書評 ジーナ・キーティングのNETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業

ネットフリックスを生き永らえさせるために何年にもわたって血尿を出し続けていた。その間にどうにかして解決策を見つけられないかと思ってね。シリコンバレーで起業家として成功しようと思ったら、みんな同じような洗礼を受けるんだ。(マーク・ランドルフ)

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優れた起業家になるための方法をネットフリックすから学ぼう!

ジーナ・キーティングNETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業が面白い。成功したい起業家は本書を読むことで、ビジョンの重要性、優れた開発手法、マーケティング戦略など多くのことを学べます。創業時から現在までのネットフリックスの成功ストーリーはエキサイティングで、彼らの体験をヒントにすることで、経営を改善できるはずです。創業時まで遡り、多くの関係者にインタビューしながら、ネットフリックスの真の強さを著者は炙り出しました。

キャッシュフロー、営業、開発、マーケティング、人事など創業時のネットフリックスは、他のベンチャーと同様に、あらゆる困難に遭遇しますが、創業者のマーク・ランドルフとリード・ヘイスティングスは決して諦めずに解決策を生み出していきます。2人の創業者の関係は時に軋轢を生みますが、成長するためにお互いの強みを補完することで、課題を解決していきます。ネットフリックスのメンバーの熱意と課題解決力、顧客至上主義が同社をGAFAに次ぐ存在に押し上げたのです。

DVDでのネットレンタルという新しいコンセプトの事業をスタートしたネットフリックスは、泥臭い営業も行います。DVDを普及させれば成功すると考えた彼らは東芝やソニーなどの家電メーカとのタイアップを次々に決めています。CESの各社のブースに飛び込み営業しながら、関係を築くなど目の前の課題を次々解決していったのです。赤字から抜け出すために、ヘイスティングスは今ではライバルになったアマゾンとの提携も行います。可能性があれば、とにかく考え、行動する彼らの姿勢を多くの起業家は真似るべきです。

パフォーマンスを重視するヘイスティングスは仲良し経営を排除し、組織に緊張感をもたせるように改革を実施します。このため当初はヘイスティングスの専制を我慢していた創業者のマーク・ランドルフも会社を終われてしまいます。ここからネットフリックスは、ヘイスティングスのビジョンを実現する会社に生まれ変わります。官僚主義や意思決定のスピードに影響を及ぼすとすぐに社員をリストラするなど、真のプロフェッショナルのみを優遇し、短期間に業績をアップさせました。最適解を出せる社員が切磋琢磨するというネットフリックスの組織文化が、同社を強者に変えていったのです。

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ビッグデータを徹底的に活用しよう!

われわれにとって未来とは未知の世界を開拓することです。ここで役立つのがビッグデータです。新しいオリジナルドラマを制作しようというとき、ビッグデータを活用すれば適任の監督・俳優を割り出せるし、潜在的視聴者の人数も割り出せるんです。(テッド・サランドス)

初期の段階から、ネットフリックスはどうすれば顧客が動くかを追求します。ABテストを繰り返し、効果を測定し、顧客の行動を把握していきます。ユーザーとの対話から、顧客生涯価値(LTV)や顧客維持率(CCR)を算出し、一つ一つの結果から施策を改善していったのです。このテストが顧客との距離を縮め、DVDレンタルや動画配信サービスの売り上げをアップさせました。

動画配信でオリジナルコンテンツを作ることを決めたネットフリックスは、顧客データを徹底活用し、潜在視聴者の人数を割り出しなながら、監督や俳優、エリアに適したコンテンツを割り出します。旧来型の映画製作とは異なるデータ重視の手法で、顧客を夢中にさせたのです。

ネットフリックスは制作現場の在り方を一変させた。ベテランプロデューサーの直感や過去の常識に縛られず、ビッグデータを信じて監督や俳優を選ぶことを基本にした。(ジーナ・キーティング)

彼らは稼いだ利益をコンテンツ製作に振り向けます。ネットフリックスは、目先の利益にこだわらず、成長を優先する典型的IT企業なのです。彼らは2018年までにコンテンツに130億ドル投資し、このうち85%をオリジナルコンテンツに使っています。

ネットフリックスに刺激されてアップルやディズニーなどがコンテンツ強化に一斉に乗り出したことで、1990年代のテレビ黄金時代を彷彿とさせる状況が現代のアメリカに出現しています。俳優や監督、脚本家ら映画界のクリエイターがこぞってストリーミング向けドラマの世界へ流れ込んでいったのです。

株価も上がり、ネットフリックスの時価総額は2018年半ば時点で1800億ドルに達しています。競合のワーナー・ブラザースとHBOを傘下に抱えるタイムワーナーの時価総額が840億ドル、21世紀フォックスが900億ドル。ネットフリックスの時価総額はなんとワーナー・ブラザース、HBO、21世紀フォックスの3社合計よりも大きくなっています。コムキャストやディズニーを追い抜き、同社はメディア業界でもっとも時価総額の高い会社になったのです。

株式市場での高い評価をテコにして、ネットフリックスは一流プロデューサーや監督、脚本家を片っ端からスカウトし、コンテンツを充実させています。ジェンジ・コーハン、ライアン・マーフィー、ションダ・ライムズ、エリック・ニューマンなどの大物がネットフリックスに参加し、ハリウッド全体が驚愕しました。これにより、ネットフリックスはドラマコンテンツの面で向こう10年の体制を固めたのです。彼らの攻めの姿勢がコンテンツ業界の世界をより面白くしています。

まとめ

テクノロジーとビッグデータ、プロ社員の力を最大限に活用することで、ネットフリックスは動画配信の覇者となり、GAFAをも脅かす存在になっています。ベンチャー起業家は本書から、資金調達、開発、マーケティング、カスタマーサクセス、組織作りなど多くのことを学べます。

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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