水無田気流氏の「居場所」のない男、「時間」がない女の書評

習慣化

この国には、巨大な時空の歪みが存在している。SFの話ではない。今、この瞬間も進行中の事実である。それは、サラリーマンの夫と妻のあいだに横たわる、暗くて深い「時空の溝」に由来する。この国で、多くの夫と妻はたとえ「生涯」を共にしても、「生活」を共にしてはいないのである。いわゆる、夫が稼ぎ、妻が家事育児を引き受ける……という性別分業は、夫婦の生活時間と空間を分離してきた。(水無田気流)

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夫婦の生活時間と空間の分離が悲劇を生む?

水無田気流氏の「居場所」のない男、「時間」がない女を読了しました!ドキッとするタイトルを書店で見つけて、衝動買いしましたが、著者の現代の日本社会の切り取り方が斬新で、一気に本書を読み終えました。この日本は男性と女性の社会に分断され、ここから大きな危機が生まれているのです。

多くのビジネスマンは空間の課題を抱えています。彼らには居場所がないという問題があるのです。働き盛りの男性はファミリー仕様である郊外住宅地から排除されています。郊外の住宅地は、「家庭を守る主婦(女性)と子ども」のための場所とされているので、ビジネスマンにとって居心地の悪い空間になっています。一方、都市部は「働く被雇用者(男性)」仕様の時空間とされているので、彼らは働くことに集中し、残業をやめずにそこにいることを選択してしまうのです。この結果、男性は居場所を無くし、女性は時間を失うのです。

自宅に帰るのがなんとなく悼られる「帰宅恐怖症」や、退職後、奥様にべったりして嫌がられる「濡れ落ち葉族」といった流行語が、男性たちの居場所のなさを明らかにしています。著者は男性の孤立問題を、地域社会や家族など私的な人間関係に乏しいことが特徴であると考え、「関係貧困」と呼んでいます。家庭にいないことを選んだ男たちは、家庭の中で居場所をなくし、定年後は虐げられ、居場所をますます無くしてしまうのです。

それえは、住宅街の女性たちはどうでしょうか?住宅街の主婦たちは、自宅近辺でのんびり生活しているかというと、そんなことはありません。彼女たちの働き方もある意味異様で、労働時間は男性よりもはるかに長く、「暇な主婦」というイメージは幻想でしかないのです。

実は日本の既婚女性は家事・育児も含めた総労働時間が男性よりも長く、睡眠時間は短いのです。とにかく日本の女性には「時間がない」のだ。既婚の子持ち女性には時間がなく、それが分かっているから未婚女性もDlNKsの女性も、結婚や出産に踏み切れずにいる。さらに、根本的に出産のタイムリミットが迫られることから、結婚・出産・育児のタイミングとキャリアの両立を考えねばならず、「人生の自由時間」そのものが乏しい。

著者は主婦たちの問題は時間にあり、それを「時間貧困」とネーミングしています。一人で子育てや家事を行うために、自分の時間を犠牲にしています。時間貧困と関係貧困が男女の間の隔たりを大きくし、未婚、離婚少子化問題、孤独死などを引き起こしているのです。

男女や家庭環境を問わず、多様な条件をもつ人たちが協業可能であれば、この2つの問題を解決できますが、日本企業は男性中心の均質性の高い組織をつくることで、成長してきました。そのため介護などの問題を抱えた男性はたちまち居場所を失ってしまいます。女性に比べ、男性は大きな問題を抱えたとき、同性の友人相手にはなかなか弱音を吐けずにいます。男性は心を癒やしてもらえる相手は妻しかいないために、未婚や離婚が当たり前になった現代では、トラブルを抱えた男性は孤独を感じやすくなるのです。

そればかりか孤独が、うつや早死にを引き越すことがわかっています。配偶者に離別されたり、先立たれたりした場合の男性の寿命は短くなり、孤独死リスクがはねあがっています。未婚男性や離婚、死別など「女のいない男たち」は、幸せな家庭を築いた男性や同性に頼れる女性よりも死亡リスクが高くなります。今後、孤独な男性が未婚によって増えることを考えると、男性の孤独(関係貧困)という問題が日本の未来を暗くしてしまうのです。

 

男性の居場所を取り戻すために何が必要か?

男女平等度が高く、女性の社会参加が進んだ国は男性の家計責任が相対的に低く、「妻子を食べさせる」重圧も相対的に軽くなることが予期される。また、妻の稼得能力が高い場合、男性は意に沿わない異動や転勤などの命令が下った時、場合によっては拒絶することも選択肢に入りやすくなる。結果、相対的に男性の心身の健康状態は比較的良好に保たれやすくなる。他方、女性の社会進出が進まず、男性が片働きで、専業主婦の妻と子どもを養わねばならない国では、男性は勤め先の不当な命令にも従い、会社にしがみついて働かねばならない可能性は高くなり、日常的な長時間労働も辞さない働き方を余儀なくされがちになる。ストレスを紛らわせるためや、男性同士のつながりが優先される社会の中で、つきあいの必要上飲酒喫煙の機会は増え、仕事中心の生活のせいで、たとえ体調不良でも適切な時期に病院に通う機会は減り、結果、男性の心身の健康は損なわれがちになる……。

男女や家庭環境を問わず、多様な条件をもつ人たちが協業可能であれば、この2つの問題を解決できますが、日本企業は男性中心の均質性の高い組織をつくることで、成長してきました。そのため介護などの問題を抱えた男性はたちまち居場所を失ってしまいます。そればかりかその働き方が、男性の心と体の健康を蝕んでいるのです。

また、男性のプライドが孤独を加速させています。女性に比べ、男性は大きな問題を抱えたとき、同性の友人や仕事仲間にはなかなか弱音を吐けずにいます。男性は心を癒やしてもらえる相手は妻しかいないために、未婚や離婚が当たり前になった現代では、トラブルを抱えた男性は孤独になりやすいのです。

配偶者に離別されたり、先立たれたりした場合の男性の寿命は短くなり、孤独死リスクがはねあがっています。未婚男性や離婚、死別など「女のいない男たち」は、幸せな家庭を築いた男性や同性に頼れる女性よりも死亡リスクが高くなります。今後、孤独な男性が未婚によって増えることを考えると、男性の孤独(関係貧困)という問題が日本の未来を暗くしてしまうのです。

日本人の幸福度が低いのはここに問題がある可能性が高く、特に男性の幸福度を下げています。男性の幸福度は女性よりも低く、孤独死も自殺者数も女性の倍担っています。日本のミドル世代以降の男性は、仕事以外の人間関係が極度に乏しいために、孤立しがちで、多くのトラブルを抱えているのです。

それでは、男性の関係貧困と女性の時間貧困を解決するために何が必要なのでしょうか? まずは、今ここにある危機を正視しする必要があると著者は指摘します。日本人は長年、晩婚や少子化問題を避けることで、危機を解決できないほど巨大にしてしまったのです。この問題を解決するための第一歩は、性別に大きく偏った時空間の歪みを修正することです。

男性中心のビジネス社会に多様性を取り入れ、ワークとライフをバランスさせた当たり前の生活を送れるようにすべきです。そのために、総合的な雇用環境と社会保障の改善、家庭生活のあり方を見直さなければなりません。家事・育児と就労の両立を男女の分け隔てをなくして、誰もが頼りあえる社会をつくる必要があります。男性も女性も会社人間でありつつ家庭責任をまっとうし、人としての幸福を追い求めるようにすれば、世の中は街がなく今よりよくなります。

「居場所のない男」。この観点は、現状の男性の社会的地位や経済的優位性が、決して当の男性にとって幸福なものではないことを示している。だから、女性の社会進出と男性の家庭・地域社会進出をぜひとも推進することから始めてほしい。女性を企業のメンバーに加えると同時に、男性を地域社会のメンバーに加えることが必要である。

男女お互いの課題を解決するために、今の働き方の常識を疑い、それぞれの領域に参加することから始める必要があると著者は述べています。そのために、男性の就労モデルを疑い、問題を検証することが改革の第一歩になります。男が都心で必死に働き、稼げば良いという常識をなくし、家族との時間を楽しむことがポイントかもしれません。

旧来の「標準世帯のライフスタイル」を前提とした社会制度を見直し、全方位的な一雇用環境の改善を早急に行う必要があるのです。政治家や経営者はまずはこの本を読み、日本の問題点を把握してもらいたいと思います。データも豊富で内容にも説得力があります、働き過ぎのビジネスパーソンが読んでも腑に落ちることが多いと思います。自分の未来を暗くする孤独について、じっくりと考えることができました。孤独を防ぐために、私も家族とのコミュニケーションにももう少し気を使います!

まとめ

男性の関係貧困と女性の時間貧困が日本の社会を蝕んでいます。孤立する男性が増えるとうつや孤独死が増加し、日本の未来を暗くしてしまいます。この問題を解決するためには夫婦は「生涯」を共にするだけでなく、「生活」を共にする必要があります。現代の男女の悩みを解決するためには、男性の働き方や子育ての過去の常識を捨てなければなりません。

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