ローレンス・レビーのPIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話の書評

なるべく包み隠さず投資家に語るのが一番だと思う。ピクサーは心が躍るストーリーの会社だし、スティーブが絡んでいるのだから注目は集められるはずだ。リスクは、隠そうとしてもばれてしまう。どうせばれるなら、最初から率直に伝えたほうがいい(ラリー・ソンシニ)


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リスクを隠してはいけない!

PIXAR(ピクサー)のCFOのローレンス・レビーは、同社の危機を救うためにシリコンバレーの法律顧問のラリー・ソンシニに相談します。PIXARに投資をしたスティーブ・ジョブズがレビーに株式公開(IPO)をオファーしたのです。レビーは株式公開のメリットとリスクについて悩み、ラリーに自分の気持ちを正直に伝えます。

収益が上がっていませんし、今後の売上もはっきりとは予想できません。そのうえ、『トイ・ストーリー』から次の公開まで3年はかかると思われます。ピクサーはディズニーアニメーションと肩を並べる存在になれる可能性があります。そういう意味ではとても魅力的な賭けですが、リスクのせいで投資家が尻込みしてしまうのではないかと心配なのです。(ローレンス・レビー)

それに対して、ラリーはリスクについて包み隠さず話すことをアドバイスし、レビーは投資銀行との交渉をスタートします。投資銀行のスタッフはピクサーのスタジオを見学し、そのクリエイティブ力を評価します。その結果、ピクサーは資金調達が可能になり、あのトイストーリーが公開されたのです。ディズニーの支配下にあったピクサーがスティーブのアドバイスで生まれ変わり、真の独立を勝ち取った瞬間でした。

もし、レビーがただ悩んだだけで、ラリーに会いに行かなければ、投資銀行とのミーティングは行われていなかったでしょうし、トイストリーの公開も遅れていたはずです。レビーがラリーのアドバイスに従っていなければ、その後のスティーブ・ジョブズやピクサーの運命も変わっていたかもしれません。

 

ピクサーの成功でスティーブ・ジョブズのサクセスストーリーが始まる!

ピクサーは1995年にIPOを実施しますが、ジョブスはここで大きな賭けに出ます。ジョブズはなんと映画『トイ・ストーリー』の公開1週間後にIPOを設定したのです。11月22日の水曜日、北米の映画館で『トイ・ストーリー』が公開されました。11月25日土曜日の朝には、『トイ・ストーリー』の成績が伝えらえましたが、それは驚異的なものでした。週末の興行収入は3000万近くに達する大ヒットになるとディズニーは予想したのです。

11月29日の水曜日、ピクサーの株式600万株が1株22ドルで売りに出されました。株価はすぐに30ドル台の後半まではね上がり、IPOは大成功します。IPOだけでなく、ピクサーは興行的にも成功します。『トイ・ストーリー』は北米で総額1億9200万ドル弱もの興行収入をあげ、1995年最大のヒット作とになりました。ディズニーの下請けに過ぎなかったピクサーが、この年からアニメ映画の表舞台に登場したのです。

スティーブは当初ピクサーに5000万ドルの大金を使いましたが、成果を全く得られませんでした。しかし、彼は財務戦略をローレンス・レビーとともに作り上げることで、世界有数の金持ちになれたのです。アップルをクビになったスティーブのサクセスストーリーはここから始まったのです。

その翌年、ピクサーとウォルト・ディズニーは10年間で5本の映画を共同製作することを発表します。この提携はベンチャーのピクサーに有利なもので、費用、収益も折半、ロゴの取り扱いもディズニーとピクサーが同列になり、ピクサーのブランド価値は一気にアップします。

そして、ピクサーの成功は続き、ついに2006年1月にウォルト・ディズニーがピクサーをを76億ドルで買収することを発表します。ピクサー株の大半を持つスティーブは、このとき、数十億ドルを手にしました。さらに、それから10年でディズニーの株価は急上昇しており、スティーブの持ち分も4倍近くまで価値が上がったのです。

ジョン・ラセターなどのクリエイティブの力でピクサーが成功したことは確かですが、成功の裏にはきめ細かな財務戦略やブランディング戦略があったのです。著者が包み隠さずリスクを話し、実際に投資銀行にクリエイティブのパワーを示したことで、ピクサーのIPOがスタートします。ピクサーが勝利できたのもこの判断があったからなのです。

まとめ

スティーブ・ジョブズはピクサーの成功で表舞台に復活しますが、その裏にはCFOのローレンス・レビーの活躍があったのです。ピクサーがディズニーとの不平等な契約を改善し、IPOするストーリーは最高にエキサイティングです。リスクを恐れずに行動する重要性を本書から学べます。

参考図書 PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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