「科学的」に頭をよくする方法
エリザベス・R・リッカー
かんき出版
「科学的」に頭をよくする方法 (エリザベス・R・リッカー)の要約
エリザベス・R・リッカーが提唱する「ニューロハッキング」は、脳機能を様々な手法で向上させる取り組みです。記憶力や創造力などの能力向上だけでなく、自己理解や自己コントロールの改善も目指します。これにより、自分の脳を最適化し、より優れた自分になることができるのです。
ニューロハッキングで自分をアップデートしよう!
あなたの脳をアップグレードするときに主導権を握るのは、ニューロハッカーであるあなただ。(エリザベス・R・リッカー)
「脳のアップグレード」という概念は、私たちの可能性を最大限に引き出すためのアグレッシブなアプローチです。これは、日常生活で見られる平均的な自分ではなく、最高のパフォーマンスを発揮できる自分にいつでもアクセスできるようになることを意味します。
最高なバージョンの自分を生み出すことで、学習速度が速くなり、細部まで記憶力を高められます。多くの責任をこなしながらも重要な事柄を見落とすことがなく、コミュニケーションが的確で他者の感情を害することもありません。また、大胆で信頼性が高く、思いやりがあり、仕事の能力が非常に高いのが特徴です。
エリザベス・R・リッカーは、そんな最高なバージョンの自分にアップデートするための「ニューロハッキング」を提唱しています。リッカーは、MITで脳と認知科学の学士号、ハーバード大学で精神・脳・教育科学の大学院学位を取得し、両大学で神経科学と教育科学の研究を行った経歴を持つ専門家です。
ニューロハッキングとは、脳の機能に様々な手法で介入することで、記憶力、創造力、実行機能、情動制御などの能力を向上させることを目指します。このアプローチは、単に能力を向上させるだけでなく、自己理解を深め、自分自身をより完全にコントロールできるようになることを目指しています。言わば、自分の脳を最適化し、調整し、磨き上げることで、より優れたバージョンの自分になれるのです。
本書にはさまざまなニューロハッキングのメソッドが紹介されていますが、今日は運動の効果と創造性を高める方法について考えてみます。運動が私たちの認知機能に与える影響は、近年の研究でますます注目されています。その効果は単純ではなく、運動の種類や強度、タイミングによって大きく変わることがわかってきました。
まず、運動の強度と認知パフォーマンスの関係について見てみましょう。軽度から中度の運動を行った直後では、認知パフォーマンスが平均して約8パーセント向上することが明らかになっています。さらに興味深いのは、激しい運動からかなり激しい運動をした直後では、その向上率が12~16パーセントにまで跳ね上がるという点です。
しかし、全ての運動が即座に認知能力を高めるわけではありません。筋力トレーニングの直後は、一時的に認知能力が低下することが報告されています。ただし、筋トレと有酸素運動を組み合わせると、認知能力の向上が見られます。このことから、バランスの取れた運動プログラムの重要性が示唆されます。
運動の種類による効果の違いも見逃せません。即座に認知能力を高めたい場合、ランニングよりも自転車のほうが効果的だとされています。これは、自転車が全身運動でありながら、ランニングほど身体への負荷が大きくないことが理由かもしれません。 年齢も運動の効果に影響を与える重要な要因です。
運動が認知パフォーマンスに与える効果は年齢層によって異なることがわかっています。これは、脳の可塑性や身体の回復力が年齢とともに変化することと関連していると考えられます。
運動のタイミングも重要です。1日のうちどの時間帯に運動するかによって、認知機能への影響が大きく変わります。午前中の運動は認知パフォーマンスを平均して16パーセント近く高める効果があります。一方、午後の運動は約4パーセントの向上にとどまり、夜の運動はむしろ約8パーセントの低下をもたらすことがあります。
脳の4つの主要機能である実行機能、情動制御、記憶と学習、創造性のそれぞれに影響を与えることが確認されています。例えば、有酸素運動は記憶力や学習能力の向上に特に効果があるとされています。
さらに、運動には認知機能の向上以外にも多くの利点があります。気分の向上や睡眠の質の改善といった効果も報告されており、これらが間接的に認知機能の向上につながっている可能性も考えられます。 これらの知見は、私たちが日常生活の中で運動をどのように取り入れるべきかについて、貴重な示唆を与えてくれます。
例えば、重要な会議や試験の前に軽い有酸素運動を行うことで、パフォーマンスを向上させる可能性があります。また、長期的な認知機能の維持・向上のためには、定期的かつバランスの取れた運動習慣を身につけることが重要だと言えるでしょう。 ただし、これらの効果は平均的なものであり、個人差があることを忘れてはいけません。
スティーブ・ジョブズが散歩をしながら、会議を行なっていたことも意味があったと考えられます。
自分に合った運動の種類や強度、タイミングを見つけることが、最大の効果を得るためのカギとなります。また、急激な運動の開始や強度の増加は怪我のリスクを高める可能性があるため、自分のペースに合わせ、徐々に運動量を増やしていきましょう。
創造力を鍛える方法
創造性とは、新しくて役に立つアイデアや創造物を生み出す能力である質の高い創造性を身につけるには、まず量をこなすことに集中する。
創造性は、新しくて役に立つアイデアや創造物を生み出す能力として定義されます。この能力を高めるためには、まず量をこなすことに集中することが重要です。とにかくたくさんのアウトプットを生み出すことが、創造力を鍛える第一歩になります。
また、特定の分野、あるいは複数の分野におけるスキルや専門知識を持つことも、創造性を高める上で大きな助けとなります。これは、異なる分野間の意外なつながりを発見し、そこから新しい創造的な発想が生まれる可能性があるためです。
私自身、この効果を実感しています。この書評ブログを始めてから、さまざまな分野の本を読み、それぞれの知見や体験を組み合わせることで、アイデアづくりが苦ではなくなりました。 この経験は、多様な知識や経験の蓄積が創造性の向上につながることを示しています。
書評ブログという活動を通じて、ビジネス、科学、歴史、哲学など、幅広い分野の知識に触れることで、私の思考の引き出しが増えました。それぞれの本から得た知識や視点が、頭の中で予期せぬ形でつながり、新しいアイデアの源泉となっているのです。
また、定期的に書評を書くという行為自体が、アイデアを言語化し、整理する訓練になっていると感じています。 私の例は、日常的な活動を通じて創造性を高められることを示しています。特別な才能や環境がなくても、興味のある分野の知識を積極的に吸収し、それらを結びつける習慣を身につけることで、誰でも創造性を向上させる可能性があるのです。
感情と創造性の関係も興味深いテーマです。一般的に、ポジティブな気分は創造性を促進すると考えられてきました。しかし、最新の研究では、感情の方向性(ポジティブかネガティブか)よりも、感情の強度が創造性に大きな影響を与えることが示唆されています。つまり、強い感情体験が、それがポジティブであれネガティブであれ、創造的な思考を刺激する可能性があるのです。
本書の中で、私が特に興味深く感じたのは、光(ブルーライト)が脳の機能に与える影響についてです。夜中の車の運転実験では、ブルーライトがカフェインと同等の覚醒効果を持つことが明らかになりました。 ブルーライトは他の色の光と比較して、脳のパフォーマンス向上に大きな効果があることがわかっています。
具体的には、日中の眠気の減少や記憶力の向上において、白色光やアンバーライトよりも顕著な効果が見られます。 しかし、ブルーライトの使用には注意が必要です。双極性障害や目の病気を持つ人を除いて、ブルーライトの副作用は最小限だと考えられています。
ただし、カフェインと同様に、過度の覚醒につながる可能性があります。そのため、就寝直前のブルーライト(スマホ)の使用は避けるべきです。また、気分障害と診断された人や、目に何らかの症状がある人は、ブルーライトの使用前に医師に相談することが求められます。
ブルーライトの効果の持続時間については、まだ十分な研究が行われていません。しかし、少なくとも一つの研究によると、認知能力を向上させる効果は、光を浴びてから約40分間続くことが報告されています。
脳はこの宇宙でもっとも驚異的で、つねに変化を続ける現象だ。それに、脳についてはまだまだ学ぶことがたくさんある。あなたも、世界にーつしかない自分の脳のエキスパートになることで、この偉大な事業に参加することができるのだ。
本書は、科学的な見地から執筆されているため、効果が期待できます。リスクが比較的低いニューロハッキングの手法を紹介されているためすぐに行動に移せます。著者は単に頭を良くする方法を紹介するだけでなく、実際に効果があったかどうかを読者自身が分析するための方法も提供しています。
ニューロハッキングは、私たちの脳の潜在能力を最大限に引き出すための新しいアプローチです。科学的な根拠に基づいたこの方法は、私たちが日々の生活の中で最高のパフォーマンスを発揮し、より充実した人生を送るための道筋を示しています。
しかし、どのような自己改善の手法においても、個人差があることを忘れずに、慎重かつ継続的に取り組むことが重要です。自分にフィットしたニューロハッキングをこの本から見つけて、それを習慣化しましょう。
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