橘玲氏のもっと言ってはいけないの書評

旧石器時代の打製石器というイノベーションにつづいて、人類が生み出した次の巨大なイノベーションが約1万年前の農耕だ。ヒト(サピエンス)は、この大きな環境の変化にも適応したはずだ。(橘玲)


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農業と言うイノベーションが格差を生み出した!

橘玲氏のもっと言ってはいけないを読了しました。本書は人種間の知能の差や遺伝子の学説から、日本人の強みを明らかにしています。辛口な話が多く、これを嫌がる読者も多いかもしれませんが、自分の視点や思考の幅を広げることができる一冊だと思い、今日はこちらを紹介します。

私たちの先祖は多くの課題を解決するために、イノベーションを起こしてきました。特に、農業というイノベーションは特別な力を持ち、人類を飢えから救いました。しかし、その一方で社会的な格差やグローバルな格差を生み出したのです。この辺りの話はヤニス・バルファキス父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。ブログを参照ください。

10万年前の世界人口は、アフリカのヒト(サピエンス)とユーラシアの旧人類(ネアンデルタール人など)を合わせて50万ほどしかいませんでした。ヒトがユーラシア大陸に拡散した1万2000年前(氷河期の終わり)でも、その数は600万人程度だったと推計されています。しかし、農業というイノベーションで力ロリー生産量が急激に高まったことで、紀元前1万年から西暦1年までのあいだに世界人口は100倍に増加しました(推定値は40~170倍)。

農業をしなくとも豊かに生きられた南米やオーストラリアの原住民は、大航海時代になると甚大な被害を被ります。ヨーロッパ人が新天地を探す中で、彼らとの接触によって天然痘などに感染し、多くの住民が死んでいったのです。

農業が現生人類に与えた最大の変化は、食糧を求めて少人数で広大な大陸を移動する狩猟採集生活から、土地にしばりつけられた人口密度の高い集団生活に移行したことだこれによって人類は感染症の危険にさらされることになって免疫機能を発達させ、炭水化物を大量摂取しても糖尿病になりにくい体質へと”進化”した。狩猟採集生活をしていたり、農業を始めてから歴史の浅い新大陸(アメリカやオーストラリア)の原住民は、ヨーロッパ人との接触で天然痘などに感染して甚大な被害を被った

課題社会で生きてきたヨーロッパ人は農業以外でもイノベーションを起こし、そこから生まれた技術力や軍事力で南米やオーストラリアを支配していったのです。

それ以外でも、「農業による集団生活」というまったく新しい環境は、ヒトに対してさまざまな淘汰圧を加えました。貯蔵できる穀物は余剰を生み出し、新たな宗教や文化を創造しました。ユーラシア大陸で1万年にわたって農業を行なってきたひとびとの末喬であるヨーロッパ系や東アジア系は、ムラ社会の習慣をそのまま学校・軍隊・工場などに持ち込むことで、国家を繁栄させてきました。

しかし、アフリカ人やオーストラリアのアボリジニは、文化や習慣の背後に生得的な基礎がなかったために、近代システムに乗り遅れたのです。人口稠密なムラ社会で生きてきた東アジア系は、社会に最適化するよう気質や性格を「進化」させてきたことで、苦難をの乗り越え、成長を手に入れることができたと著者の橘氏は指摘します。

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東アジア系の人々がアメリカで成功した理由

心理学では人格の「ビッグ・ファイブ」を開放性、真面目さ、外向性、協調性、精神的安定性としているが、これらの性格と仕事の成果(業績)の関係をみると、すべての仕事においてもっとも影響が大きいのは真面目さで、次いで外向性、精神的安定性となっている。「真面目で明るく、落ち着いている」ひとは、どんな職場でも信頼されるのだ。

外向性(社交性・明るさ)が高い影響力をもつのは管理職・営業職など対人関係が必要な業種で、学者・医者・弁護士などでは相関係数がマイナスになっています。専門職は実は内向的なほうが成功しやすいのです。

アジア系アメリカ人のIQは白人とほぼ同じですが、世帯年収は白人よりも25%ほど高くなっています。知能とは別に、努力、勤勉、信頼性などの要素が彼らの付加価値になっています。アメリカでは営業職などを別にすると、「協調性がない=個性的」な方が高い所得を得られることがわかっています。

日本人・中国人・韓国人は(白人と同程度に)知能が高く、性格的に真面目で内向的だから、ポジティブ志向のアメリ力社会ではリーダーにはなれないかもしれないが、賃金の高い専門職にもっとも向いているのだ。 意志力や自制心にはさまざまな心理的要因があるだろうが、たしかなのは、不安感が強い人間は将来を心配し、そのため現在の快楽を先延ばししようとすることだ。

知能が高く、性格的に真面目で内向的なアジア人は、リーダー以外の専門職に向いていて、そこで高い給与を得ています。東アジア系は遺伝的・生得的に脳内のセロトニンが少ないために、不安を抱きやすいという特徴がありますが、未来を不安に思うことで、真面目に勉強したり、懸命に働くことができるのです。アメリカなど低コンテクストが当たり前の社会ででは、クライアントの微妙な表情を理解し、的確な応答ができる東アジア人の高コンテクストな能力が評価されるのです。

東アジア系の人々は、強いストレスにさらされるとうつ病を発症しますが、その代償として必死に勉強し、真面目に働いて倹約にいそしみました。彼らは勤勉な姿勢を続けることで、アメリ力社会で経済的な成功を手に入れられたのです。

まとめ

東アジア系の人たちのIQはとても高いのですが、不安感が強く、目先の利益よりも将来のことを心配しがちです。「知能」と「意志力(先延ばしのちから)」のこの組み合わせが東アジア系の人たちを豊かにしました。彼らはこの能力によって、アメリ力社会で専門職として成功し、短期間で高収入を得ることができたのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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