ジャック・アタリのメディアの未来 ー歴史を学ぶことで、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、SNSの未来は導き出せるの書評

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メディアの未来 ー歴史を学ぶことで、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、SNSの未来は導き出せる
ジャック・アタリ
プレジデント社

本書の要約

テクノロジーが進化し、メディアの形態も今後、激変していきます。次世代、さらには100年後、200年後の世代(人類がまだ存在していればの話だが)を待ち受けるのは、常軌を逸する狂った未来になりそうです。それを打破するためには、巨大IT企業のプラットフォームを解体する必要があります。

歴史から導き出したメディアの12の法則

メディアは、重要なこととそうでないことを区別するのをやめたか、世間の注目を得たいだけなのだろう。これらのメディアの大半は、権力に立ち向かうと主張しているが、そうした権力と同様に社会的信用を失い(今後、さらに信用を失うだろう)、軽蔑され、嫌悪されている。人々は情報を得ることによって行動を起こしたいと願っているが、今日、この願いを理解しているメディアはほとんど存在しない。(ジャック・アタリ)

人類はフェイクニュースと共に生きてきたとジャック・アタリは指摘します。彼は人類のメディアの歴史を振り返り、権力者の「嘘」を暴いています。現代のメディアにもフェイクニュースが溢れ、人々を惑わしています。テクノロジーが進化する中、旧来のメディアは新たなメディアに置き換えられていきますが、今後、大衆の多くは正しい情報を得られなくなり、貧困層に脱落していくとアタリは言います。

ジャック・アタリは歴史を振り返りながら、「メディアの12の法則」を明らかにしました。権力者はフェイクニュースによって市民を騙してきましたが、今後はGAFAMなどのテック企業が力を持ちそうです。

■メディアの12の法則
1、私的な連絡手段は、マスコミュニケーションの手段になる。たとえば、郵便物は新聞、電話はラジオ、写真はテレビ、電子メッセージはインターネットになった。これら以外の情報伝達手段も事情は同じだ。

2、情報を配信する手段が発明されると、それらはすぐに、教育、文化、娯楽、創作活動のために利用される(例 彫刻、版画、印刷物、写真、CD、映画、ラジオ、テレビ、テレビゲーム、オンラインゲーム)。

3、情報の生成や配信のさまざまな手段は商業活動になり、次第に自動化されて人 間がつくる機械が代行する(印刷物はSNSになった)。

4、コミュニケーションの道具は、政治には権力、所有者には利益、利用者には娯楽をもたらす。

5、国の思想、文化、経済、政治の形態は、国民に対する情報配信のあり方に多大な影響をおよぼす。

6、国民一人一人に対する情報配信のあり方(情報を配信しないことを含む)は、国の政治、文化、経済、社会の未来に影響をおよぼす。

7、地政学上の超大国の座を得る国は、コミュニケーションおよび情報に関する最先端の手段を支配し、これを用いて外国に影響力を行使する。

8、権力者は、きわめて重要な情報を誰よりも先に受け取り、どの情報を他者に伝達するのかを選びたがる。すなわち、検閲、事実の隠蔽、他者の誹諦中傷である。

9、権力者が国民の嗜好を把握しようとするように、メディアも利用者の好みを知ろうとする。両者とも、監視し、魅惑し、不安を醸し出し、憂さ晴らしをさせ、歓心を買おうと画策し、監視、政治、あるいは金儲けのために、国民や利用者に関するデータを最大限に活用しようと目論む。

10、検証および論証できる情報を得ることのできる人口は増え続けている(総人ロに占める相対的な割合も上昇している)。また、こうした情報を提供できる人 口も増加している。

11、国民の行動に必要な正確で有益な情報が、自由かつ公平にアクセスできるようにすること。このことは、独裁者の賊雇を阻止するためには充分でないとしても、民主主義を存続させるための条件だ。

12、われわれは、意思疎通、情報伝達、世論操作、圧制、行動、解放のために五感を利用してきたし、これは今後も変わらない。視覚、聴覚の次は、触覚、嗅覚、味覚など、あらゆる感覚が用いられる。

AIで書かれる記事や五感を代替するホログラムなどのテクノロジーが進化すれば、ますますニュースの真偽の見極めが難しくなっていきます。それを避けるために、私たちは何をすればよいのでしょうか?

メディアの未来、そして私たちがすべきこととは?

次世代、さらには100年後、200年後の世代(人類がまだ存在していればの話だが)を待ち受けるのは、常軌を逸する狂った未来であり、今日の感覚では到底理解できない世界だ。

未来のメディアはテクノロジーの変化とともに、徐々にその形を変えていきます。ロボットがニュースを書いたり、ホログラムが生み出すことが当たり前になる中、ある日突然、それらのテクノロジーが私たちの社会を破壊するかもしれません。

著者は、この惨事を防ぐには、情報とコミュニケーション手段の歴史を彩る膨大な出来事、テクノロジー、試行錯誤から教訓を導き出す必要があると言います。その際、前述の12の法則が役立ちます。

多くの国では、紙の新聞の購読、ラジオとテレビの視聴、SNSの利用は、あと数年間は続きます。ますます多くの人がジャーナリストを自称し、メディアを立ち上げていきます。人々から信頼されるメディアもあれば、権力に忖度するメディアもあるなど、メデイアは玉石混交の世界になっていきます。特権階級は今後も長期にわたって、誰よりも先に重要な情報を入手することによって、さらなる富を築いていきます。

人類は徐々に3つの集団へと明確に分類されていくと著者は予測します。
①権力、知識、富の大部分を支配する上級ノマド
情報は、友人、富裕層、投資家、金融関係者、研究者、大学関係者、起業家などのごく小さな仲間内で流通し続けます。彼らは将来においても、科学、テクノロジー、市場、イノベーションの最新情報を真っ先に知り、どの人に会えばよいのかをわかっています。

②飢餓で命を落とすことさえある極貧に喘ぐノマド
最貧層は、電話とその後継手段によってしか世界のニュースを知ることができません。

③一つめの集団への仲間入りを夢見ながらも2つめの集団へと転落することを恐れるヴァーチャル・ノマド

GAFAなどのプラットフォーマーは、人々のデータを収集して、顧客を管理します。様々なサービスに加入できる人は選別され、やがて正しい情報の入手も難しくなっていくはずです。将来的には、一部のジャーナリストだけが支払い能力のある人々のために情報を届ける「デジタル・アッヴィージ」になっていきます。

私たちの五感がホログラムに移し替えられるようになると、現実と仮想を切り分けることは不可能になります。やがて、ブレインテクノロジーが進化すれば、人々の脳が直接交信できるようになるかもしれません。

テクノロジーが支配する未来には、国家ではなく、GAFAMなどの巨大企業が権力を握り、社会的弱者が増加しそうです。彼らはパンとサーカスで、大衆をコントロールし、力を蓄えていきます。

権力者たちは、この究極のファンタジーが実現するのを待つ間、情報開示はきちんと行われていると大衆に信じ込ませながら大衆に娯楽を与え続ける。政治、経済、テクノロジー、医療、生物に関する最も価値のある情報は、政治権力者、投資家、金融業者、研究者、大学関係者、起業家などの小さな集まりの中だけで流通し続けるだろう。

GAFAやBATXが情報をコントロールし、保険、医療、教育、娯楽の分野で活躍する大企業の所有者になっていき、やがては権力を握ります。「命の経済」を担う企業が、未来の勝ち組になると理解しているこれらの企業は、「命の経済」の大部分を手中に収め、情報発信、教育、監視、懲罰のための手段を自由に使うことができるようになるのです。私たちのライフスタイルや資産は丸裸にされ、彼らにコントロールされてしまいます。

この未来を打破するためには、情報の真偽を見抜く能力を養う必要があります。そのために子供達にメディアリテラシーを高める教育を積極的に行うべきです。特権階級に自由を奪われないようにするためには、巨大IT企業が運営するプラットフォームを解体しなければならないと著者は述べています。

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