デジタルロケーションマーケティングとは何か?


Technology photo created by rawpixel.com – www.freepik.com

変貌する生活者の欲求を捕え、DX時代の事業を設計する 生活者モード戦略
著者:佐藤智施、大倉幸祐 
出版社:日経BP

本書の要約

人のIDと時空間IDを組み合わせ、生活者のつながりに適切な情報を流すことで、外出先での購買体験を変えられます。「デジタルロケーションメディア」という新たなマーケティング施策を取り入れ、生活者との関係を強化しましょう。

デジタルロケーションマーケティングとは何か?

「時空間」から生じる生活者モードを捕えるデジタルロケーションマーケティングは、生活者を取り巻く状況の中でも、「時空間」に着目したマーケティング手法である。(佐藤智施、大倉幸祐 )

変貌する生活者の欲求を捕え、DX時代の事業を設計する 生活者モード戦略書評を続けます。5GやIoT、AIなどのテクノロジーが進化する中で、マーケティングも当然進化します。「時空間」から生じる生活者モードを捕えるデジタルロケーションマーケティングを企業は採用し、生活者とのコミュニケーションを積極的にはかるべきです。

「時空間」の生活者モードを著者たちは、外出調査によって明らかにしました。生活者の平日1日の平均外出時間は5.4時間でここにはメディアと接触するための十分な潜在的な機会があります。外出時の移動中は、「思いがけない情報に出会うことがある」と回答する人は52.3%に上ります。マーケティングにおいて、生活 者の「外出」は、向き合うことで成果の高い施策を行っていける可能性が高い、高ポテンシャルな経験なのです。

また、博報堂DYグループの4000人のネット調査によって、「時空間」での生活者モードの実態が見えてきました。 1週間のうちのどの曜日、どの時間帯に生活におけるどんな経験をしているかを見ると、「通勤している」は、平日の6時から10時が多く、「日常の買い物以外のショッピング」は、土日の12時から17時に多いことがわかりました。

外出時の経験を見ると「仕事の用事の外出や移動」は、東京だと丸の内や品川、大手町が多くなり、「ショッピングや友人・恋人との外出」は、新宿、渋谷、池袋、銀座が多いというデータが上がってきました。外出時の経験ごとに場所が異なります。

さらに、それぞれ外出時の経験ごとの気分を見ると、「出発前」や「通勤・通学」時は、「憂欝」「面倒」な気分、「親しい人との外出」「趣味のための外出」では「わくわく」「充実」などの気分を伴っていました。

これらの結果を、視点を変えて集計し、各街の曜日時間帯ごとにどのような気分になっている人が多いかをスコア化しました。平日昼の大手町で過ごす生活者は「緊張している」という気分が目立ちます。一方、平日夜7時以降、土日の丸の内では、「元気がいっぱいだ」という気分が目立ってきます。秋葉原は平日も土日も共通して、「興奮している」という気分の数値が高くなっています。このように街、時間帯ごとで生活者の気分は変わることが明らかになったのです。

外出時の場所、時間ごとに生活者・物・情報のつながり方が非常に多様であることだろう。人々は、それぞれの場所、時間ごとに異なる外出の経験をしている。経験が異なれば、ネットワークでやり取りしている生活者や、アクセスするモノや情報も変化する。

2つの時空間では、生活者・物・情報のつながり方が全く違ってきます。つながり方の違いに応じて、そこから生じる欲求も多様に変化します。

生活者の多様な状況とコトとのマッチングを行う新たなマーケティングの観点からみれば、この様々な生活者モードが隠れている「時空間」は大きなチャンスがあります。このチャンスに注目して開発した新たなマーケティングの手法が、「デジタルロケーションマーケティング」なのです。

時空間IDを活用し、デジタルロケーションマーケティングを実践する。

マーケターはデジタルロケーションマーケティングの第一歩は、時空間の生活者モードを明らかにし、施策の方針策定をしていくためのプラニングフレームワーク「生活者モードベースドプラニング」になります。次にメディアを時空間によって再編成し、具体化していく「デジタルロケーションメディア」をつくります。

「生活者モードベースドプラニング」は時空間から生じる生活者モードを明確化し、それを捕える施策の方針策定を行うためのプラニング手法で、以下の3つのステップを踏みます。
①マッチングする時空間の決定
②生活者モードの明確化
③生活者モードを捕える施策全体の訴求コンセプト・企画の決定

ステップ1
マッチングする時空間の決定。生活者がどんな時空間にいるときにアプローチすべきなのかを決めていきます。

1、生活者の動線を想定した時空間の決定。
朝起きてから夜寝るまでといった日々のライフサイクルや、年ごとなどで周期性を持った生活者の行動など、生活者の一連の動きの中で、どの時空間にアプローチすべきかを検討します。
■平日朝のオフィス街
■金曜夜の繁華街
■土日昼の家族向け商業施設
■7~8月の夏休み期間のサービスエリア周辺
■大晦日、正月の神社周辺
■2~3月の賃貸不動産仲介店舗や家電量販店周辺といったものが考えられます。

時空間から生じる欲求自体は、ネットワーク化された生活者が共通して持つものであると捉えます。例えば、ある生活者のライフサイクルごとの行動を想定し「金曜夜の繁華街」という時空間が明確になったとしても、 その生活者が「金曜夜の繁華街」にいる際に持つ欲求は、その生活者個人の意識の中にあるものではなく、「金曜夜の繁華街」という時空間を共有している人々や、その人々のネットワークが共通して持つものであると考えます。

2、自社店舗の商圏を想定した時空間の決定。
コト提供を行う場所として自社店舗を考えている場合に、その店舗が集客を想定する地理的範囲や時間帯を勘案しながらアプローチすべき時空間を検討していきます。自らが提供するコトとマッチングする状況として、どのような店舗の、どのような地理的範囲や時間帯にフォーカスするのかを、来店者のデータ分析等から明確にします。
■平日昼間の都市部の店舗周辺数10m
■土日夜の郊外店舗周辺数㎞といった時空間を考えます。

ステップ2 生活者モードの明確化
時空間から生じる生活者モードの明確化。
その時空間においてどのような生活者・物・情報が、どのようにつながっているのかを、アクチュアルデータを活用して推測します。
○その時空間自体の分布
■地図上のどのようなエリアか
■どのような曜日時間帯か

○その時空間で過ごしている人についてのデータ
■性/年齢/職業/家族構成といった人口統計的特徴の傾向データ
■趣味嗜好の傾向データ

○その時空間の環境についてのデータ
■POIの傾向データ(Point of Interest の略。該当エリアにある施設の傾向に関するデータ)
■都心なのか、郊外なのかといった地域特性の傾向データ

○その時空間で起こっている行動についてのデータ
■投稿データ(Twitter/Instagram等のデータ)
■コンビニ/スーパーマーケット等のリアル店舗における購買の傾向データ

博報堂では、生活者の時空間に隠れている欲求6つに類型化しました。このモードを見ながら
生活者の行動を考えることで、プランの精度が上がります。

ステップ3 生活者モードを捕える
施策全体の訴求コンセプト・企画の決定明確にした時空間の生活者モードを踏まえて、施策の方向性を決定していきます。まずは、生活者の時空間と自らが提供するコトとをマッチングするための施策全体の訴求コンセプトを考えます。また、施策全体の訴求コンセプトと同時に、施策の具体化につなげるために、時空間においてどのような企画を行っていくかも整理します。 捕えるべき時空間が複数ある場合は、その時空間ごとにステップ2の生活者モードの明確化、ステップ3の施策全体の訴求コンセプト・企画を明確にしていくべきです。

時空間でメディアを再編成し、施策を具体化する「デジタルロケーションメディア」 「生活者モードベースドプラニング」で、施策の方向性を明確にした後には、施策を具体化さえていきます。

「生活者モードベースドプラニング」で着目しているのは、生活者を取り巻く「時空間」という状況だ。これに合わせて、施策を具体化していく際には、「プロダクト」「プライス」「プレイス」「プロモーション」の4Pを時空間で再編成していく必要 がある。中でも我々が着目しているのは「プロモーション」の中で重要な役割を占める「メディア」の時空間での再編成だ。我々は、「時空間で再編成されるすべてのメディア」を「デジタルロケーションメディア」と定義している。

デジタルロケーションメディアを活用することで、生活者の時空間に的確にアプローチし、そこから生じる生活者モードを捕えることが可能になります

「つながるテクノロジー」の普及によって2段階の進化がメディアに起こっています。
①メディアの「デジタル化」
②メディアの「ネットワーク化」

今、様々なデジタル屋外メディアやスマートフォンが、ネットワーク化され始めています。複数のデジタルサイネージを特定条件で配信制御したり、位置に連動したスマート フォンへ情報配信したりする施策が、今まで以上に行えるようになりました。

例えば、デジタルサイネージとスマートフォンがネットワーク化されれば、コンテンツが連動し、一体感のあるエリアジャックも可能になります。ネットワーク化が進展すれば、メディアの境界が消え、時空間で生活者にアプローチできるようになり、真の意味で「時空間から生じる生活者モード」を捕えることが可能になるのです。

 タッチポイントのデジタル化や、顧客管理システムの高度化が進む中で、マーケティングの手法においては、「人のID化」が進んできた。適切な手段で同意を得た上で、自社データベースの顧客IDや、生活者が利用するブラウザのCookieID、スマートフォンの端末IDなどに様々なデータを紐づけ、蓄積する。

ネットワークにつながり、物と情報が結びついた環境を感覚的に選択し受容するようになった生活者に対するマーケティングで十分な成果を上げるためには、「人のID」を活用する手法と、「時空間のID」を活用する手法を掛け合わせてマーケティングの計画・実行を検討していく必要があります。

時空間IDに生活者モードを明らかにするための様々なデータを紐づけて管理し、多様な切り口で集計・分析を行えるようにすることで、データドリブンな生活者モードの明確化が可能になっていきます。 メディアサービスは「枠」から「人」、そして「時空間」へ 「時空間のID」を活用する手法が広がれば、メディアサービスの在り方も大きく変化していきます。

時空間IDで施策を打つようになると、「この時空間ではこのようなコンテンツや広告を作り、このように配信する」といったような「時空間」を単位としたメディアサービスに変わります。土日の昼間の商業施設においてはファッショントレンド情報を配信し、平日の朝のオフィス街ではビジネスニュースを配信する、という風に出すコンテンツが変わります。

人のIDと時空間IDを組み合わせ、生活者のつながりに適切な情報を流すことで、外出先での購買体験を変えられます。「デジタルロケーションメディア」という新たなマーケティング施策を取り入れ、生活者との関係を強化しましょう。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました