心理的安全性のつくりかた
石井遼介
日本能率協会マネジメントセンター
心理的安全性のつくりかた(石井遼介)の要約
組織やチームにおける心理的安全性を高めるためには、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦への開放性」「新しいアイデアへの受容性」の4つの重要な要素に注目し、それらを促進する環境を整備することが重要です。リーダーが4つの要素を意識し、チームを運営すれば、より高いパフォーマンスと創造性を発揮することができます。
心理的安全性とは何か?
心理的安全なチームとは、一言でいうと「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと」です。(石井遼介)
この本は、組織やチームにおいて重要視されている「心理的安全性」について詳しく解説しています。心理的安全性とは、メンバーが自由に意見を出し合い、失敗やミスを恐れずにチャレンジできる環境を指します。
著者である石井遼介氏は、心理的安全性の重要性を研究し、実践者として企業に対してコンサルティングを行ってきました。その経験と知識をもとに、本書では心理的安全性を高める方法やアプローチについて詳細に解説しています。
心理的安全性の高いチームと低いチームとを比べると、心理的安全性の高いチームのほうが中長期でより高いパフォーマンスを出していることが明らかになっています。その原因を探ると、心理的安全性の高いチームの方が、よりチーム内での学習が促進されていたのです。それが結果的にパフォーマンスのアップにつながっています。 つまり、チームの心理的安全性はチーム内の学習を促進することで、パフォーマンスという成果を生み出すのです。
エイミー・C・エドモンドソン教授によれば、チーム内の心理的安全性は、メンバーが自由に意見を述べたり、質問や助けを求めたりできる環境を指します。彼女は、対人関係で感じるリスクを「無知」「無能」「邪魔」「否定的」の4つに分けて説明しています。
これらのリスクにより、人々は自分の不確かさや間違いを隠し、他人に頼ることや反対意見を表明することを避けがちです。これはチームの学習や成果に悪影響を及ぼす可能性があります。 心理的安全性の高いチームでは、メンバーはこれらのリスクを恐れずに自己表現ができ、新しいアイデアや挑戦を歓迎し、共同で成長と学習を促進します。
そのためには、リーダーシップやコミュニケーションのスキルを発展させ、メンバー間で信頼関係を築くことが重要です。 エドモンドソン教授の心理的安全性の概念は、チームが直面する障壁を乗り越え、より良い成果を出すための基盤を提供します。リーダーとメンバーがこの概念を理解し、実践することで、チームはより効果的に機能し、成功を収めやすくなります。
エドモンドソン教授の提唱する「心理的安全性」は、日本においても注目されています。しかし、その目標は「無知・無能・邪魔・ネガティブ」といった罰や不安がない状態を目指すのではなく、「話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎」という4つの因子が存在する状態を目指すことも意図されています。
まず、話しやすさの因子は、メンバーが自由に意見や質問を発言できる環境を作ることを指します。チーム内で意見を述べることができることは、思考の多様性を促し、新たなアイデアや解決策の発見につながります。また、他のメンバーが自分の発言を尊重し、受け入れることも重要です。
次に、助け合いの因子は、メンバー同士がお互いに支え合い、協力して目標に向かって進むことを指します。チームメンバーが信頼関係を築き、お互いに助け合うことで、個々の能力を最大限に引き出すことができます。また、失敗や困難に直面した際にも、助け合いの文化があれば、メンバーはより積極的に挑戦することができます。
挑戦の因子は、メンバーが新たなアイデアや方法に積極的に取り組むことを指します。チーム内での挑戦は、成長や学びの機会を提供し、組織やチームの進化を促します。メンバーが自信を持って意見を出し、新たなアイデアを出すことができる環境が整っていることが重要です。
最後に、新奇歓迎の因子は、新しいアイデアや変化を歓迎する文化を指します。変化や新しい試みに対してオープンな姿勢を持つことは、チームの柔軟性や創造性を高めます。失敗を恐れず、新たなチャレンジを受け入れることで、チーム全体の成果を向上させることができます。
日本版「チームの心理的安全性」は、これら4つの因子を意識しながら、組織やチームの環境を整えることが重要です。メンバーが自由に発言し、助け合い、挑戦し、新奇なアイデアを受け入れることができる環境が整えられれば、チームのパフォーマンスや創造性が向上し、組織全体の成長につながるでしょう。
心理的安全性とイノベーションの関連性とは?
「心理的安全性にとって、望ましい4カテゴリの行動を増やし、望ましくない行動を減らす」ことが、管理職・リーダーや、組織・チームに心理的安全性を構築しようとリーダーシップを発揮する人の仕事だということになります。 また心理的安全性とは、組織・チームの「関係性・カルチャー」(または風土・文化など)だという言い方もできるでしょう。
心理的安全性の4つの因子「①話しやすさ、②助け合い、 ③挑戦、④新奇歓迎」はそれぞれ「行動」の集積です。これらの行動がチームの中で多く見られるとき、そのチームは心理的に安全です。心理的安全性とは、メンバーが自由に意見を出し合い、質問をすることができる状態なのです。
一方で、「厳しい」マネジャーがプレッシャーをかけることでパフォーマンスが高まると考えるのは間違っています。実際には、プレッシャーによって高まるのはストレスであり、パフォーマンスではありません。
研究によれば、高度のストレスは雇用者と従業員の双方にさまざまな損失をもたらします。 そのため、心理的安全性を確保するためには、「やらなかったら罰を与える」制度をやめ、「やったら褒める」制度へ変えるべきです。望ましくないことを禁止するのではなく、望ましい行動を促す環境を設計することが重要です。
また、ルールや制度の意図が明確に伝わるようにすることも大切です。 心理的安全性を高めるためには、メンバーが自由に意見を出し合える環境を作り出す必要があります。相互の信頼関係を築き、意見やアイデアを積極的に受け入れる文化を育てることが重要です。
心理的安全性とイノベーションは密接に関連しています。イノベーションを促進する組織は、メンバーが自由に意見やアイデアを発言できる心理的安全性を持っています。心理的安全性とは、個人が尊重され、恐れや不安を感じることなく意見を述べることができる環境のことです。このような環境が整っていると、メンバーは自信を持って自分の考えやアイデアを発信することができます。
心理的安全性の高い組織では、メンバーが積極的に意見を出し合い、ディスカッションを行うことができます。異なる視点やアイデアが交わされることで、新しい発見や創造的な解決策が生まれます。また、心理的安全性があるため、失敗や間違いを恐れずに挑戦することができます。イノベーションは、新たな試みや冒険を伴うものであり、失敗を恐れずに挑戦することが重要です。
さらに、心理的安全性はイノベーションの推進力にもなります。メンバーが自由にアイデアを出し合い、意見を交換することで、新たな発見や革新的なアイデアが生まれます。また、心理的安全性の高い組織では、失敗を受け入れる文化が根付いています。失敗を恐れずに挑戦することで、新たなアイデアやアプローチを試すことができます。
したがって、組織がイノベーションを促進するためには、心理的安全性を重視する必要があります。心理的安全性を高めるためには、リーダーシップの役割が重要です。リーダーはメンバーの意見を尊重し、オープンなコミュニケーションを促進することが求められます。また、フィードバックの文化を醸成し、メンバーが自由に意見を述べることができる環境を作り出すことも重要です。
不安や罰、権威に頼る古い手法から脱却し、好意、目標の共有、そして価値ある行動に焦点を当てることで、組織は継続的な学習と成長の文化を築き上げることができます。この新しいアプローチは、チームメンバー全員のモチベーションを高め、共に目標に向かって協力する環境を生み出します。
個々人の貢献と価値を認め、尊重することで、より肯定的で成長を促す職場文化を構築し、組織全体が一丸となって進化していくことが可能になります。このような環境では、学びと成長が自然なプロセスとなり、組織は持続的な成功への道を歩むことができます。
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