書評 ブレット・キングのBANK4.0 未来の銀行

私たちは40年間かけて、支店がバンキングサービスにアクセスできる唯一のチャネルであったところから、マルチチャネルへ、そしてオムニチャネル、さらに最終的にはデジタル・オムニチャネルとなって、顧客がデジタルのみでバンキングにアクセスするところまできた。(ブレット・キング)

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BANK4.0とは何か?

ブレット・キングBANK4.0 未来の銀行を読了しました。銀行がしてベースの発想でデジタル化を推進するうちに、テック企業が顧客起点の銀行業務をスタートし、支持を広げています。面倒で手間な銀行本位の手続きに固執し続けると、既存銀行はあっというに存在感を失ってしまいます。彼らチャレンジャーは、バンキング経験を徹底的に簡素化しようと考え、顧客経験からフリクションを取り除こうとしています。一方の銀行は自社商品を選んでほしいという意図が強く、新興勢力に対抗できずにいます。

バンキングも、現在の他のあらゆるサービス・プラットフォームと同様、リアルタイムで即時充足が期待される世界におかれているのだ。しかしながら、紙の申込書と融通の利かないコンプライアンス・プロセスに基づいた静的なプロセスを当然としているなら、バンキングをリアルタイム世界に適合させるのは容易ではない。他の多くの業界と比べると、eコマースで収益を上げることに関して、バンキングは適応速度が遅い。

バンキングの世界は変化を続け、テクノロジーが普及してユビキタスとなった世界に合うように新しくデザインされつつあります。この世界で意味ある存在であり続ける唯一の方法は、新しい世界に適合した顧客経験をつくり出すことしかないのです。支店をベースに同じことを繰り返している既存銀行は、顧客視点に立ったサービスをいますぐ提供すべきです。

中国では金融革命が起こり、アリババグループのアント・フィナンシャルが存在感を増しています。このまま成長が続けば、10年以内に5000億ドル企業となり、2030年には時価総額1兆ドルに近づく可能性が高いと言います。これは現在世界最大の銀行のーつである中国工商銀行の4倍の規模になります。現在のアント・フィナンシャルの時価総額は、世界のバンキングで最も評価の高い企業のーつであるUBSと同等になっているのです。

ユビキタス、リアルタイムのバンキングを特徴とする「Bank4.0」を定義します。
Bank1.0:14世紀に始まった伝統的なバンキング。主要アクセスポイントである支店を中心に形成される。
Bank2.0:セルフサービス・バンキングの出現。ATM機に始まり、1995年以降のインターネットで動きが加速。
Bank3.0:スマートフォンの登場とともに、バンキングは必要なときに必要な場所で行うものに生まれ変わる。
Bank4.0 : AIやブロックチェーン、ソーシャルメディアを駆使した新たなサービス。顧客のメリットのみを追求した新たなバンキングの世界がテック企業を中心にスタートしている。

中国だけでなく、アフリカでも新たなバンキングサービスがスタートしていますい。店舗の必要のないモバイルだけで、新しい顧客シナリオを作る新しいタイプのバンキングサービスが顧客を虜にしています。彼らはつい最近まで、銀行口座を持てなかった弱者ですが、 テクノロジー至上主義のプレーヤーが登場することで、お金の流れがスムーズになったのです。

実際、2005年にケニアに住んでいた人は、70%の確率で銀行口座を持っていませんでした。M-PESAと呼ばれるモバイルマネーサービスが登場することで、貯蓄や送金ができるようになりました。通信事業会社のサファリコムのM-PESAの上で、ケニアのGDPの少なくとも40%が動いているのです。このモバイル決済において、ケニアはアメリカよりはるかに先進的です。いつの間にか日本の決済システムが中国の後塵を拝していたのと同じで、日米欧の既存銀行の決済システムは完全に時代遅れなものになっています。

実際、中国では多くの人が銀行口座を使わずに、スマホで決済をしています。バングラデッシュではほとんどの人が銀行を使わず、日常的な決済をモバイル経由で行なっています。

アリババとアマゾンは、そのプラットフォーム上で、起業家たちに対してビジネスバンキングのサービス提供を始めることが増えてきている。プラットフォーム上にある店頭での取引、中小企業ローン、外国為替、資本管理、税金対応およびその他の業務項目の何であろうと、企業ユーザーは彼らのプラットフォームによって、そこに組み込まれたバンキングやファイナンスを利用できる状況が増えている。

アリババやアマゾンと関係の深い企業は、プラットフォーム上ですべての業務を実行し、資金調達まで行なっています。プラットフォーマーが企業の資金需要に応じることで、銀行サービスの必要性が低下しているのです。通帳、小切手、キャッシュカードはスマホに置き換えられ、過去の遺物になりつつあるのです。2030年には銀行サービスがほぼデジタル化され、既存銀行は生き残るために変化を余儀なくされています。

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Bank4.0が変える未来!

Bank4.0は、新しい価値貯蔵、決済、融資利便性といったものを超えることになるだろう。Bank4.0はクルマに内蔵されて、ドライブスルーでカードを出さなくても支払いが可能になるだろう。あるいは自動運転車に搭載されて、クルマが自分で稼ぎを上げたり、道路料金を支払ったりするようになるだろう。複合現実対応のスマートグラスに組み込まれて、テレビの新製品や新車等の何かに目を向けるだけで、それを買う余裕があるかどうかを知らせてくれるようになるだろう。

Bank4.0はアレクサやシリのような音声ベースのスマートシスタントに組み込まれて、支払い、予約、取引、照会、貯蓄や投資の指示ができるようになるはずです。スマートグラスに組み込まれることで、テレビの新製品や新車等の何かに目を向けるだけで、それを買う余裕があるかどうかを知らせてくれたりします。お金が必要な時に即座にそれが実現可能かどうかをBank4.0が教えてくれます。

Bank4.0はとは、おカネに関するソリューションが必要な場所で必要なときに、個人の行動に合わせて、リアルタイムでバンキングの機能にアクセスできるというものだ。Bank 4.0の登場が意味するものは、あなたの銀行は顧客の世界のなかに組み込まれているかどうか、ということだ。つまり、あなたの銀行はコネクテッドな世界に適応し、フリクションを排除して使い勝手のよさを実現しているのかということであり、そうでなければ変化の餌食になってしまう。

未来の銀行員は、現在の銀行員とは全く異な流存在になります。未来の銀行員はテクノロジストであり、顧客がデジタル世界でバンキングを利用できるようにする役割を担います。現在の銀行員、現在の銀行の形あるもの、現在の銀行の商品に終わりが訪れるのは時間の問題です。既存の銀行の存在をテック企業が脅かしているのです。

AIが顧客の状況に応じた的確なアドバイスを送ることで、顧客満足を高めていきます。新しい銀行は私たちの人生をよりよくしてくれるサポーターのような存在になるのです。行動ベースのマネーAIコーチは、目標を達成するために、私たちが愚かな行動(浪費)をするのを阻止してくれます。

現在、幅広いアイデンティティ・データを最も大量に有するのは、フェイスブック、アップル、テンセント、アマゾン、アリババ/アリペイ、ウーバー、スナップチャットなどの巨大なプラットフォーム企業です。彼らは多くの人々の基本的な身元確認データを保有しているだけでなく、顔認証などの生体認証データとあわせて非常に先進的な行動データセットを保有しています。

フェイスブックは現在、大多数の世界のリテール銀行よりも良質な身元確認情報を保有している可能性が高いと著者は指摘します。それらのデータはすべてクラウド上にあり、リアルタイムでデリバリーできます。顧客は身元確認書類を提出するために支店に赴く必要がなく、競争力を高めています。既存銀行の旧来型の身元確認は、フィンテック企業が提供する、ユビキタスなプラットフォーム上の新しいサービスによってディスラプトされていくはずです。

ソフトウエア・ベースの顔認証のようなテクノロジーが顧客を特定する正確性は、通常の対面取引の15~20倍になっており、銀行が対面で行う口座開設は逆に安全で無くなっています。このように新しいテクノロジーを活用してスマート経済を実現する能力、自動化やスマートインフラへの投資を可能にする能力、変革の波に乗る能力が銀行の経営陣には求められています。

バンキングは世界経済のインフラの重要な構成パーツですが、自国のバンキングシステムの変革の歩みが遅いと、海外から次第に多くの競合が参入してきて、従来型の銀行は完全に時代遅れな存在になります。AIやブロックチェーンに対応するために、テクノロジーへの取り組みを強化しない限り、既存の銀行は負け組になりかねません。

まとめ

Bank4.0の世界では、テクノロジー企業が優位性を発揮します。バンキングの世界は変化を続け、テクノロジーが普及してユビキタスとなった世界に合うように新しくデザインされつつあります。この世界で既存銀行が意味ある存在であり続ける唯一の方法は、新しい世界に適合した顧客経験をつくり出すことしかないのです。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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