エブリシング・バブル 終わりと始まり――地政学とマネーの未来2024-2025(エミン・ユルマズ)の書評

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エブリシング・バブル 終わりと始まり――地政学とマネーの未来2024-2025
エミン・ユルマズ
プレジデント社

エブリシング・バブル 終わりと始まり(エミン・ユルマズ)の要約

米中のバブルが崩壊し、地政学リスクが高まることで、日本の価値が今後高まるとユルマズは指摘します。インフレが進む中で、日経平均株価が中長期的に30万円に到達する可能性があると大胆に予測しています。この予測は、日本の株式市場に新たな視点をもたらし、投資家や企業経営者に従来の常識を覆す再考を促しています。

今後起こる3つのリスクとは?

チャートを見ると、現在の株価水準は日本株にとってまったくバブルではなく、むしろまだまだ割安であることがわかる。今の日本株は、外国人投資家を中心に買われていて、実は日本の投資家の眠っている巨大な資金は、まだまだ日本株に向かっていない。(エミン・ユルマズ)

著名な経済アナリスト、エミン・ユルマズが現代経済の潮流に関する鋭い分析を発表し、注目を集めています。ユルマズは、今後の世界経済に大きな影響を与える3つの主要なパラダイムシフトを指摘しています。これらの洞察は、今後のビジネス環境と投資戦略を考える上で極めて重要な示唆を含んでいます。

ユルマズが最初に指摘するのは、「アメリカ・中国バブルの崩壊」です。長年にわたり世界経済を牽引してきたアメリカと中国の経済成長モデルが、限界に達しつつあるとユルマズ氏は主張します。アメリカの過剰な金融緩和政策と中国の不動産バブルが、持続不可能な経済成長を生み出してきました。これらのバブルが崩壊する過程で、世界経済は大きな調整局面を迎えることになるでしょう。この変化は、グローバル経済の構造を根本から変える可能性があり、企業や投資家は従来の戦略の見直しを迫られることになります。

次に注目すべきは、「AIバブルの終焉」です。人工知能(AI)技術への過度の期待と投資が、新たなバブルを形成していると指摘します。エヌビディアやアップル株の株価はバブル化し、やがてAIバブルが崩壊すると著者は予測します。これは単なる一時的な市場の調整ではなく、テクノロジー至上主義からの脱却を意味する可能性があります。

著者は、AI技術の重要性を否定するものではありませんが、その実用化と社会実装には想定以上の時間がかかる可能性があると言います。この見解は、投資家やビジネスリーダーに対して、テクノロジーの進歩と実際の経済的価値創造の間にあるギャップを冷静に見極める必要性を示唆しています。

3つ目のパラダイムシフトは、「地政学の時代の到来」です。グローバル化の後退と国家間の対立激化により、地政学的要因が経済に与える影響が増大すると予測しています。貿易摩擦、安全保障問題、資源争奪など、国家間の利害対立が経済活動を左右する重要な要素となるでしょう。

実際、地政学的な不確実性が増す中で、多くの海外企業が中国を避けた事業展開を模索し始めています。そしてその受け皿として、政治的安定性と高度な技術力を持つ日本が注目を集めているのです。この傾向は、単に大都市圏だけでなく、日本の地方にまで及んでいるという点が特に興味深いです。TSMCが熊本に進出したことで、熊本県は多大な恩恵を受けています。

海外企業による事業投資は、地元に新たな雇用を創出し、地域経済の活性化につながります。さらに、技術移転や国際的なビジネスプラクティスの導入により、日本企業の競争力向上にも寄与する可能性があります。 著者は、この傾向が半導体産業に限らず、幅広い分野に及んでいることを強調しています。

例えば、インバウンド関連の投資として、シンガポールの不動産投資ファンドが新潟県妙高高原のスキーリゾートに2000億円超の直接投資を行うという報道を取り上げています。これは、地方経済の再生と国際的な観光地としての日本の魅力向上に大きく貢献する可能性があります。

これらの大規模投資は、単に経済的利益をもたらすだけでなく、日本の国際的なプレゼンス向上にも寄与するでしょう。 ユルマズは、このような海外からの投資増加が、日本経済の構造的な問題、特に人口減少や高齢化による労働力不足の解決策となる可能性も示唆しています。海外企業の進出は、新たな雇用創出だけでなく、イノベーションの促進や生産性向上にもつながる可能性があるのです。

日経平均株価が今後30万円になる理由

お金が集まれば人も集まる。人が集まれば情報も集まる。海外から直接お金が流れて、地方経済まで活発化していくと、今日本が抱えるさまざまな問題の解決につながる。

日本は現在、世界でも類を見ない速度で人口減少が進んでいる国の一つです。一般的にこれは経済や社会保障制度に対する大きな課題として捉えられていますが、全自動化技術の進展を考慮すると、実はこの状況が日本に独自の強みをもたらす可能性があります。 全自動化時代の到来が現実味を帯びてきています。

人工知能(AI)やロボット工学の急速な発展により、製造業、農業、サービス業など、従来人間が担ってきた多くの仕事が機械によって代替される日も、そう遠くないでしょう。この文脈において、人口減少は意外にも日本にとって有利に働く可能性があるのです。

さらに、人口減少はエネルギー消費や環境への負荷を自然に軽減します。これは、持続可能な社会を目指す上で大きなアドバンテージとなります。 全自動化時代において、人間にしかできない創造的な仕事の重要性が増します。日本は、アートやデザイン、コンテンツ制作、イノベーションや研究開発、教育や人材育成など、クリエイティブな分野に注力することで、新たな価値を創出できる可能性があります。

日本の豊かな文化的背景を活かした独創的なアートやデザイン、アニメやゲームなど日本が強みを持つエンターテイメント産業のさらなる発展、AI、ロボット工学、バイオテクノロジーなどの最先端技術の研究開発、そして創造性や批判的思考力を育む教育システムの構築と、グローバルに活躍できる人材の育成など、様々な分野で日本の潜在力を発揮できるでしょう。

もちろん、人口減少に伴う課題も無視できません。年金制度の維持や地方の過疎化など、解決すべき問題は多々あります。しかし、全自動化技術の進展と相まって、これらの課題に対する新たなアプローチも可能になるでしょう。

また、日本には外国人を惹きつけるアニメコンテンツなどのソフトパワーがあり、他国をリードしています。これらの要素が日本への投資を促し、日本の株式市場にも好影響を与えると著者は予測しています。海外からの直接投資の増加は、日本企業の価値再評価につながり、株価上昇の原動力となる可能性があります。これは、日本の個人投資家にとっても、自国市場への投資機会の拡大を意味します。

そもそも今の日本は、いつ高インフレになってもおかしくない状況にある。確かに、2022年の半ばから物価が上がり始め、一時的に物価上昇率が4%に達したこともあったが、欧米に比べれば、まだまだその水準は低い。とはいえ、今のように超低金利政策、金融緩和政策を継続させれば、いつかとんでもないインフレになる恐れがある。

ユルマズは、現在の地政学的な緊張が、皮肉にも日本経済と株式市場にとって大きなチャンスになると主張しています。 著者の分析によると、今後のインフレ継続により日本人の投資マインドが変化し、株式投資への関心が高まると予測しています。これは国内からの資金流入を促進し、株式市場を支える重要な要因となるでしょう。

さらに、世界経済の構造的変化が日本株の魅力を増大させると指摘しています。特に注目すべきは、アメリカと中国の経済バブル崩壊の可能性です。この状況下で、日本経済の相対的な安定性と成長ポテンシャルが国際的に再評価されつつあります。

著者は、日本企業の技術力と革新性を高く評価しています。特に、米中対立の深刻化により、中国から日本への輸出シフトが起こる可能性を指摘しています。これにより、環境技術をはじめとする分野で日本発のイノベーションが加速し、日本株全体の上昇をけん引すると予想しています。

これらの要因が複合的に作用することで、ユルマズは日経平均株価が中長期的に30万円に到達する可能性があると大胆に予測しています。この予測は、日本の株式市場に新たな視点をもたらし、投資家や企業経営者に従来の常識を覆す再考を促しています。

ユルマズの分析の核心は、地政学リスクの高まりが必ずしもネガティブな結果だけをもたらすわけではないという点です。むしろ、この危機的状況の中にこそ、日本にとって大きなチャンスがあると主張しています。 著者のこの大胆な予測は、投資家や政策立案者に対して、危機の中にチャンスを見出す重要性を説いています。

地政学リスクの高まりという困難な状況下でこそ、日本の強みが際立ち、新たな成長の機会が生まれる可能性があるというユルマズ氏の見解は、日本経済の未来に新たな希望の光を投げかけています。

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