自分や他人に振り回されないための感情リテラシー事典 (大芝義信)の書評

a person standing on a beach with a light painting

自分や他人に振り回されないための感情リテラシー事典
大芝義信
フォレスト出版

自分や他人に振り回されないための感情リテラシー事典 (大芝義信)の要約

問題解決には「感情・思考・行動」の分析が重要です。感情リテラシー を高めることで、豊かな人間関係や健全なメンタルヘルスを維持できます。感情を抑え込まず活用し、感情マネジメント を身につければ、仕事や家庭での人間関係が向上。基礎から実践まで学ぶことで、感情を有効に活かし、より充実した人生を送れます。

感情リテラシーとは何か?

社会生活における問題のほとんどは人間関係によるものだといわれますが、感情リテラシーはそれらを予防、解決する大きな力になるのです。(大芝義信)

私たちは日々、感情に導かれながら生きています。喜びや希望、愛に満ちた瞬間がある一方で、怒りや悲しみ、不安に振り回されることも少なくありません。感情は幸福をもたらす一方で、時に混乱や苦悩の原因にもなります。しかし、感情の仕組みを理解し、それを適切にコントロールすることで、より充実した人生を送ることが可能になります。

グロースウェル代表取締役の大芝義信氏によれば、感情リテラシーとは、感情を理解し、適切にコントロールしながら人間関係や社会生活に活かす能力のことです。これは単に自分の感情を把握するだけでなく、感情の発生メカニズムや変化のプロセスを深く理解し、適切に対処することを指します。

具体的には、自己の感情を正しく認識しコントロールする力、他者の感情を察知し適切に対応する力、感情を適切に伝え人間関係を円滑にする力が求められます。感情リテラシーを高めることで、仕事や人間関係、ストレス管理の面で多くのメリットが得られます。

ビジネスにおいては、感情リテラシーの高いリーダーが部下の感情を理解し、適切なフィードバックを行うことでチームのモチベーション向上につながります。また、組織内のコミュニケーションが円滑になり、協働作業の効率が高まります。結果として、生産性が向上し、より創造的な組織文化が育まれるでしょう。

家庭では、家族の感情を理解し、共感的な対話を行うことで、信頼関係を深めることができます。特に子どもの感情発達をサポートすることで、健全な成長環境を提供できるようになります。家族間の対立が減り、お互いを尊重し合う関係が築けるでしょう。 自分の感情を適切にコントロールすることで、ストレスや不安に振り回されることが少なくなります。感情の波に翻弄されず、冷静な判断ができるようになれば、人生の満足度も向上します。

感情リテラシーは生まれつき備わっているものではなく、意識的に学び、実践することで高めることができます。感情に名前をつけることで、自分の状態を客観的に把握しやすくなります。今の感情がどこから生まれたのかを考え、トリガーとなる出来事を特定する習慣をつけることが重要です。 感情が湧いたとき、すぐに行動せず、一呼吸おいて冷静に考える時間を持つことで、衝動的な反応を抑えることができます。

他者の表情や言動から感情を読み取る練習をし、共感を示すことで、より良い人間関係を築くことができます。自分の気持ちを正確に伝えることで、誤解や対立を減らし、スムーズなコミュニケーションを実現できます。自分と相手の感情は異なることを理解し、無理に押し付けないよう心がけることも大切です。

感情リテラシーを向上させるために、いくつかの実践的なツールを活用すると効果的です。ザ・ムードメーターは、感情を「快-不快」と「エネルギーの高低」の2軸で分類し、4つの象限に分けた感情認識ツールです。

赤色の象限は「高エネルギーで不快な感情」(怒り・不安・恐怖)、青色の象限は「低エネルギーで不快な感情」(悲しみ・落胆・疲労感)を示します。緑色の象限は「低エネルギーで快適な感情」(リラックス・満足・平穏)、黄色の象限は「高エネルギーで快適な感情」(喜び・興奮・熱意)が分類されます。 このツールを活用すると、感情を視覚的に把握し、具体的な名前をつけることで、適切な対処法を選びやすくなります。

また、「プルチックの感情の輪」は、感情の関係性を示すモデルで、「喜び」「信頼」「恐れ」「驚き」「悲しみ」「嫌悪」「怒り」「期待」の8つの基本感情が含まれます。対極の感情が円の反対側に位置し、例えば「喜び」と「悲しみ」、「怒り」と「恐れ」が対比されます。隣接する感情が組み合わさることで「愛(喜び+信頼)」や「失望(悲しみ+驚き)」などの複合感情が生まれます。

ムードメーターとプルチックの感情の輪を併用することで、現在の感情を正確に把握し、その成り立ちを深く理解できます。これにより、感情リテラシーが向上し、セルフマネジメントやコミュニケーション能力の向上にもつながります。

私たちが「今」感じている感情を正確に把握することは、感情マネジメントの基本です。感情が高まる前に自分の内面を認識できれば、適切な対処が可能になります。 例えば、軽い不安を感じたときに「これは不安だ」と意識し、その原因を冷静に分析できれば、過度な恐怖に発展する前に対策を講じられます。

また、怒りを感じた際に「なぜ怒っているのか?」と自問し、原因を整理することで冷静な判断を取り戻しやすくなります。 感情コントロールを習慣化するには、日々の振り返りが有効です。日記やメモを活用し、感情の動きを記録することで、自分のパターンを把握できます。こうした積み重ねが、人間関係の向上や自己成長につながります。

感情が発生すると、脳の「大脳辺縁系」が反応し、「前頭前野」が理性を働かせようとしますが、理性が機能するまでには約6秒かかると言われています。この6秒間は感情が制御しづらく、不適切な言動につながることもあります。これを防ぐには「6秒待つ」と意識することが重要です。時間が経てば理性が働き、冷静な対応がしやすくなります。

また、他者の感情に寄り添うことも大切です。悲しんでいる人に「楽しいことをしよう」と提案すると逆効果になることがあります。感情を無理に変えようとせず、共感しながら話を聞くことで、相手は安心感を得られます。

感情マネジメントを意識することで、人間関係が円滑になり、ストレスの軽減にもつながります。日々の習慣として自分の感情に気づき、冷静に対応することを心がけましょう。

「好き・嫌い」で人を判断するのをやめ、その人の価値を認めよう!

「自分と他人とは、タイプも価値観も異なって当然」「いろいろなタイプや価値観を尊重しよう」と自分に言い聞かせます。「自分とは違うけれど、そんな人もいるよね」と考え、違いを面白がる、楽しむくらいの大らかな姿勢を心がけるとよいでしょう。

私たちは日々、多くの人と関わりながら生活しています。しかし、「この人とは価値観が合わない」「考え方が違いすぎる」と感じることはないでしょうか?人との違いを受け入れることは簡単ではありませんが、それを乗り越え、多様性を尊重することで、より良い人間関係を築くことができます。

まず大切なのは、自分と他人は違って当然と理解することです。生まれ育った環境や経験、価値観が異なれば、考え方や行動も変わります。「みんな自分と同じように考えるはず」という思い込みを捨てることが、多様性を受け入れる第一歩です。

例えば、職場ではさまざまなタイプの人がいます。論理的に考える人もいれば、直感で動く人もいます。計画を重視する人もいれば、その場の流れに身を任せる人もいます。どれが正解というわけではなく、それぞれの考え方にメリットがあります。 違いをネガティブに捉えるのではなく、新しい視点を得られる機会と考えてみましょう。

異なる価値観を持つ人と話すことで、自分の視野が広がり、新しいアイデアや発想に触れることで、成長のきっかけになります。異なる意見を受け入れることで、柔軟な思考が身につくこともあります。このように考えれば、他人との違いをストレスではなく学びとして楽しむことができます。

人間関係が上手くいく人の多くは、無意識のうちに「人を嫌わないスキル」を持っているといわれます。これは、相手の立場になって考え、多様性を認め、感情に振り回されず、冷静に対応するといった要素から成り立ちます。特に、職場やコミュニティでは「好き・嫌い」で人を判断するのではなく、その人がどのように貢献できるかを考えることが重要です。

人は、自分と異なる考えを持つ人に対して「理解できない」「合わない」と感じやすいものです。しかし、実はその「理解できない」という感覚こそが、成長のチャンスでもあります。例えば、自分とは正反対の意見を持つ人がいたとき、なぜこの人はそう考えるのだろう、この考え方のメリットは何だろうと、一歩引いて考えてみることで、新たな発見があるかもしれません。

心理的安全性とは、自分の意見を安心して言える、違いを尊重し合える環境のことです。心理的安全性が高い職場や人間関係では、お互いの意見を尊重できるため、建設的な議論ができ、コミュニケーションが円滑になり、ストレスが軽減されます。また、創造的なアイデアが生まれやすくなるといったメリットもあります。

まずは自分自身が人の意見を否定しない、違いを受け入れる姿勢を持つことで、周囲にも良い影響を与えることができます。 価値観の違いは、ときにストレスになりますが、それを乗り越えた先には豊かな人間関係と成長が待っています。

自分と他人は違って当然と理解し、違いを楽しむ姿勢を持ち、人を嫌わないスキルを身につけることで、多様性を受け入れやすくなります。「理解できない」を「面白い」に変え、心理的安全性のある環境を作ることで、より良い人間関係を築き、人生を豊かにしていきましょう。

人生はチャレンジの連続であり、新たな経験が積み重なっていきます。しかし、ときには《不安》が先立ち、消極的な気持ちになってしまうこともあるでしょう。特に、大きな決断や未知の環境に直面すると、過剰な《警戒》によって前に進むことをためらってしまうかもしれません。

しかし、その警戒心が強すぎると、せっかくの成長の機会を逃してしまう可能性があります。 そんなときに有効なのが「成功のイメージトレーニング」です。未来のポジティブなシナリオを具体的に思い描くことで、前向きな気持ちを引き出し、行動力を高めることができます。

たとえば、私はクライアントとのミーティングの際にうまくいくストーリーをシミュレーションし、その場の情景をイメージします。クライアントの笑顔や褒められた自分を繰り返し思い描くことで、成功のリハーサル(予行演習)ができ、自然と楽観的な気持ちが生まれます。

この「成功のイメージトレーニング」は、スポーツ選手や経営者など、成功を収めた多くの人が取り入れているメンタルトレーニングの一つです。脳は現実と想像を区別しにくいため、ポジティブなイメージを繰り返すことで、実際のパフォーマンス向上にもつながります。

また、成功のシナリオを思い描くことで、《意欲》や《勇気》が生まれ、希望や可能性を信じる力が強まります。不安にとらわれず、自分の未来を前向きに切り開くために、ぜひこの方法を活用してみてください。

楽観と悲観のバランスをとろう!

《楽観》的な気持ちを意識的に生み出すひらスキルは、人生を切り拓く頼もしい武器になります。楽観性を発揮できる人は、成功することを前提に行動します。そのため大きな目標に挑戦することができ、困難に遭遇したときにも迷うことなく 乗り越えるための行動をとります。

「きっと大丈夫」「なんとかなる」「うまくいくに違いない」。このような楽観的な気持ちを意識的に生み出すスキルは、人生を切り拓く頼もしい武器になります。楽観性を持つ人は、成功を前提に行動するため、大きな目標に挑戦しやすく、困難に直面しても迷わず乗り越えるための行動を取ります。

楽観主義者は日常生活においても、新しいチャレンジに前向きな姿勢で取り組むため、成長のスピードが速く、結果として多くの成果を手にすることができます。

一方で、楽観することが難しく、悲観的な傾向が強い人は、挑戦の機会や困難に直面した際に「できない理由」や「やらない理由」を作り出し、それを言い訳にして行動を避ける傾向があります。

実は、楽観と悲観はどちらも有益な感情であり、そのバランスと使い方が重要です。たとえば、楽観にもデメリットがあります。慎重さが求められる場面で過度に楽観的になってしまうと、失敗を招きやすくなります。ノーベル経済学賞を受賞した認知心理学者ダニエル・カーネマン博士は、「楽観性バイアスは計画錯誤につながる恐れがある」と指摘しています。

計画錯誤とは、必要な時間や労力、費用を過小評価し、容易にやり遂げられると考えてしまう傾向のことです。これにより、準備不足のまま行動し、結果的に失敗を招く可能性があります。 また、悲観が役立つ場面も多々あります。悲観は「望ましくない未来を予測し、自分が手に入れられそうにないことを悲しむ気持ち」です。

「こうなったら困る」「あのような事態になったら嫌だ」という思いは、計画を立てる際にリスクを洗い出す上で非常に有効です。

楽観と悲観の適切な使い方として、楽観は「革新的な発想をするとき」「意欲を高めるとき」「新しい挑戦を始めるとき」「障害に対処する場面」で活かすとよいでしょう。一方、悲観は「未来のリスクを洗い出すとき」「緻密なリスク対策を実行するとき」に役立ちます。

なお、世界三大心理療法士のひとりとされるアルバート・エリス博士によると、楽観思考65%、悲観思考35%のバランスが最も快適で、最高のパフォーマンスを発揮できるとされています。

人生を切り拓く力《攻撃性》は、必要な場面で自らつくる。

攻撃性が求められる場面で奮起できないのは、「本気」や「真剣」になれないことが原因です。その背景には、試練を乗り越えなかったときに何を失い、乗り越えたときに何を得られるのかを明確に意識していないことがあります。 攻撃性には《怒り》の感情が含まれています。

この怒りは、自分の誇りや立場、夢、理想、正義、時間、人間関係、成果など、大切なものが脅かされたときに生じるものです。多くの人は怒りを否定的な感情として捉えがちですが、適切に活用すれば、それは大きな原動力になります。 挑戦の場で力を発揮するには、自分にとって本当に守るべきものを明確にすることが重要です。

試練を前にしたとき、「失いたくないものは何か」「成功すれば何を得られるのか」を意識することで、攻撃性は建設的なエネルギーへと変わります。この意識の変化が、真の「本気」を生み出し、困難を乗り越える力となるのです。

また、後悔の多い人は、失敗を恐れず、ポジティブに行動を起こすことが大切です。そのためには、「予期的後悔」の視点を取り入れましょう。多くの人は目先のことに意識が向きがちですが、「3年後、10年後にこの決断を振り返ったとき、後悔しないか」と考えることで、より良い選択ができます。こうした視点を持つことで、挑戦への意欲が高まり、迷いや先延ばしを防ぐことにつながるのです。

問題を「感情」「思考」「行動」の3つに分解して再度評価してみることが基本です。すると自分の行動を最適化した璽り、他者への助言の仕方がわかるなど、解決への道が見えてきます。

問題に直面したときは、「感情」「思考」「行動」の3つの要素に分けて分析することが重要です。この方法を使えば、自分の行動をより効果的に最適化できるだけでなく、他者への適切な助言方法も見えてきます。結果として、問題解決の道筋が明確になります。

感情リテラシー を高めることは、単なる感情を抑えるテクニックではありません。それは、豊かな人間関係の構築、充実した社会生活の実現、健全なメンタルヘルスの維持 につながる重要なスキルです。感情を抑え込むのではなく、貴重な情報源として活用することで、人生の質を向上させることができます。

自分の感情を正しく理解し、適切に対応することで、感情を「羅針盤」として活かしながら、より充実した人生を歩むことが可能になります。感情マネジメント のスキルを身につければ、仕事・家庭・社会のあらゆる場面で円滑な人間関係を築くことができます。

また、感情リテラシーの基礎から実践的な手法 までを体系的に学ぶことで、日常生活の中で感情を上手に活用し、より豊かな人生を送る力が身につきます。

最強Appleフレームワーク


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
組織コミュニケーション文化リーダーパーパス習慣化書評生産性向上ブログアイデアクリエイティビティライフハック人脈感謝
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました