ティエン・ツォとゲイブ・ワイザートのサブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデルの書評

デジタルの世界で、何十億という消費者の関心が所有から利用へと加速度的に移行しており、サブスクリプション・エコノミーが爆発的に拡大している。それなのに、ほとんどの企業はまだ製品を売ろうとしていて、この先100年ビジネスを続けていくための正しい備えができていない。その結果、誰がこの巨大な機会をつかむかわからない。いま、サブスクリプション・ビジネスに移行しなければ、数年後、生き残りのために移行しようとしても、移行できるビジネスそのものがなくなっている可能性がある。(ティエン・ツォ、ゲイブ・ワイザート)


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サブスクリプション・モデルが無視できなくなってきた!

ティエン・ツォゲイブ・ワイザートサブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデルを読了しました。私たちはモノの所有にこだわらなくなり、購入する際の商品やサービスの期待値は以前とは変わり、シビアになっています。自己の体験をよくするモノやメンテナンスコストがなく、むだな時間をとられないサービスが選ばれるようになっています。製品ではなく、顧客体験を重視したサブスクリプション・モデルが顧客から評価されています。

顧客は標準化されたものではなく、カスタマイズされたものを好むようになっています。売り手の都合で行われる計画的陳腐化〔次々とモデルチェンジをして商品の買い替えを促進すること〕ではなく、絶えざる改善を評価しようとしています。絶えず顧客を喜ばす仕掛けを作り、顧客とともに成長する企業がこれからの勝者になっていくはずです。会費を払えば使い放題で、面倒な購入作業が必要なくなるサブスクリプション・モデルが支持されているのも顧客の痒いところに手が届いているからです。

長寿企業は顧客に従う企業であり、顧客を従わせようとする企業ではない。顧客が何を欲しがっており、それをどんな方法で入手したがっているかを知る企業は、独りよがりの製品を作って、顧客に売りつけることに時間と労力を費やしている企業より、はるかに良好な成果を上げるだろう。製品中心から顧客中心へーこの組織的マインドセットの移行こそ、私がサブスクリプション・エコノミーと呼ぶものだ。今日の世界は、運輸、教育、メディア、医療、ネットデバイス、小売、製造など、すべてが「サービスとして」提供されている。

SpotifyやNetflixが日本でも話題になっていますが、ビジネスモデルがサブスクリプション・モデルに移行しています。顧客を喜ばすサブスクライバーになることが、生き残りの秘訣になっているのです。著者たちは今後5年から10年のうちに顧客を理解できなければ、その企業は立ち行かなくなると指摘します。Netflixなどのベンチャー企業が巨大企業の鼻を明かしていますが、彼らは顧客が誰ななのかを明確にしています。顧客の声(VOC)を聞き、顧客体験(CX)を高めることで、顧客との距離を縮めているのです。

 

良質な顧客体験の提供が生き残りの鍵?

小売業が死んだというのは間違いだ。小売総売上の85~90%がリアル店舗からもたらされている。死んだのはお粗末なリアル店舗だ。ショッピングモール型デパートは、買い物客が望むような方法で関係を築けていないために、多くの問題を抱えている。そういう店に入る買い物客は、店に入る前からそこに何があるかわかってしまっている。(リード・グリーンバーグ)

チャンスがなくなっているという小売店舗にデジタル企業が乗り出しているのは、オンラインでの差別化が難しくなっているからです。オンラインだけでなく、リアル店舗を活用し、顧客を喜ばすことを考えなければ勝者になれなくなっています。ウェブサイトで新しい取り組みをしても、すぐに競合他社に真似されてしまう時代に、リアル店舗の価値が見直されています。

リアル店舗であれば本当に新しい、他の場所では決して得られない体験を顧客に提供でき、顧客をファンにできることにデジタル企業の経営者たちは気づきました。顧客を獲得するためには、顧客体験を高めることが重要ですが、多くの旧来型の小売はこれができず苦しんでいるのです。逆に、進行ベンチャーは顧客視点でサービスを設計することで、チャンスを拡大しています。

あなたの会社が今後5年、見知らぬ人に製品を売る商売を続けるとしたら、10年後にも会社が存続している可能性は低いと言わなくてはならない。今日、あらゆる消費者ブランドに絶対に必要なのは、顧客を知るということだ。そうしなければ、あなたの会社は破綻する。単純でわかりやすい事実だ。

顧客とのタッチポイントを増やし、時間を伸ばすことを目指すのにサブスクリプションモデルは有効です。新しいビジネスモデルを成功させるのに不可欠な要素は、熱心なサブスクライバー・ベースを広げ、掘り下げればよいのです。デジタル化された顧客IDを活用し、カスタマー・インサイトの発見と顧客エンゲージメントの強化を実現しましょう。魅力的なショッピング体験を顧客に提供することで、顧客をファンにできるのです。

新しい勝者は、リアル店舗をネット店舗の拡張スペースとして利用しています。
●ボノボス(Bonobos)の「ガイドショップ」は実際には何も販売していません。客が店にある商品を気に入れば、ボノボスは後でそれを客に発送します。リアル店舗の狙いは、客が実際に商品に触れて試せるということと、アドバイスを得られるということです。同社は店舗を、在庫管理のためではなく、カスタマー・インサイトを獲得するために利用しています。リアル店舗は顧客体験のアップのために使われ、他はオンラインで処理されています。
ワービーパーカー(Warby Parker)は、来店客の85%があらかじめネットで商品を調べているということを踏まえ、店舗建設に1平方フィートあたり平均3000ドルという高級店舗なみのコストをかけています。高級店舗での試着がネットを補完し、顧客体験を高めているのです。ここでは商品を購入できず、あくまでもショールームとい位置付けで店舗を運営しています。
●Amazon Booksでは、本が面出しで陳列され、解説やレビューの評価点を示すカードが添えられています。よい本との出会いを優先させ、 Netflixのように新しく面白いコンテンツを前面に押し出しています。

1つ目。お客様に、店に行きたいと思ってもらえるようなショッピング体験を提供すること。2つ目。その体験をリアル店舗だけではなくデジタルとモバイルの関係の中でも提供すること。(ケビン・ジョンソン)

スターバックスのケビン・ジョンソンCEOはリアルからオンラインにシフトし、顧客体験を高めています。スターバックスでは店舗での自分のコーヒー体験をオンラインで振り返ることで、顧客とブランドの距離を縮めています。

最近のAppleはiPhoneの出荷台数を発表しなくなっています。彼らは顧客IDの1件当たりの収益・生涯価値、そして、IDのべース拡大と価値の強化につながる効率的な指標に関心を寄せ、投資家に説明しています。実際、AppleはIDをリアル店舗での販売に巧みに統合し、エンゲージメントを高めています。私も店舗に行くたびに、彼らの対応に感動し、NPS調査に協力しています。Apple Storeの店員の素晴らしい接客が、Appleをより強いブランドにしているのです。

Netflixはオリジナル・コンテンツの制作に多大な予算を投下し、批判を受けていますが、全く気にせずコンテンツ制作への投資を続けています。その結果、世界中で1億3000万人の人たちが同社のメンバーになり、今期は160億ドルの売上をあげようとしています。サブスクリプションで得た会員基盤が、彼らの収益を支えており、顧客を喜ばせることが彼らの経営目標になっているのです。

彼らは、新しい加入者を獲得し、現在の加入者の契約を継続させるために、最高なコンテンツを制作・提供することに注力しています。一度制作した番組は未来にも価値を持ち続け、Netflixの魅力になるのです。新しいオリジナルコンテンツは新規顧客の獲得コストを引き下げ、既存顧客の生涯価値を高めています。

Netflixは徹底的の顧客データを分析し、加入者ごとに、投資した金額を回収するためにどのくらいの時間がかかるかを算出しています。彼らは長期的に利益を優先し、短期的な支出に糸目はつけません。顧客の声を聞き、顧客体験を高めることが彼らの戦略になっています。

まとめ

サブスクリションモデルを単なる課金モデルと捉えると本質を見失ってしまいます。顧客が望むことを提供するサブスクライバーが、顧客の情報を様々なタッチポイントから入手し、サービスをどんどん進化させていくのです。VOCを分析し、顧客体験を高めるNetflixのようなサブスクライバーが、これからの勝ち組になっていくはずです。また、オンラインだけでなく、オフラインでの顧客体験が生き残りを左右しますから、顧客とのタッチポイントを広げることが競合に勝ち抜くためには必要になってきます。

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