ヤニス・バルファキスの「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」の書評

8万2000年ほど前、人類ははじめて大きく飛躍した。人間はただのうなり声ではなく、言葉を発するようになった。それから7万年後(いまから1万2000年前)、人類は2度目の大きな飛躍を遂げた。今度は土地を耕すことに成功した。うなり声のかわりに言葉を使い、木の実を口に入れるかわりに作物を収穫できるようになった。そこではじめて、いまのわれわれが「経済」と呼んでいるものが生まれた。(ヤニス・バルファキス)


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農産物の余剰が経済よ呼ばれているものを生んだ!

ヤニス・バルファキス父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。が話題になっています。ギリシャの経済学者・政治家である著者は娘のために、経済の歴史を振り返ります。専門用語をできるだけ使わずに血の通った言葉で、経済について語る著者の姿勢にとても好感が持てます。

人類が農耕を「発明」したことで、経済格差が生まれます。大昔の人たちは大変な苦労をして、作物を育てる方法を見つけました。われわれの祖先が土地を耕すようになったのは、みんなが飢えて死にそうになっていたからだったのです。周囲の獲物を狩り尽くして、人の数も爆発的に増えてくると、食べ物が足りなくなり、私たちの祖先は生き延びるためには、土地を耕すしかありませんでした。人はいつも課題を解決するためにイノベーションを起こしますが、私たちの先祖たちは飢えをしのぐために農業を始めたのです。

技術革命のきっかけはいつもそうだが、農耕も、人類がはじめようと思ってはじめたことではなかった。土地を耕す必要のない場所では、誰も農耕なんて考えなった。

たとえば、自然の恵みが豊かなオーストラリアでは、畑を耕したりしませんでした。土地を耕さなければ生きていけない場所でだけ、農耕が発達したのです。

人間が農耕の手段を開発していく過程で、社会は劇的に変わっていきました。腐らないという特徴を持つ農産物の「余剰」が生まれることで、人類を永遠に変えるような、偉大な制度が生まれたのです。文字、債務、通貨、国家、官僚制、軍隊、宗教といったものは、すべてこの余剰によって生まれました。テクノロジーも、最初の生物化学兵器を使った戦争の原因も、もとをたどれば余剰だったのです。

 

格差はどこから生まれてきたのか?

支配者を正当化する思想がなければ、国家の権力は維持できなかった。支配者が死んでも国家が存続し続けられるような、国家権力を支えるなんらかの制度化された思想が必要だった。そして、思想を制度にするような儀式を執り行ったのが、聖職者だ。大量の余剰がなければ、複雑な階層からなる宗教組織は生まれていなかった。

大量な余剰が何も生み出さない聖職者を生んだのです。余剰は国家の権力を維持するために使われました。庶民が反乱を起こさないように、権力者たちは上手に宗教を活用しました。何千年にもわたって、国家と宗教は一体となり、庶民をコントロールしてきたのです。

気候が温暖で人口が少なかったオーストラリアのような場所では、余剰は生まれませんでした。オーストラリアでは農業の必要性がなかったために、人々は土地の恵みを独り占めできたのです。だから農耕技術を発明しなくても生きていけたし、余剰を貯め込む必要もありませんでした。イギリス人は多くの課題を持つことで、様々なイノベーションを起こし、最終的にオーストラリアを征服し、グローバルな格差を生み出したのです。

格差はふたつの形で拡大していった。ひとつは、グローバルな格差だ。これによって、一部の国は20世紀や21世紀になっても極度の貧困に苦しみ続け、一部の国はありあまるほどの力と富を享受している。そして豊かな国は、しばしば、より貧しい国から奪い続けることによってその地位を安泰にしている。もうひとつは、それぞれの社会の中での格差だ。貧しい国でもひと握りの金持ちは、豊かな国の金持ちよりも金持ちということすらある。 どちらの格差も、もとをただせば経済的な余剰に行きつく。その余剰は、農耕という人類最初のテクノロジー革命から生まれたものだった。

権力者が聖職者と組むことで、格差を当たり前のものとして、庶民の中に植えつけていきました。過去の歴史の洗脳がまだまだ、私たちの脳内に残っているのかもしれません。著者である父は余剰について語りながら、格差を当たり前に思わないことを娘に教えます。どこから格差が生まれたかを私も娘に伝えたくなりました。本書の様々な経済の話から視点を変えることができ、私たちは課題に対する解決策を学べます。何回に分けてこの良書を紹介したいと思います。

まとめ

農作物の余剰によって、文字や宗教、債務、通貨、国家などが生まれました。その余剰から経済が生まれ、イノベーションや軍隊が生まれたのです。権力者は聖職者や軍隊を使いながら、庶民や植民地をコントロールしてきました。現代の課題であるグローバルと社会の格差ももとをただせば、この余剰から生まれたのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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