リファラルマーケティング大全
株式会社クリエイティブホープ
フォレスト出版
本書の要約
リファラルマーケティングとは、 ある商品やサービスを利用したユーザーが親しい人に紹介することで、 その商品やサービスの価値が波及していくことを狙うマーケティング手法です。マーケティングにコストがかけられないベンチャーやB2Bの企業はリファラルマーケティングを活用すべきです。
リファラルマーケティングが注目される理由
ブランディングもリファラルマーケティングも徹底的に顧客目線に立つことが大切で、顧客目線に立てば、前面に押し出していいことと悪いことも区別が付くはずです。さらに面白いことには、徹底的に顧客目線に立っていると、こういう「裏メッセージ」もなぜか伝わるものなのです。
リファラル(referral)は「紹介」や「推薦」を意味する英語で、リファラルマーケティングとは、 ある商品やサービスを利用したユーザーが親しい人に紹介することで、 その商品やサービスの価値が波及していくことを狙うマーケティング手法です。
アメリカのUberやDropboxなどのベンチャーはリファラルマーケティングを活用することで、飛躍的な成長を遂げました。
リファラルマーケティングは他の施策に比べて、集客コストが低い一方で、サービス導入・検討までにかかる時間・コストが低く、サービスの継続率が高くなる傾向にあります。そのためサブスクリプションや継続購入が期待できる商品やサービスの場合はLTVが高くなります。LTVから逆算し、ROIを考えるとリファラルマーケティングが施策の選択肢の一つになるのです。
シリコンバレーのベンチャーキャピタル「500 Startups」の創業者デイブ・マクルーア氏はサービスの成長段階を表すAARRRモデルを提唱しています。
・Acquisition(獲得)
・Activation(活性化)
・Retention(継続)
・Referral(紹介)
・Revenue(収益)の頭文字を取ったものです。
AARRRのステップを踏むことで、サービスが成長していくという考え方で、リファラルを実践することで、収益を高めることができるのです。
スタートアップ投資の世界では「リファラビリティ」という指標が使われています。これはブランドがどれだけ紹介される力があるかを示す指標で、投資家たちが最も気にする指標の1つになっています。
リファラルマーケティングで成果を上げている企業は強いブランド力を持っているとみなされているということです。
TVCMなどのマス広告の費用対効果が疑問視されています。コンバージョンの取れるネット広告も価格が高騰し、効果のあるコミュニケーションの手法が限られてきています。また、SNSでの口コミもコストがアップしていますし、一部でスティルスマーケティングが横行するなど信頼性を失っています。
そんな中、信頼できる人や熱狂的なファンからの紹介が注目され始めています。マーケティングの予算の一部を組み換え、リファラルマーケティングに使うことで、期待以上の効果が上げられるとクリエイティブホープは指摘します。
リファラルマーケティングを成功させるために必要なこと
リファラルマーケティングを成功させるためには、ユーザーが親しい人に紹介したくなる「紹介体験」の設計が必要です。リファラルマーケティングの計画を立て、PDCAサイクルを回しながら絶えざる改善を続けていくことで、顧客を獲得できるようになります。
愛着度や品質の高さ、適正な価格といった顧客が説明しやすい差別化ポイントがある商品ほど、リファラルマーケティングがうまくいきます。
企業はリファラルマーケティングを行うことで、「既存顧客との対話のきっかけ」「顧客満足度や良いと思っている点の把握」「ゲストの興味の把握」の3つの効果を得られます。
現代の事業成長を考える上で、CRMという既存顧客との関係構築の仕組みを回すのと同時に、リファラルによる既存顧客の友人・知人グループを囲い込んでいくループを回すことが重要ではないかと私たちは考えます。CRMとリファラルこそが事業成長の両輪だということです。
・CRM→1人の既存顧客のサービス改善を図り、利用を増やすこと。1顧客の評価(満足度)とサービス価値が向上していきます。
・リファラル→顧客数を増やすための施策。
新規に獲得した顧客はCRMのループにより利用が増えていきます。CRMとリファラルの両輪で、顧客が増えながら、一人ひとりの利用が増えていき、利益を押し上げてくれます。
実はBtoBの経営者(エグゼクティブ)の73%は、知り合いから紹介された営業担当者と仕事をすることを好むというデータがあります(International Data Corporation(IDC)調べ2014年)。BtoB企業においても、リファラルマーケティングは効果があるのですから、顧客をファンにし、エバンジェリストになってもらったり、紹介プログラムを充実させることで、収益力がアップします。
リファラル施策の成功に向けては、顧客の「紹介体験」を構成する3つのポイントを充実させることが重要です。3つのポイントとは、全体のベースとなる「サービスの独自性」、その独自性が育む「顧客の愛着」、そして独自性と愛着を前提とした「紹介の演出」です。
顧客が感動するポイントは
①手頃な価格
②充実した機能
③利便性の高いサービス
④高い体験価値・時間価値
⑤顧客の成功(カスタマーサクセス)です。
顧客体験を高め、カスタマーサクセスを実現することで、リファラルマーケティングの成功確率を高めてくれます。
■ブランドがもたらす4つの価値
・実利価値
・情緒価値
・感性価値
・共鳴価値
これら4つの価値をわかりやすく伝えることが大切です。そしてその伝え方として、課題を抱えていた顧客がいかにして成功したか、その成功ステップを「ストーリー」として伝える方法が有効です。商品やサービスの価値を言語化し、顧客に価値をしっかりと伝えてもらうのです。そのためには、企業側から積極的に言語化し、メッセージをつくる必要があります。
商品やサービスを愛着という視点で言語化することで、他者への紹介が起こりやすくなります。ブランドに愛着をもってもらい、アクションしやすいプログラムを作り、心理的負担が減らすことで、顧客が積極的に応援してくれるようになります。
購入や契約がお付き合いの始まりという考えを持ち、その後も定期的に適切なタイミング(季節の変わり目とか顧客の誕生日とか)で顧客接点を用意し、それぞれの接点を大切にする。こうした誠意のあるコミュニケーションに努めることが、愛着を高めるための王道です。それを愚直に継続することで、いつしかブランドと顧客の距離が縮まり、紹介依頼にも応じてくれるようになるのです。
Uberはリファラルマーケティングによって、わずかな期間で大きな成長を果たしました。同社は紹介者と友人の双方に20ドル分を無料で乗車できるクレジットを提供しました。この施策によるユーザー獲得コストは、1ユーザー当たり40ドルとなりますが、Uberにおける1ユーザー・1カ月当たりの平均利用金額は95ドルです。つまり、ユーザー獲得コストを会員獲得後1カ月以内で回収できる、効果的なプログラムだったのです。
リファラルを通してUberというサービスが広まるほど、既存ユーザーにとっては20ドルのクレジットの価値が高まります。このため、自分の友人や家族など関係する人すべてに招待メールを送ろうというモチベーションが発生しました。その結果Uberは一気に成長できたのです。Airbnbも同じようにリファラルマーケティングで成功しています。このようにグロースハックではリファラルマーケティングが効果を発揮します。
マーケティングにコストがかけられないベンチャーやB2Bの企業はリファラルマーケティングを活用すべきです。その際、自社の商品やサービスを顧客視点でストーリーにし、リファラルプログラムを設計しましょう。本書のフレームワークを活用することで、リファラルマーケティングでの成功のヒントを得られます。
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