組織のイノベーションを妨げる7つの過ち ピボット・ストラテジーの書評


Man photo created by rawpixel.com – www.freepik.com

ピボット・ストラテジー: 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方
著者: オマール・アボッシュ, ポール・ヌーンズ, ラリー・ダウンズ
出版社:東洋経済新報社

本書の要約

多くの経営者や中間管理職は、既存のレールの上を走ることを選択し、やがて崩壊を迎えます。かつて強力な存在たっだ企業もテクノロジーが進化する中で、その力を失い、変化できなくなっています。一方、強い企業は「潜在的収益価値のギャップ」に着目し、テクノロジーを活用することで新たなマーケットを創造します。

なぜ、企業は変革に失敗するのか?

潜在的収益価値を解放するのは、個々の企業、業界、消費者、社会に潜む潜在的収益価値に着目し、解き放つための革新的な方法を常に探し求める企業だ。(オマール・アボッシュ)

かつて音楽業界をリードしていたアメリカのタワーレコードは、デジタル化の波に押され、倒産してしまいます。 iTunesやSpotifyのような新しいテクノロジーが現れたことで、若者にとってタワーレコードはあっという間に古臭い存在になってしまったのです。音楽がダウンロード販売に移行することがわかっていたにも関わらず、タワーレコードは変革する道を選ばなかったのです。

ほとんどの場合、ビジネスの破綻は、新しいテクノロジーが生み出す価値と既存企業が従来的な方法で生み出す価値の差が拡大していくことによって説明できます。強い企業は「潜在的収益価値のギャップ」に着目し、テクノロジーを活用することで、消費者を引きつけます。

ダメな企業は明確なやるべき道が見えていても変化を受け入れられません。多くの経営者や中間管理職は、既存のレールの上を走ることを選択し、やがて崩壊を迎えます。かつて強力な存在たっだ企業もテクノロジーが進化する中で、その力を失い、変化できなくなっています。

こうした硬化症は多くの場合、成功して急成長している企業に現れる、もしくは持ち込まれる「プロフェッショナルマネジメント」がもたらす結果だ。事業の運営者たちは、顧客や製品、サービスに直接触れられなくなる。マネジメントと前線の間に距離が空くようになり、それがリーダーに企業の変革を行うことを躊躇させるようになる。

変化を拒んでいるとベンチャーからの攻撃を受け、創造的破壊が引き起こされます。デジタル化とSNSの普及で、新たに発表された商品やサービスは、あっという間にユーザーに知れ渡れるようになりました。消費者はオンライン情報の情報から、新商品を評価し、すぐに手に入れてしまいます。情報が消費者に伝わるスピードが高まる中、テスラやポケモンのような商品も短期間で陳腐化してしまいます。顧客の課題を発見したスタートアップが、新たなテクノロジーを活用することで、変革を拒む企業を次々破壊していきます。

世界で最も成功し、尊敬を集めている企業ですら、最初の危機が到来したときに、それを乗り越えられることはめったにありません。コダックがフィルムに拘っているうちに、デジタルカメラにマーケットを奪われ、そのデジタルカメラもスマートフォンの登場で存在感を失っています。

S&P500の企業の平均寿命は、1920年代には67年だったものが、現在ではわずか15年にまで下がっています。多くの大企業がベンチャーやスタートアップにそのマーケットを狙われています。

ビッグバン型と圧縮型の創造的破壊は、インターネット技術の最初の波に襲われることのなかった業界にまで急速に広がっている。IoTや3Dプリンティングは、製造業に創造的破壊をもたらす構えを見せている。ゲノミクス、農学、ドローン、低コストのセンサー類が統合され、農業を再発明しようとしている。

自動車メーカーと保険会社はすでに、電気自動車や自動運転車が関係する近未来への対応に取り組んでいます。

変革を行わなければ、企業は衰退するしかありませんが、イノベーションを妨げる7つの理由を著者たちは、本書で紹介しています。

組織のイノベーションを妨げる7つの過ち

1、組織をあまりにリーンし過ぎる
すべての資源をひとつの製品に集中させると、顧客がそれに飽きてしまっていることが明らかになった後でも、潜在的収益価値を自社内で生むことになってしまいます。有能な開発者や賢い起業家であっても、次の新しいテクノロジーの波に乗ってイノベーションを生むチャンスを逃してしまいます。

市場の状態が変わり、次のイノベーションを待つような状態になっているときに、既存商品の改良を繰り返しても無駄でしかありません。リーン方法論を続けると間違った問題を解決してしまうのです。経営陣は需要が飽和する前に、新しいチームを組織して新しいサイクルを始めなければなりません。

2、資本攻勢で失敗する
次の波に乗るための資金や自由がなければ、企業は信用収縮を解決するのではなく悪化させ、混乱の渦中に取り残されてしまいます。タワーレコードは、事業拡大を進めるために負債による資金調達に大きく依存しており、その額が3億ドルを超えることもありました。債務返済の大きな負担は、同社の財務に悪影響を及ぼしました。2000年代初頭、タワーレコードの売上は急落し、倒産しか選択肢がなくなっていたのです。

3、リーダーを失う
成功した企業は創業者やリーダーを早いタイミングで追い出します。マーケットが確立されると投資家やコーポレートベンチャーの担当者は、すぐにプロ経営者を求めます。ヤフーのジェリー・ヤンやツイッターのエヴァン・ウィリアムズのように、創業者たちはしばしば、経営の座から追われます。

リーダーシップの問題は、残された会社や部門にとって深刻なものになる。そしてこの問題は、潜在的収益価値のギャップがより速く拡大するにつれ、より早く到来するようになっている。そして代わって据えられた経験豊富なマネジャーたちは、結局元の製品の改良に集中することになる。

新規参入するベンチャーは、新たな「価値解放技術」を活用した製品を発売することで、既存の勢力を短期間で淘汰します。

かつて、アップルはジョブズを追い出し、プロ経営者を後釜に据えたましたが、消費者が望む製品を生み出すことに失敗しました。その後、アップルに復活したジョブズが見事に同社を再生させたことを思い出せば、創業者やリーダーに敬意を払うべきです。

4、ウォール街の方を向いて経営する

成熟した企業も同様に、旧態依然としたウォール街のアナリストに足を引っ張られる可能性がある。彼らは日々の業績に注目することが多く、それがより深いところにある創造的破壊力のあるトレンドやテクノロジーを見過ごしてしまうことにつながるのだ。

2011年に上場したビジネス向けSNSのパイオニアであるリンクトインは、ウォール街が予想していた収益を生み出すことに繰り返し失敗し、それが5年後の株価崩壊につながりました。その結果、リンクトインはマイクロソフトに買収されますが、投資家の目を気にしなくなったリンクトインは復活します。

5、運に賭ける

スタートアップによるものであれ、既存企業によるものであれ、立ち上げた製品がビッグバン型の創造的破壊をもたらすことがわかれば、リーダーたちは無敵になったような気分になるものだ。

人々は成功した企業のCEOを祭り上げ、褒め称えますが、経営者の力だけで成功したわけではありません。しかし、CEOはそうした人気を自分の才能と勘違いしてしまい、顧客の声に耳を傾けたり、自分自身の間違いから学ぶことがなくなり、失敗を繰り返します。

6、消費者ではなく規制に合わせる
新サービスは当局から規制されることが多いですが、スタートアップが規制当局にばかり気を使うのはリスクがあります。規制当局との距離を縮め、顧客の対応を忘れると、マーケットを失ってしまいます

7、現れることのない顧客を待ち望む
SNSが普及し、デジタル化が進む中で、商品の寿命はどんどん短くなっています。かつてのキャズムのベルカーブはもはや過去のものとなり、最近はシャークフィン型になっています。

アクセンチュアはシャークフィンモデルを上の図で説明します。このシャークフィンを乗りこなすためには、イノベーションを繰り返す必要があります。例え、失敗しても、すぐにまた新しいサービス打ち出す力が、企業のリーダーには求められています。著者たちは7つの過ちを反面教師にして、ここからよいアイデアを生み出すべきだと述べています。

本書の関連記事はこちらから

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました