ロザベス・モス・カンターのグレート・カンパニーの経営論の書評

企業が事業ポートフォリオ以上の目的を果たすつもりならば、CEOは、社員への権限委譲、感情的な絆、価値観に基づくリーダーシップ、関連する社会貢献などにも投資を広げなければならない。(ロザベス・モス・カンター)


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グレートカンパニーに必要な6つの原則

グローバル化によって変化のスピードは速くなり、世界中の企業と顧客を奪い合うようになりました。世界の至るところでライバルが増え、スピーディに対応しないと負け組になってしまう厳しい時代が到来しています。企業が生き残るためにはイノベーションが重要になりますが、それは人間の想像力や動機、コラボレーションに左右されることがわかっています。

持続的に企業が成長するためには、成長企業の目標と社会の価値観を合致させ、正当性や人々の支持を確保すしなければなりません。国境を超えてグローバルに事業展開する企業は、文化の調和や現地の人たちとの調和を図らなければなりません。世界のどのエリアにおいても、政府やオピニオン・リーダー、一般市民からの支持を受ける必要があります。グローバル社会では、現場にいる社員が企業の顔であり、代表のような重要な役割を担うのです。

ハーバードビジネススクールのロザベス・モス・カンターグレート・カンパニーの経営論の中で、世界中の顧客から支持される偉大な会社になるための6つの原則を紹介しています。

グレートカンパニーに必要な6つの原則
第1の原則 共通の目的
第2の原則 長期的視点
第3の原則 感情的な絆
第4の原則 公的組織との連携
第5の原則 イノベーション
第6の原則 自己組織化

グローバル社会で通用するためには、強力なアイデンティティが企業に求められます。多くの人は製品が重要だと考えるかもしれませんが、目的と価値観こそ、組織のアイデンティティの軸になるのです。顧客に貢献すると同時にVOC(顧客の声)を聞くことで、新たなプロダクトやサービスを生み出せるようになるのです。

ペプシコは、持続可能性に向けた企業スローガン「パフォーマンス・ウイズ・パーパス」(目的を伴う成果)を実践するうえで、健康を重点分野の一つとしています。このスローガンよって、各国のさまざまな事業に戦略的方向性が与えられ、社員のモチベーションが明らかになります。「あなたによりよい」ことへ経営資源を徐々にシフトし、 これを買収や投資の根拠としています。飲食品の糖質やナトリウムを削減・除去する取り組みを行うなど、商品づくりも健康を意識したものに変わっています。よりよいことが全世界のペプシコで働く社員たちのアイデンティティとなり、共通の目的を達成するためによい行動を起こせるようになったのです。

社会貢献、世の中との交流がイノベーションを起こす!

グレート・カンパニーはそのアイデンティティを表現する際、必ずと言ってよいほど、貢献活動などを通じて目的や価値観を確認する。

2016年6月、lBMは創業100周年に合わせて、全世界で社会貢献活動を実施しました。当日は30万人を超えるlBM社員たちが延べ1160万時間を費やし、学校、政府機関やNGO(非政府組織)に研修サービスやソフトウエァへのアクセス(その多くがこの日のために開発されたも のである)を提供しました。

ドイツの100の学校では、プライバシーやいじめ対策の教育研修を実施したほか、インドでは、目の不自由な人のために新しいウエブサイトを開発し、50カ所でそのお披露目をしました。lBMが社会貢献を重視していることを示すため、たとえ販売予定の試作品でも、無償で提供されたそうです。社員が社会に貢献することで、自分たちの社会的意義を確認できます。一人一人が世の中への貢献を考えることで、素晴らしいアイデアが生まれ、社員をよりアクティブにしてくれます。

金儲けよりも大きな目的を掲げることで、戦略や行動の指針が得られ、オープン・ソース・イノベーションが実現し、社員たちは日常業務のなかで自社や個人の価値観を体現できる。企業が「社会に貢献している」と主張しても、リーダーが目先の利益を求めることなく、時間や人材、経営資源を国家や地域社会のプロジエクトに配分し、ある国の人々が別の国に貢献するように後押しする時、初めて信用される。

IBMのグローバル社会貢献プログラム「コーポレート・サービス・コー」は、優秀な社員たちでチームをつくり、新興国のプロジエクトに一カ月間派遣することで、将来のリーダーを育成しています。社会ニーズに目を向けると、イノベーションにつながるアイデアが生まれてくることが多いことが彼らにはわかっているのです。

ノバルティスの社員たちは、病院の仕事を手伝うなかで、病気との闘いを目の当たりにし、自社の薬がどのように使われているのかを知ることができました。2011年、P&Gの社員たちは「タイド・口ード・オブ・ホープ」号というバンで、洪水被害に遭ったアメリカ南部各地を巡回しました。マネジャーとその他専門家は、移動式洗濯機で被災者の衣服を洗濯し、これを届けるなかで、被災者やこれらの人たちが置かれた状況を知ったのです。このような交流は企業の価値観を伝えると同時に、貴重な学習機会となり、社員をより強い存在に変えてくれます。

グレート・カンパニーマネジャーたちは、組織図に書かれている組織はあまりに一般的で堅苦しいため、資源やアイデアが自由に流通することを妨げる可能性があることを承知している。硬直化はイノベーションを阻害する。一方、非公式で自己組織的、融通無碍で一時的な人的ネットワークのほうが柔軟で、関係づくりや経営資源の組み合わせもスムーズである。

世の名との交流に励めば、その副産物として新たなプロジェクトやイノベーションが生まれてきます。そのような人的ネットワークづくりは組織的に奨励されるべきであり、さまざまなコミュ二ケーション・ツールや会議の場などで後押しする必要があります。

また、優れたアイデアは一旦会社として断念したものでも、自己組織的に生まれた人的ネットワークのなかで生き長らえることも少なくありません。グローバルな会社では多様で自発的なネットワークが生まれ、チャットやメールなどを通じて、プロジェクトが成長していくことがあるのです。

ペプシコの中南米のマネジャー3人は、南部の気候に合っており、デンプンが少なく、環境的に持続可能な新種のジャガイモを開発するという夢を10年来抱いてきました。そして、そのプロジエクトは、ジャガイモ発祥の地ペルーで行うべきであると考えていたのです。彼ら3人は部署が異なっても連絡を続け、会社にこのアイデアを何年間も提案し続けました。

ついにこのプロジェクトに追い風が吹き、この新種のペルー産ジャガイモを使ったポテトチップは大評判になったのです。このポテトチップは、アンデス山中の人里離れた小村の零細農家がつくる色とりどりのジャガイモを使っており、栄養、味、社会貢献の三拍子がそろい、それが顧客から評価されたのです。

その後、ペプシコの元のCEOインドラ・ヌーイは、ジャガイモの新種開発を世界規模で推し進める「アグリカルチャフル・ディベロップメント・センター・オブ・ペルー」の設立を発表しました。このプロジェクトの責任者は先の3人のなかの1人であり、「あなたによりよい」を共通目標にすることで、ペプシコにイノベーションを起こしました。

共通の目的を持った自己組織化するコミュ二ティは、改革の強力な原動力となります。彼らは通常ならば選択しないであろう方向に企業を導いていくのです。上からの命令がなくても行動する人は、探究者や起業家として活躍し、世の中に貢献できます。このような強い社員を抱える会社がグレートカンパニーになれるのです。

まとめ

世界中の顧客から信頼を得られるグレート・カンパニーになるためには6つの原則があります。経営者は社員に権限を委譲し、顧客と社員の声を聴きながら、世の中をよくしていくべきです。共通の目的、長期的視点
、感情的な絆、公的組織との連携、イノベーション、自己組織化によって経営者、社員と顧客の絆は強まり、会社は強くなっていくのです。

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