表現者は続けた人がなるものです。(内沼晋太郎)
本の逆襲というタイトルに惹かれて、本書を衝動買いしたのですが
これが当たりで、著者の内沼晋太郎氏に刺激を受けながら、読了しました。
内沼氏は 下北沢で「B&B」という「メディアとしての書店」を
経営するブックコーディーネターです。
私は、残念ながら、まだ、B&Bには行ったことはありませんが
店舗の存在は、周りの著者のイベントやネットの情報で知っていました。
偶然、手にした一冊でしたが、「本」からB&Bへのご縁をいただけました。
今回、本の逆襲と周りの評判を思い出すことで
B&Bと内沼晋太郎氏にとても親近感を覚えたので
近々、下北の店舗に行きたいと思います。
では、B&Bという街の本屋はどんなコンセプトで、運営されているのでしょうか?
以下サイトから引用します。
本には「知」や「エンターテインメント」、大袈裟にいえば「人生のすべて」があります。それは素晴らしい「無駄」に満ちあふれています。そんな本との「偶然の出会い」を街ゆく人の日常の中に生み出すべく手を尽くすこと。それが「街の本屋」の役割だと、私たちは考えています。本はインターネットもスマホもSNSもイベントも、すべてのコンテンツとコミュニケーションを飲み込んで、その形を拡張していく。
出版不況とKindleブームで、街の書店は毎年減少しています。
つい最近も、外苑前のLIBROが閉店するなど
良い本に出会える場所がなくなっていくのは、寂しい限りです。
B&Bは本には人生のすべてがあると言い切っています。
そんな本との偶然の出会いを、B&Bは広げようとしているのです。
そして、「本屋」は場所ではなくコンテンツを発信する人(媒介者)と定義しています。
(本は形を拡張していくので、本屋も拡張していくのです。)
空間としての書店は減少しても、「本屋(媒介者)」は
今後も増えると内沼氏は予測しています。
媒介者が増えれば、本とのワクワクな出会いが増えていきそうです。
「飲食業界の未来」と「食の未来」、「アパレル業界の未来」と「ファッションの未来」とが別であるように、 「出版業界の未来」と「本の未来」とは、別のものだと考えるようになりました。「出版業界の未来」ははっきり言って暗いけれども、生き残る方法はたくさんあるし、「本の未来」に至ってはむしろ明るく、可能性の海が広がっているとぼくは考えています。いま、本は出版業界の外側に広く拡張していて、その周辺まで含めて様々なことが起こっています。
著者の内沼氏は、出版業界の未来と本の未来は別物だと言います。
私ももこの意見に賛成で、本はいろいろなコンテンツを飲み込んでいけば
まだまだ、成長できる可能性を秘めています。
そして、リアルの本屋であれば、イベントなどの共感軸で人を集めることができます。
著者やコンテンツホルダー、読書好きなどが書店に集まれば
その仲間が次々と引き寄せられてきます。
ここに多様性が生まれ、本屋がクリエイティビティなスペースになるのです。
例えば、内沼氏は、文庫葉書や書き込みができる書店などの斬新なアイデアによって
本と人との新たな出会いをデザインしてきました。
また、本は紙や電子書籍に固定されるわけではないと内沼氏は言います。
本書の中で「これからの本を考えるための10の切り口」が紹介されています。
■本の定義を拡張して考える
■読者の都合を優先して考える
■本をハードウェアとソフトウェアとに分けて考える
■本の最適なインターフェイスについて考える
■本の単位について考える
■本とインターネットとの接続について考える
■本の国境について考える
■プロダクトとしての本とデータとしての本を分けて考える
■本のある空間について考える
■本の公共性について考える
特に、本の定義を拡張するという考え方には共感します。
私もソーシャルメディアとブログで発信したコンテンツを
編集してもらうことで、今までに何冊もの本を出版してきました。
ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術や
ソーシャルメディアを武器にするための10カ条も
始まりは、このブログ記事からなのです。
今も、ある書籍化のための試みをこのブログで行うなど
私にとっては、このブログが出版や雑誌連載への入り口になっています。
本を書くのではなく、ブログを書きながら
読者や編集者の声をフィードバックしてもらい
記事をアップしていくスタイルが、私には合っているようです。
本を書くという感じではなく、記事を書くことの積み重ねによって
私は本当に自分のやりたいことが、できるようになってきました。
本書では、ケヴィン・ケリーのインタビューが引用されていますが
Social Ojisan Styleという電子書籍のチャレンジが、正にこれなのです。
ウェブ上の人々の注意持続時間は数分だが、一方で本を1冊読み終えるとしたら10時間以上の時間が必要になる。しかし、これまでたとえば映画を1本観る時間相当で読みきれる本はあまりなかった。雑誌の記事より長くて、本より短いもの、そこにビジネスの機会がある。(ケヴィン・ケリー) )
WEB上やソーシャルメディアのコンテンツを
「本」にしていく時代の当事者の一人として
内沼氏のアクティブな動きに興味を持ちました。
冒頭の「表現者は続けた人がなるものです。」という彼の言葉を
信じることができた人が、これからの時代の本の担い手になることでしょう!
本好き、本屋好きの方にはオススメの一冊です。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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