クリプトバレー=(暗号の谷)とエストニアの選挙事情

ブロックチェーン選挙が普及したら、投票のスタイルもがらりと変わるだろう。人々はわざわざ投票所に出向く必要がなくなり、自宅や外出先でスマートフォンを使って投票できるようになる。また、選挙にかかる費用や手間が劇的に下がるため、今より頻繁に選挙や国民投票を行える。そうすれば、民意を政治に反映することも容易になるはずだ。(高城剛)


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ブロックチェーンを選挙に活用できるのか?

ブロックチェーン=仮想通貨だと考えると未来を読み間違えてしまいます。確かに、さまざまなデータをユーザー同士が分散管理をし、暗号化技術を使って取引履歴が確認できる(データ改ざんの危険性が極めて小さい)ことは、仮想通貨をやりとりする上では大いに役立ちます。しかし、ブロックチェーンの技術は、金融だけに使われているわけではありません。最近では「選挙」に使われるようになっています。

現代の選挙にはさまざまな問題があります。投票が操作されると民主主義は維持できません。ハッキングとは、外部の物だけでなく、為政者が意図的に数字を改ざんすることもあるのです。選挙の改ざんもブロックチェーンを使えば、防げます。データが分散記録されているので、あるデータを書き換えても、他のデータと比較することですぐに不正がわかってしまうからです。

この2月に私はエストニアに行きましたが、こちらでは実際に電子投票によって選挙が行われています。現地の担当に話を聞くと投票率がアップし、民意がより反映されるようになったということです。実際、3月に行われたエストニア議会選挙では、投票の半数近くがオンラインからのものでした。(※およそ56万票のうち24万7232票がオンラインから投票されました。) オンライン投票のため、海外に住むエストニア国民の投票も可能で、これも投票率を押し上げています。また、電子投票が労働時間を削減し、選挙の人件費を大幅にカットしています。このエストニアの電子投票にも、実はguardtimeが開発したKSIブロックチェーン技術が活用されているのです。

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クリプトバレー=(暗号の谷)で、今何が起こっているのか?

ブロックチェーンは、民主主義の未来を変えるポテンシャルを秘めているのは間違いないが、一方、現代の為政者にとっては都合の悪いものとも言える。民意が本当に反映されると、為政者の地位を追い出される可能性が高まるのはなんとも皮肉な話だと思うが、このような背景により、選挙システムが急激に変わることは当面ないと思われる。

選挙システムをデジタル化すると世の中の景色は一変します。社会はまったく別の社会へと大きく変わる可能性を秘めていますが、なかなか実現には至らないのが現状です。選挙システムのデジタル化は既存の政治家にとっては不都合な選択でしかないのです。

しかし、徐々にブロックチェーン技術が広がりを見せています。エストニア以外でも電子投票が行われるようになってきたのです。

ツークに、近年、最先端のブロックチェーン技術を持つ企業が多数集まり、日々イノベーションを起こしている。人呼んで「クリプトバレー=(暗号の谷)」。

スイスのツークは「クリプトバレー=(暗号の谷)」と呼ばれています。この「暗号の谷」で2018年6月ブロックチェーンを使った住民投票の実験を実施しました。この選挙を主導したのは、ツーク市長のドル・ミュラー(クリプトバレーの父)です。

この流れは2013年にスタートします。ミュラー市長はニクラス・ニコラセンというデンマークのフィンテック・アントレプレナーとヴィタリック・ブテリンと面談します。ちなみに、ブリテンは仮想通貨イーサリアムを作った人物です。彼らはルークでブロックチェーンの会社を起業したい旨を市長に伝えました。スイスは直接民主主義制の連邦国家で、地方分権が進んでいます。これが、『1カ所に集めず分散させる』というブロックチェーンの考え方と親和性があったため、ツークが選ばれたのです。

ツークが”クリプトバレー”になれたのは、法人税の安さや経済的な繁栄があったからです。金融の中心地であるチューリヒから近く、ツークがオープンマインドだという評判が広まることで、ブロックチェーンの企業が続々と集まってきました。ブロックチェーンのベンチャー企業がツークを動かし、電子投票の実験がスタートしたのです。

今回の投票結果は、市政には反映しません。あくまで、ツーク市を実験室にして新たな可能性を探ったという位置づけです。我々は投票だけでなく、日常生活をよりよくするためのデジタルサービスを開発中です。ここでは2016年春から、住民向けサービスの一部支払いを仮想通貨で行えるようにしました。また、レンタサイクルや 図書館の貸し出しなどについても、先端技術を活用したアプリケーションを作っています。(ドル・ミュラー)

まだまだ、実験的側面が強いブロックチェーン技術ですが、ツークでは様々な取り組みが行われています。この技術が本当に選挙や国民投票に使われるようになったら、社会は大きく変化するはずです。エストニアやツークを支持する勢力が増えれば、時代は激変するはずです。ヨーロッパの動きから目が離せなくなっています。

まとめ

エストニアやスイスのツークでは、ブロックチェーン技術を活用し、選挙を行っています。ブロックチェーンを使った電子投票によって投票率が高まります。また、改ざんが難しいため、より公平な選挙が行われます。しかし、これが既存の政治家にはデメリットになります。今後、電子投票が主流になるのは間違いありませんが、まだまだ実用には時間がかかりそうです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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