佐渡島庸平氏の観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのかの書評


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観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか
著者:佐渡島庸平
出版社:SBクリエイティブ

本書の要約

認知バイアス(= 脳)、身体と感情(=感覚器官)、コンテクスト(=時空間)が、バグを起こしやすいと意識しているだけで観察の精度を高められます。自分の中の常識というメガネを意識的にかけかえ、観察力を高めましょう。観察する対象に愛を注ぎ、時間をかけて対象物を表現することで、良い作品が生まれます。

観察を阻む3つの要因

そもそも、自分とニュートンを比較しようという考えが傲慢かもしれないが、僕らを決定的に隔てているのは何か。どちらも所詮、人間。ちょっとした差が、大きな差を生み出しているだけだ。そして、それを「観察力」の差だと考えるようになった。(佐渡島庸平)

優秀なクリエイターは観察力が優れているとコルクの佐渡島庸平氏は指摘します。ニュートンやパスツールなどの偉人たちも観察する力によって、イノベーションを起こしてきました。

しかし、私たちは自分の思い込みによって、インプットの質を下げてしまいます。自分の頭の中にたくさんの思い込みや社会常識を増殖させることで、観察力を低下させてしまうのです。

アウトプットの質を高めたければ、まずは観察力(インプット)の質を高めることから始めましょう。

観察力を鍛えると必然的に他の能力も鍛えられる。しかし、他の能力を鍛えることを意識していても、観察力の成長はゆっくりだろう。観察力こそが、ドミノの一枚目だ、と。

物事に対して仮説をもちながら観察することを習慣にすると、仮説と現実のギャップに気づけ、仮説を更新できるようになります。問いを持ち、観察し、現実からフィードバックを得ることで、私たちはアウトプットの質を高められます。

一方、観察のレベルが低いままでは、仮説と現実の間にギャップを感じません。大切なことが目に入らず、わかったふりをすることで、仮説の更新が止まってしまうのです。自分の中から観察を拒むものを取り除き、対象との対話を繰り返し、ヒントを見つけるべきです。

■観察を阻む3つの要因
1、認知バイアス
常識・偏見・言葉・概念……これらはすべて、脳の認知に関与しています。こうした認知の歪みが、インプットの質を下げてしまいます。すでに知っていることを前提にして観察するのをやめ、素直な気持ちで観察しましょう。

2、身体・感情
観察は私たちの身体・五感を通じて行われるため、心身のレベルを保つことも重要です。 感情が観察を阻害している場合には、思考を一回止めるとよいと言います。複数の感情をもって、客観的に対象を観察しましょう。

3、コンテクスト
人間の脳には、何かに注目するとそこに「ロックオン」するという特徴があります。そのため、人は「時間」と「空間」を同時に注目することが、なかなかできません。 観察力を鍛えて、世界を見る解像度を上げていくには、対象だけでなく、コンテクストまで含めてみることが大切です。

人は「メガネ」をかけてしか対象を観られないのであれば、そのメガネを意識的にかけかえればいい。その「意識的なメガネ」というのが「仮説」だ。 いい観察が行われると、問いが生まれ、その問いから仮説が生まれる。そして、次の新しい観察が始まる。その繰り返しによって、対象への解像度は上がっていく。

認知バイアス(= 脳)、身体と感情(=感覚器官)、コンテクスト(=時空間)が、バグを起こしやすいと意識しているだけで観察の精度を高められます。自分の中の常識というメガネを意識的にかけかえ、観察力を高めましょう。

観察力を高めるために重要なこととは?

対象への愛がないといい観察ができない。愛さえあれば、時間はかかるかもしれないが、いい観察ができる。そして、いい観察ができると、より愛が深くなる。 対象を判断せずに、観察をし続けるというのは、時間がかかる。判断をしないのだから、終わりがない。どうしてもすぐに判断をして、行動をしたくなる。変化を促したくなる。

私たちはデジタルギアに囲まれ、集中力を奪われてしまいます。対象を観察する時間がどんどん短くしてしまうことで、自分の能力を低下させています。これを避けるためには、対象に愛情を注ぐことが欠かせません。

自分にとって重要なことは何なのかを明確にし、パーパスを持つことで、対象に時間をかけられるようになります。質の良いアウトプットを出すためには、インプットのために時間を使うことが重要です。著者は愛を持って、対象と対峙すべきだと言います。アウトプットのゴールが明確であれば、そのためのインプットに時間を使えるようになります。

私たちは自分の子どもの行動を見て、子どもの将来を判断することはありません。彼らの未来を信じて、子供との対話を重ねるはずです。この子どもへの愛と同じ気持ちを持って、対象を観察する必要があるのです。

いい観察は、「する」ではなく「いる」を見る。「する」は、結果が出る。結果で判断できる。だから、ていねいな観察は必要ない。「いる」というあいまいなもの を観察しようと思うと、圧倒的な時間を一緒に過ごさなくてはいけない。そして、その時間の中で何も「する」ことなく、観察をしなくてはいけない。つまり、暇で退屈な時間を過ごさないと、あいまいな「いる」の観察にたどりつくことができない。

「いる」を観察するとは、あいまいな、揺れ続ける人とその人の関係性を観察することなのです。対象との関係性を築き、観察を続け、それを表現することで、良い作品が生まれます。小説でも絵画でも、良い作品には、対象への愛があるのです。「観察力のある表現とは、愛にあふれた表現である」という著者の言葉が刺さりました。

世界を見る解像度を上げるためには、愛も持って対象物を観察し、それを自分らしく表現することから始まります。観察に時間をかけ、自分の内面との対話を繰り返し、それを表現として、アウトプットするのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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