成功を創る思考:いったんやめることの意義。QUITTING やめる力 最良の人生戦略(ジュリア・ケラー)の書評

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QUITTING やめる力 最良の人生戦略
ジュリア・ケラー
日本経済新聞出版

本書の要約

結果を出すために重要なことは、選択肢が目的や状況に合っているかどうかを考慮することです。 “やめる”ことは、成功と失敗の単純な二者択一ではなく、より広い視野と柔軟性を持つ行動です。異なる状況に応じて異なるアプローチを選び、新たな可能性を模索する手段として活用することができます。

やめることを二者択一で考えないようにしよう!

私たちは『二者択一の思考』に苦しめられている。何かをやめたからって、それを続けてはいけないという意味ではないのに。(ライディ・クロッツ)

QUITTING やめる力 最良の人生戦略 (ジュリア・ケラー著)書評を続けます。ヴァージニア大学の工学、建築学、経済学の教授であるライディ・クロッツは、私たちが陥りがちな「二者択一の思考」について警鐘を鳴らしています。彼は、何かをやめることはその活動を完全に捨て去ることを意味するわけではないと指摘します。

クロッツは、「やめること」と「やめないこと」は相反するものではないと強調します。むしろ、それらは目的を達成するために異なるアプローチを取ることを示しています。時には引き算をすることで足し算を実現し、あるいは何かを継続するために一時的にやめることも必要です。

私たちは、しばしば自分自身を二者択一のジレンマに追い込んでしまいがちです。例えば、新しいプロジェクトに取り組むためには過去の仕事を断念する必要があるのではないか、と悩んだりすることがあります。しかし、クロッツは、このような選択肢が絶対的なものではなく、むしろより良い結果を生み出すための柔軟性を持っていることを強調しています。 「いったんやめること」は、私たちが物事をより良くするための手段なのです。過去の経験や既存の手法にこだわることすることなく、進歩や改善を図ることはできません。

私たちは何かをやめることで新たな視点やアイデアが浮かびやすくなり、より創造的な解決策を見つけられます。「いったんやめること」は、単なる投げ出しや放棄ではありません。それを一時的な中断や再評価の機会と捉えることで、成功の確率を高められます。

時には、いったん立ち止まって現状を客観的に見つめ直し、目標に向かうための最善の方法を再考する必要があります。 例えば、建築家として新しいプロジェクトに取り組む場合、以前の設計スタイルや手法に固執せず、一度リセットすることが重要です。これによって、新たなアイデアやテクニックを導入する余地が生まれ、より革新的で魅力的な建築物を生み出すことができるでしょう。

「やめること」がしばしば「オール・オア・ナッシング」として捉えられがちです。この考え方は、「やめることは失敗」という見解や、「一度やめたら戻れない」という思い込みに裏打ちされています。そのため、人々は「やめたら負け」と考えがちです。もしやめるなら、断固として、劇的にやめるべきだというのです。しかしながら、やめることは必ずしも「オール・オア・ナッシング」ではないのです。

二者択一の罠に陥るのではなく、他の方法も存在と考えるようにしましょう。慎重に計画し、じっくりと考えながらやめることもできるのです。それは繊細で柔軟な行為として実践することができます。 私たちは、「やめること」を真剣に検討する際に、一度やめたら後戻りできないという固定観念に囚われ、大げさなドラマチックなやめ方を求めることがあります。

やめることには多様なアプローチが存在し、それぞれの状況や目的に応じて、私たちは適切な方法を選ぶことができます。

慎重に考えながら、計画的にやめることも可能です。このアプローチでは、状況や目標を的確に評価し、適切なタイミングや方法でやめることができます。このような柔軟性を持ったアプローチによって、より良い結果や新たな可能性が開けるのです。

重要なのは、その選択が目的や状況に適合しているかどうかを考慮することです。 「やめること」は単なる成功と失敗の二者択一ではなく、より広い視野と柔軟性を持つ行為です。それは状況に応じて異なるスタイルを選び、新たな可能性を模索するための手段として活用できるのです。

いったんやめ、思考することの重要性

ジャーナリストの著者であるジュリア・ケラーは、チャールズ・ダーウィンのケースを使って、いったんやめることの素晴らしさを紹介しています。1858年、ダーウィンは49歳であり、知的能力の絶頂期に差し掛かっていました。彼は消化不良を起こしやすい体質でしたが、それ以外は健康そのものでした。若き日の長い航海を経て、彼は愛する家族とともに居心地の良い大きな家に住み、そこで思索を深めながらアイデアを練っていました。

彼はなぜ地球上にこんなにも多くの異なる種が這い、飛び、跳ね、走り回っているのかを解明しようとしていたのです。ダーウィンは有望な理論を思いついたという確信を持っていましたが、それは一瞬の「わかった!」「アハ体験」というようなひらめきではなく、興味深い結論に繋がる小さな発見を積み重ねていく過程でした。ただ、彼はまだその発表に至っていなかったのです。

しかし、ダーウインには「もうーつ」やるべきことが常にあり、先送りをすることが多かったのです。彼は自身を「無類の先送り主義者」と自嘲し、優柔不断であることを悪びれもしませんでした。

ある時、ダーウィンは別の誰かが同じようなアイデアを思いつき、それを論文にして発表しようとしていることを知りました。これは最悪の事態でした。彼の生涯をかけた研究が無駄になってしまうかもしれないのです。少なくとも、自身の発表がパラダイムを転換させるような革新的なアイデアとして評価される可能性は低くなってしまいます。

この時、ダーウィンには選択肢がありました。彼は腹を立てたり、嘆いたり、神を呪ったりすることもできました。また、研究を諦めずに続けることもできました。しかし、彼はある決断を下しました。なんと彼はあきらめることを選択したのです。

彼は既存のやり方をやめ、研究成果の発表を変えることにしたのです。彼は新たなアプローチで自身の研究を発表し、そして、この状況下で、自らの研究をどう発表すれば世間にアピールできるかをじっくりと考えました。彼は革新的なアイデアを持ちながらも、同じ方向に向かっている他の研究者との競争に敗れる可能性を認識していました。

そこで、ダーウィンは自身の研究成果を総合的な視点からまとめ上げることにしました。彼は進化の理論を詳細に説明し、多くの観察結果や実験結果を提示しながら、自身の考えを支持する根拠を提供しました。 そして、彼はその成果を一冊の本としてまとめることを決意しました。それがあの『種の起源』だったのです。この本は一大センセーションを巻き起こし、科学界や一般の読者から広く注目され、彼の名前を後世に残しました。

やめることは、イエスかノーか、生きるか死ぬか、今やるか一生やらないか、というような極端な形をとる必要はない。必ずしも、すべてを吹き飛ばしたり、すべてを片づけたり、すべてをなかったことにしなくてもいい。わずかだが重要な軌道修正をすることも、やめることになるのだこうした小さな変化は、すべてを一度にやめるのと同じくらい重要なものになり得る。これは何もないところからやり直すのではなく、すでに知っていることを活かしながら前に進む方法だ。(ジュリア・ケラー)

やめたいと思ったとき、すぐに行動に移す必要はありません。ためらいや熟考の期間を経て、新たな目標を追い求めてもいいでしょう。その目標は、以前の目標と似ているかもしれませんし、そうでないかもしれません。いったん立ち止まってよく考え、方向を変えればいいのです。

たとえば、現在の仕事に不満がある場合、すぐに辞職する必要はありません。まずは、なぜ不満なのか、何を改善したいのかをよく考えてみましょう。そして、その問題を解決するために、転職するのか、今の会社で改善を求めるのか、それとも別の道を探るのかを決めましょう。

やめたいと思ったとき、完全にやめるのではなく、一度立ち止まってよく考えることが大切です。そうすることで、より良い決断をすることができるでしょう。

挫折や試行錯誤は成功の原動力となり得るものです。私たちは過去の経験を活かしつつ、変化に適応し、前進することで未来を変えることができます。著者は、ダーウィンを含む複数の登場人物の物語を通じて、いったんやめ、思考することの重要性を教えてくれています。何かに迷ったり、やめたいと思ったりした時は、このアドバイスを思い出して、二者択一にとらわれないようにしましょう。



この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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