天才の共通点は情熱にあり。クレイグ・ライトの天才の書評

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イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす
クレイグ・ライト
すばる舎

本書の要約

天才には情熱という共通点があります。天才は世間とは異なる目で世の中を見ており、それが解決されるまで、落ち着くことができないのです。他者が気づいていない世の中の課題を発見し、それを解決するために彼らは情熱を傾け、集中するのです。その情熱と集中がイノベーションにつながるのです。

情熱が人を動かし、天才をつくる!

情熱に従うには、もちろん、まずその対象を見つけなければならない。瞬時にひらめくこともあれば、ほとんど一生かかることもあるプロセスだ。(クレイグ・ライト)

イェール大学、ヘンリー・L・アンド・ルーシー・G・モーゼス名誉教授で、学部生向けの人気講座「Exploring the Nature of Genius」(天才の資質探求)を長年担当しているクレイグ・ライトイェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす書評を続けます。

天才には情熱を持って行動しています。ピカソ、アインシュタイン、モーツァルトは早くも5歳になる頃には、それぞれ自分が絵画、科学、音楽に情熱を傾け、時間を多く費やしていたと言います。

孔子は「自分が夢中になれる職業を見つけなさい。そうすれば、1日たりとも仕事をしなくて済むから」という言葉を残していますが、自分がワクワクする仕事が見つけられれば、人生をよりエンジョイできます。凡人な私もサラリーマンを辞め、好きなことを仕事にしてから、日々充実する時間を過ごせるようになりました。

ノーベル物理学賞で有名なマリー・キュリー((1867~1934))は、正式な教育も受けておらず、ポーランドの片田舎で子守として働いていました。キュリー夫人は、ゼロからその栄誉を手にした天才でした。彼女は情熱と忍耐をもって研究を続けたのです。

20歳の頃、キュリー夫人は文学および社会学への興味を失い、フランスへと移住し、ソルボンヌ大学の理学部で物理学を学ぶようになりました。優秀でしたが貧しかったキュリー夫人は10年間、「みすぼらしい古小屋」で苦難の研究生活を続けます。1897年、物理学と数学の両方で修士号を取得したキュリー夫人は、夫となった物理学者ピエール・キュリーの指導の下、博士号取得の研究を開始しました。

キュリー夫人は粗末な小屋で、長年かけて、およそ8トンもの瀝青ウラン鉱を処理しました。暖房も電気も満足にない、農場に隣接するその小屋でキュリー夫人は、大きな釜に瀝青ウラン鉱を入れて煮沸し、分別結晶法によりその成分を分離して、最後に微量の放射性物質を1000分の1ミリグラムまで計測するという作業を行いました。

キュリー夫人ははウラン鉱に含まれる元素を、一つひとつ、丹念に取り出して調べることで、純度100%のラジウムを取り出すことに成功しました。ラジウムを発見したことにより、彼女の天賦の才能が広く認められるようになり、二度のノーベル賞を受賞します。※放射性物質発見による物理学賞 (1903)とラジウムの分離による化学賞(1911)

キュリー夫人は2つの新元素(ポロニウムとラジウム)を発見し、「放射能」という新語を編み出し、今も世界に影響を与えています。

粗末な小屋で瀝青ウラン鉱からラジウムを取り出す実験は辛いもので、夏は窒息しそうなほどに暑く、冬は凍てつく寒さだったといいます。「有毒ガス」を吸ったり、ラジウムでの火傷にもめげず、彼女はラジウムの実験に情熱を傾けました。

いつもラジウムとともに過ごしたキュリー夫人は何の安全策も取っておらず、66歳の時に骨髄となかの造血細胞が損傷を受ける再生不良性貧血で亡くなります。キュリー夫人の娘、イレーヌもまた、ラジウムの研究でノーベル賞を受賞しましたが、58歳の時に同様に白血病で亡くなりました。自分の命を犠牲にしながら、彼女たちは自らのミッション達成のために実験を続けたのです。

情熱が人を幸せにする!

心理学者のミハイ・チクセントミハイは、集中した際のトランス状態を「フロー」と呼びます。作曲家であれ、画家であれ、作家、プログラマー、建築家、法律家、シェフ、いずれであれ、すべてのクリエイティブな人たちは、その足りないかけらを探しているとき、フロー状態を経験しています。フロー状態の時には、時間が飛ぶように流れ、メールや昼食を取ることも忘れてしまいます。

人は自分が情熱を感じているものを追いかけなければならない。そのほうが、他のたいていのことをするより幸せになれる。(イーロン・マスク)

自分の才能をフルに活用することに情熱を燃やす人もいれば、よい仕事をすることに情熱を燃やす人もいますが、そうした情熱が天才につながることは滅多にないと著者は指摘します。日常的な情熱から生じる結果はさまざまですが、そこからは大きなイノベーションは生まれません。凡人と天才では見ている世界が違うのです。

天才には情熱という共通点があります。天才は世間とは異なる目で世の中を見ており、それが解決されるまで、落ち着くことができないのです。他者が気づいていない世の中の課題を発見し、それを解決するために彼らは情熱を傾け、集中するのです。その情熱と集中がイノベーションにつながるのです。

彫刻家のヘンリー・ムーアは「人生の秘訣は、自分の人生すべてを捧げられる仕事、残りの人生の1分1秒すべてに、何もかも注ぎ込める仕事を持つことだ。そして一番大切なのは、それはたぶん自分にはできないようなことでなければならない」と述べています。

自分がフローになれる楽しいことを見つけ、それに情熱を傾けることができれば、人は幸せな時間を過ごせます。情熱を持てる仕事を見つけ、それに時間をかけることで、人は成長し、結果を出せるようになります。

私も毎朝、この書評ブログを書く際にフローな状態になり、幸せな気持ちになれます。ブログを継続したことで、自分を変えることができました。天才にはなれていませんが、豊かな時間を過ごせるようになりました。



 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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