明なピボットを繰り返し、支配的な地位を獲得することに成功します。グーグル現在、世界の検索市場の90パーセントを支配し、世界最大のインターネット広告プラットフォームとなっています。
米国のデジタル広告市場は、2018年時点で830億ドルの規模に達していますが、グーグルはフェイスブックと共に合計63パーセントのシェアを握っています。グーグルはここに甘んじることなく、かつて存在したライバル企業の破綻から学び、成長することをやめません。
グーグルのアルファベットが多様な新規事業を行う中、収益の大半を稼ぐ検索チームはこの分野のイノベーションを続けることで、顧客のチャーンを防ぎ、競合の参入をあきらめさせています。
■オートコンプリート
■自動言語翻訳
■経路検索
■交通情報
■幅広いモバイルデバイス向けに最適化
■音声や画像による検索
現在の事業に対するこの種の継続的イノベーションは、間違いなくグーグルの収益向上に貢献しており、また過去の市場リーダーたちのように、グーグルをその座から追い出してやろうなどと愚かにも考える競合者たちを、追い払うことに成功している。
同社は「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること」という明確なミッションに沿って、検索だけでなく、幅広いイノベーションと新技術を開拓しています。
グーグルは深刻な競争に直面していないにもかかわらず、中核製品である検索および広告に多額の投資を行っており、ピボットの知恵を実証しています。同時にグーグルは、潜在的収益価値のギャップを絶えずスキャンして、新たなイニシアチブを模索しています。以下の新規事業を行うことで、グーグルはその存在感を高めています。
■クラウドコンピューティング
■ハードウェア(スマートスピーカーやスマートフォン、スマートサーモスタットなどのIoT製品)
■グーグルプレイストアのアプリ
■ユーチューブ・レッド(サブスクリプションサービス)
これらの事業はグーグルの総収益の中で一定の割合を占めるようになり、2017年には10パーセントを超えるまでに成長しています。当然、親会社のアルファベットも様々な事業で賭けをしています。同社はこの新たな賭けに年間営業収益の約7パーセントを投資しています。
■自動運転車部門のウェイモ
■高度気球によるブロードバンド配信
■ドローン配送
■グーグル・ファイバー
同社のベンチャーキャピタル部門であるGVは、ライフサイエンス、農業、ロボット工学などの分野における先端技術を中心としたポートフォリオを管理しています。アルファベットのポートフォリオでは、個々の「その他の賭け」が、財政的にもバランスをとって運用されています。
それぞれの新規事業にCEO、予算、アルファベットの経営陣が定めた売上目標があり、収益性への道筋が明確になっています。さらに重要なのは、すべての投資が、3つのライフサイクル・ステージの全体をまたぐ形で、同社の中核製品と「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにする」という長年のミッションに密接に関連してます。
「その他の賭け」の中には採算が合わないものがあり、アルファベットは何度も失敗を繰り返します。しかしアルファベットには、リスクと損失の両方を最小限に抑えるためのプロセスがあり、未来のリターンを得るための準備を怠りません。
上級管理職はすべての投資を定期的に評価し、関連するテクノロジーとビジネスモデルの実績に基づいて投資を加速または減速します。たとえばグーグルクラウドや、買収した道順案内アプリのウェイズはヒットしたことが証明され、急速に事業が拡大されました。
一方、失敗が認められたグーグル・ファイバーは投資額が減少し、グーグルグラスは一旦マーケットから撤退しました。しかし、昨年、眼鏡型端末の開発会社であるノースを買収したことで、再び動きがあるかもしれません。SNSのグーグルプラスは、完全に中止され、現在このサービスは使えなくなっています。
アルファベットは情報の収集、分析、キュレーションを中心に組織化され、熱心に活動している。彼らは実質的に、7つの勝利戦略のすべてを適用することでますます複雑化する情報源から潜在的収益価値を発見し、解放することができる。同社はこの理念により、彼らの提供する製品やサービスによって代表されるというよりも、より洗練されたイノベーションの原動力とでも呼ぶべき存在となっている。
グーグルが採用するピボットにおける7つの勝利戦略(参考記事)
1、テクノロジー主導
2、絶え間ない関係構築
3、データ主導型の事業展開
4、インテリジェントな資産管理
5、包摂的なアプローチ
6、新たな人材管理の導入
7、エコシステムの活用
ポートフォリオの構築、投資、および評価に対するアルファベットのバランスの取れたアプローチは、賢いピボットの代表例で、私たちはグーグルのピボット戦略から多くのことを学べます。
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