トッド・ローズの平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学の書評


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平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学
著者:トッド・ローズ
出版社:早川書房

本書の要約

平均的な思考を捨て、自分らしい人生を歩みましょう。自分の個性や才能を理解し、自分らしい迂回路を見つけるのです。足を踏み入れた人が少ない道を選ぶことで、ブルーオーシャンが見つかります。誰みも選び平均的な経路をたどるよりも、自分らしさを追求した方が、成功する可能性は確実に高くなるのです。

なぜ、平均思考を捨てるべきなのか?

平均的な人間など存在しない。(トッド・ローズ)

平均身長、平均点、平均年収、平均層など、私たちのものの考え方や価値観には、「平均」を基準に考えることが当たり前になっています。「個性学」の推進者である著者のトッド ローズは、この平均という考え方を疑うべきだと言います。

ほとんどの学校や職場や科学機関が、平均という基準で物事を判断しています。ゆりかごから墓場まで、平均という尺度は私たちの人生に影響を及ぼします。平均値にどれだけ近づいているか、あるいは平均値をどれだけ上回っているかによって人物が判断されることで、多くの人がチャンスを失っています。

学校では、平均的な学生の成績と比較して評価やランク付けが行なわれ、大学入試や就職の際にも平均的な点数よりも上の人が有利になっています。性格検査の得点、標準化された評価におけるランク、学業平均値、業績評価での格付けなどが、あなたやあなたの子ども、学生、社員の能力を反映していないことは、ほとんどの人たちが直観的に理解しているにも関わらず、平均という概念が、個人を評価する尺度として社会で使われ続けています。

しかし、個人について本当に理解しようとする場合には、いくら平均に注目しても、不正確な結果しか得られません。著者は平均的な人間は誰もいないという事例をいくつも紹介しながら、平均値に囚われないことが重要だと述べています。

かつて、アメリカ空軍でも平均値が使われ、コックピットが設計されていました。全てのパイロットの足の長さ、胴の長さ、背の高さなどの身体データの平均値を使うことで、操縦ミスを引き起こしていたのです。平均値を疑い、調査してみると平均数字にピッタリ合致したパイロットは、ただの1人もいませんでした。身体的な特徴にバラツキがあると理解したアメリカ空軍は、コックピットの設計をパイロット個人の多様な体格に応じて、調節可能にすることで事故件数を激減させたのです。

当然、平均値にはメリットがあります。平均を重視するシステムがアメリカ全体に普及したが故に、民主主義の繁栄が実現しました。しかし、平均主義のおかげで私たちは大切なものを犠牲にしてきました。 平均以上を気にするあまりに、人の個性に気づかず、優秀な人材を見逃していたのです。

ペンシルバニア州立大学のペーター・モレナールの研究チームの調査によると、グループ平均のみに頼るアプローチよりも、個人を優先させるアプローチからは優れた結果が得られることがわかりました。ただし、分析してから集計する作業を効果的に行なうためには、広範囲にわたるデータを取得して使いこなさなければなりませんでした。最近のテクノロジーの進化によって、大量の個人データを取得し、分析できるようになりました。今こそ、平均値の呪縛から逃れ、個人評価の評価を個性に基づいて行うべきです。

平均思考を捨てる3つの原理

平均思考を捨てるためには、以下の3つの原理を覚えておきましょう。この原理を身につけることで、まったく新しい方法で個人を評価したり選抜したり、理解できるようになります。人の評価において、タイプやランクをきっぱり捨て去り、自分の人生に備わっている個性の真のパターンを発見できます。
■バラツキの原理
■コンテクストの原理
■迂回路の原理

■バラツキの原理

複雑で「バラツキのある」ものを理解するために、一次元的思考は役に立たない。 本当に重要な個人的資質を判断するために学業成績など一次元的思考を応用しても、結果は失敗に終わる。 人間の重要な特質のほぼすべて、なかでも特に才能は、複数の異なる側面から成り立っている。

個性にはバラツキがあるにも関わらず、多くの企業は才能を平均値で測ろうとします。テストの点数、学業成績、業務評価のランク付けなどだけで評価し、多くの人の才能を引き出せずにいます。

平均値という一次元的思考にこだわると、新たな才能を見出せなくなりますから、この一次元的思考を手放しましょう。人間の才能にはバラツキがあるという事実を私たちが受け入れ、子どもや社員や学生の千差万別なプロファイルを評価するようにできれば、彼らの未知の潜在能力を認識し、長所を生かすための方法を教え、短所を確認して改善できるようになります。

自分はユニークな能力の持ち主だと認識できれば、それが第一歩となり、自分の潜在能力を十分に理解できるようになる。そうすれば、平均主義によって将来像を独断的に決めつけられても、狭い枠に閉じ込めようとする圧力をはねつける勇気がわいてくるだろう。

平均に頼りすぎると人間の行動に備わった重要なディテールをすべて見逃してしまいます。平均値に拘りすぎると成長を阻害してしまうのです。勇気を持って自分を信じることで、自分の新たな可能性を見つけられます。

■コンテクストの原理

個人の行動はコンテクストすなわち特別の状況に左右されるもので、コンテクストから切り離して説明することも予測することもできない。一方、コンテクストがおよぼす影響は、当事者がどんな特性の持ち主かによって異なってくる。言い換えれば、行動は特性だけ、状況だけで決まるわけではない。両者のユニークな相互作用によって生まれるのだ。

人は特定の状況(コンテクスト)に置かれると、そのコンテクストを意識しながら行動します。コンテキストによって、人は行動を変えています。会社で大人しい人が、地域のコミュニティでは快活に行動するなど私たちは状況に応じて、自分の行動を変えているのです。コンテクストごとに異なる他者のシグネチャー(行動パターン)に目を向け、その人の才能を引き出すようにすべきです。

コンテクストの原理は、自分への理解も深めてくれます。自分がどんな人間で、周囲の人たちとどのように交流しているのかを明らかにすれば、私生活においても仕事においても成功するための土台が形成されます。

■迂回路の原理

私たちは新しい経路を常に切り開いて、変化しているのですから、成功の可能性も絶えず変わります。近道を歩く人もいれば、遠回りしながら、知識や体験を積み重ねる大器晩成型の人もいます。ある人にとっては、平均的な既存の成功法則が障害になる場合するあります。個性にはバラツキがあると考え、条件と帰結のシグネチャーを理解しておけば、自分が何をすればよいかがわかります。

ニューヨーク大学のカレン・アドルフ教授は、平均的な順序がないことを明らかにしました。赤ちゃんが歩くようになるまでには25種類の道筋があり、どの道筋をたどった赤ちゃんも最終的には歩けるようになったのです。人には人それぞれの成長経路があるのです。ゴールへと到達する道筋は一つではないのですから、自分らしい道(迂回路)を選びましょう。

自分のさまざまな個性を知ることで、どの経路選べばよいかがわかります。

私たちは全員が特殊なケースなのだ。個性に関する一連の原理を理解すれば、あなたはこれ以上ないほどうまく人生をコントロールできるようになる。平均が押し付けてくる型にこだわらず、ありのままの自分と向き合えるようになるからだ。

平均的な思考を捨て、自分らしい人生を歩みましょう。自分の個性や才能を理解し、自分らしい迂回路を見つけるのです。足を踏み入れた人が少ない道を選ぶことで、ブルーオーシャンが見つかります。誰みも選び平均的な経路をたどるよりも、自分らしさを追求した方が、成功する可能性は確実に高くなるのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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