最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー(デヴィッド・S・エヴァンス, リチャード・シュマレンジー)の書評

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最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー
デヴィッド・S・エヴァンス, リチャード・シュマレンジー
朝日新聞出版

本書の要約

マルチサイドプラットフォームが軌道に乗るためには、クリティカルマスの確保が必須になります。相互にメリットを享受できる参加者を集めなければ、プラットフォームは機能しません。価値を生み出すためには、両サイドのグールプに参加する適切な人数を集め、「ニワトリと卵問題」を解決することが重要になります。

マルチサイドプラットフォームとは何か?

マルチサイドプラットフォームは、それぞれのサイドに、別のサイドの参加者とマッチすることで利益を得る、十分な数の参加者を確保しなければならない。その市場は「分厚く」なければならないのだ。(デヴィッド・S・エヴァンス, リチャード・シュマレンジー)

大学でビジネスフレームワークの授業をしていますが、今週の講義のテーマが「マルチサイドプラットフォーム」でした。マルチサイドプラットフォームは、「相互に依存する関係である2つ以上のグループをマッチングさせるプラットフォーム」です。プラットフォームの本質は、異なる属性のユーザーをマッチングさせることで、そのためには両サイドの属性のグループを集めることが重要になります。

多様なニーズをもった複数の顧客がプラットフォームに参加することで、Win-Winの関係を築けるようになります。お互いにメリットを教授することで、相互ネットワークが形成され、グループが集まることで、外部ネットワーク効果により、やがて巨大なプラットフォームが形成されるようになります。GAFAやアリババ、楽天などはマルチサイドプラットフォームの成功例になります。

ユーチューブには、動画を作成してアップロードする役割の人と動画を鑑賞する役割の両方のグループが存在します。動画を鑑賞するユーザーは、より多くの他のユーザーが動画をアップロードすることで利益を得て、動画をアップロードするユーザーは、それを鑑賞するユーザーの数から利益を得ています。

ユーチューブはネットワークを成功させるために、両方のタイプの人々を招き入れなければならなかったのです。初期においては、より多くの鑑賞ユーザーを得るために、魅力的な動画を作成してアップロードするタイプのユーザーが必要でした。

日本のユーチューブでも当初はコンテンツをアップする人を集めることに苦戦していました。当時のユーチューブはまだまだ胡散臭いもので、一部のインフルエンサーやコンテンツホルダーが動画をアップするだけでした。グーグルはコンテンツホルダーにユーチューブの魅力を伝え、制作をサポートしました。やがて、動画で稼げる人が増えていき、ユーチューブのコンテンツが充実することで、それに連れ視聴者も増加したのです。

ユーチューブは両サイドに対してサイトを無料とし、トラフィックを積み上げることに集中した。十分なトラフィックを達成すれば、広告枠を販売できることを創設者は知っていたからだ。そこにクリティカルマスのユーザー数がいるとわかれば、広告主は彼らにリーチしたくなり、ユーチューブはそこから収入と利益を得ることができる。そしてそれは、動画広告として軌道に乗るには多くの人が予想したよりは長い時間がかかったが、実際に起こったのだ。  

2006年10月、ユーチューブはグーグルに16億5000万ドルで買収されました。その時点で、ユーチューブは米国でもっとも閲覧時間の長いサイトにまで成長していたのです。しかし、当初このM&Aは高い買い物だと言われていました。しかし、その後ユーチューブがマルチサイドプラットフォームとして成功することで、グーグルの先見性が明らかになりました。

成功したければ、両サイドの参加者を集めよう!

ユーチューブは動画投稿数と動画再生数の増大に注力し、マーケティング活動を行いました。投稿が増えれば、再生も増えますし、再生を増やせば、投稿も増えるのです。どちらか1サイドだけに注力し、もう1サイドが自動的についてくると考えるのは、やめたほうがよさそうです。

視聴者に対して十分な数の動画がストックされ、また新たに投稿されるからこそ、視聴者はユーチューブを訪問します。十分な数の視聴者がいるからこそ、動画も投稿され、今では一生をかけても視聴できないほどの動画がユーチューブにアップロードされ、グーグルの広告ビジネスに貢献しています。最近ではユーチューブが検索エンジンとしても活用されるようになっています。

ユーチューブは「ジグザグ戦略」を採用した。それはクリティカルマスに向かって、両サイドの参加者を同時に増加させる戦略だが、一本調子の足並みではなく、より多くの投稿者がより多くの視聴者を呼び込むための複合的な戦略だ。ある時期は、一方の顧客群に、他の顧客群よりもフォーカスする。

VTRの規格競争に敗れたソニーは、ブルーレイではHD-DVD陣営に勝利します。そこには、マルチサイドプラットフォーム戦略の考え方があったのです。

HD-DVD陣営はスタンドアローン型プレイヤーの販売に重点を置き、ユーザー獲得数では勝利しました。1サイド的分析では、HD-DVD陣営が優位になります。しかし、実際には、ワーナーブラザーズがHD-DVD規格から撤退したことで。同陣営は敗北を認めます。

一方、ブルーレイ陣営は、ユーザーとコンテンツホルダーの両方を獲得することに成功します。ソニーの自社スタジオは当初からブルーレイにしかソフトを供給しませんでした。ソニーはワーナーブラザーズとフォックスサーチライトピクチャーズをブルーレイ陣営に囲い込みます。HD-DVDより優れたソニーのマルチサイド戦略によって、ブルーレイが勝利を手にしたのです。

マルチサイドプラットフォームが軌道に乗るためには、クリティカルマスの確保が必須になります。相互にメリットを享受できる参加者を集めなければ、プラットフォームは機能しません。価値を生み出すためには、両サイドのグールプに参加する適切な人数を集め、「ニワトリと卵問題」を解決することが重要になります。それが達成できなければ、ビジネスは失敗するのです。

両サイドの参加者の増加が達成できたなら、そのビジネスは間接ネットワーク効果によって、持続的に成長できるようになります。

マルチサイドプラットフォームには、協調問題に関して別の大きな課題もある。各サイドに顧客を「十分に」確保しなければならないのだ。十分な数の顧客がすべてのサイドに確保されなければ、そのサービスはみじめなものとなる。

あらゆるマルチサイドプラットフォームは、クリティカルマスを達成する戦略を持たなければなりません。2つ以上の相互にメリットを享受できるグループを集め、両サイドを大きくすることが重要です。マルチサイドプラットフォームを成長させることで、生存と富の可能性を高められます。

マルチサイドプラットフォームを選択すれば、すぐに成功できると考えるのは甘いです。相互にメリットを享受する両サイドのグループを集めることが成功の秘訣です。本書にはマルチサイドプラットフォームビジネスのプロセスや成功・失敗両方のケーススタディが丁寧に描かれています。これらのケーススタディから多くの学びを得られます。

久々に授業のために本書を再読しましたが、マルチサイドプラットフォームが最強のビジネスモデルであることを改めて学べました。


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