書評 サブスクリプション2.0 衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル

文字通りの「顧客至上主義」を突き詰めることが、顧客に選ばれるサブスク事業を作るうえで最も肝要になる。(日経クロストレンド)

Background vector created by freepik – www.freepik.com

サブスクリプションモデル2.0とは何か?

新聞の講読料などで設定されていた「サブスクリプション」型のサービスが急速に拡大し、日本でも話題になっています。NetflixやSpotifyなどのコンテンツ配信サービスだけでなく、最近ではメーカーが参入するなど、サブスクリプションモデルも進化を遂げています。

日経クロストレンドサブスクリプション2.0 衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデルの中で、サブスクリプションモデル2.0を以下のように定義します。

通販企業などが展開してきた頒布会モデルや消耗品の定期購入を”サブスク1.0″とするなら、メーカーの参入、売り切りではなくシェア型、個別にカスタマイズして提供という特徴を持つ昨今の新サービスは、”サブスク2.0″と言えるだろう。

このサブスク2.0において、企業は顧客に3つの価値を提供しなければなりません。
■新しい消費体験
■圧倒的な利便性
■コスト優位性

成功している企業は、「顧客にフィット」したサービスを目指し、常にサービスを改善させています。サブスクが他のECと大きく異なる点が顧客とのコンタクトポイントです。事業者は絶えず顧客の使用状況を把握できるため顧客のニーズにサービスをフィットさせ続けることが可能になります。その結果、顧客のチャーンを防げ、継続率を高めることができるのです。

流通・サービス業だけでなく、サブスクリプションモデルにキリンやトヨタなどのメーカーも参入し、顧客の財布奪い合っています。サブスクが普及する中で、顧客はサービスへの期待値を高めています。流行りに乗って、サブスクサービスを始めたからといって成功するわけでなく、顧客満足を高めなければ、あっという間に競合に乗り換えられてしまうのです。今日は、継続率が95%という驚異的な数字を叩き出している高級バッグ借り放題「ラクサス」の強みを紹介しようと思います。

 

継続率95%の高級バッグ借り放題「ラクサス」の強みは?

月額6800円(税別)で高級バッグを借り放題できる「ラクサス」。平均継続率は95%を誇る。顧客を大事に考えるが故に「強制退会」も辞さない。そんなユニークな仕組みが支持を集め、LTV(顧客生涯価値)はいまだ増え続けていて計測不能という。

エルメスやグッチなどの53ブランド、3万個超のバッグを月額6800円で好きなだけ利用できるラクサスの平均継続率は95%という数字を誇っています。顧客はスマートフォンのアプリで、使いたいバッグを選んで予約します。自宅に届いたバッグは会員であるうちは、返却せずにサービスを継続できます。別のバッグを使いたい人は、アプリから簡単に返却し、乗り換え可能です。アプリの利用者は約25万人(現在は30万人に増加)で、そのうち1万8000人が有料会員です。

ラクサスの新規性はバッグを使い放題にした点です。同社社長の児玉昇司氏は人気の秘密について語っています。

通常のレンタルは自分の意思とは関係なく返却義務が生じる。この返却するという行為を人は嫌がる。例えば、レンタルDVD。売上構成比の半分を延滞料が占めるといわれる。これは返却を嫌がり、後回しにした結果、返すのを忘れている人が多いからだ。

成功しているNetflixもDVDの返却を忘れたことからサービスを開始しましたが、このラクサスも返却という行為に注目したのです

また、顧客行動を分析することで、損をしたくないというユーザー特性を把握します。顧客はサイト訪問から購買までに約5分の時間を使いますが、その間、95%の訪問者がサイトを出入りし、価格比較サイトをチェックしていると言います。

顧客は選ぶ苦しみに時間を費やしていますが、ラクサスは選ぶ苦しみから顧客を解放することで、成功を手に入れたのです。

借り放題なら、自分の好きなタイミングで返却できる。これなら嫌々返却する必要はない。借りたバッグが気に入らなければ、いつでも返却して新しいバッグを借りられるため、届いてからイメージと違って損した気分を味わう心配もない。その代わり、料金は月額制で毎月固定額を徴収する。そんなビジネスモデルにたどり着いた。(児玉昇司)

サブスクリプションサービスは顧客だけでなく、企業側にも大きなメリットをもたらします。最大のメリットはLTVが無限大であることです。継続利用者が増えるほど、ラクサスは安定した収益を得られるようになり、収支計画が立てやすくなります。児玉氏によるとCPA(顧客獲得単価)」や原価が倍になっても、1ポイント継続率が上がるだけで全部取り戻せるとのことです。LTVが高まるほど、マーケティング活動にかける予算を増やせ、規模の拡大にアクセルを踏めるのです。

ラクサスはAIを活用し、チャーンを防いでいます。退会者の83%が使いたいバッグがないと回答していますが、その状況を改善するためにAIを徹底活用しました。AIによって利用者ごとに好みのバッグを優先的に表示し、顧客に最適なバッグを提案しています。顧客の潜在的な好みをAIが掘り起こすことで、顧客とのWin-Winの関係を構築しています。

ラクサスは店舗情報のデータベースを保有しており、そのデータと利用者のスマホから取得した位置情報を連携したマーケティング施策にも取り組んでます。ラクサスのアプリの利用者が、グッチやコーチといったブランドの店舗を訪問した場合、その来店情報を基に、アプリのトップ画面の商品を並び替えて、そのブランド商品を優先的に表示し、バッグと利用者の出合いを生み出しているのです。

自宅にバッグが届く際に、ゴッホやモネといった著名な画家の絵をプリントしたり、季節に応じて桜などをプリントしたりした箱に入れて届けるなど顧客満足を高める施策をラクサスでは行っています。絵画作品で届けた利用者の継続率が、1.2~1.3%向上することがわかりました。同社は小さな施策をいくつも積み重ねることで、顧客の満足度を高めています。顧客の行動を精緻に分析することで、ラクサスは着実に継続率の向上を図っています。

ラクサスは顧客との関係でも常識外の行動に出ました。クレーマーやバッグの使い方が荒い顧客には、なんとレッドカードを与え、退場させてしまうのです。例えば、クレームを受けた担当者が、「相手の言葉使いが汚い」と判断した場合には、一発で利用停止処分となります。また、バッグを貸し出す前に写真を撮影しておき、返却時にも撮影し、ユーザーを選別しています。AIが写真を分析して傷や汚れをチェックし、使い方が荒いと判断した場合には、サービスを停止してしまいます。

1%の不良顧客を放置するとサービスの質が低下します。マナーの悪い顧客は客ではないと割り切り、サービスを利用させないという強気な姿勢で望むことで、顧客との関係を改善したのです。従業員はクレーマーに対応する必要がなくなり、働き方を改善することができました。対応にかけるコストを減らせ、月額6800円でサービスを提供できるようになったのです。

ちなみに、サービスの利用停止を言い渡された顧客の9割は謝罪して、サービスの継続利用を申し出るそうです。驚くことに一度謝罪した顧客は、一転して優良顧客になることが明らかになりました。自信のあるビジネスモデルだからこそ、優良顧客だけが残るのです。顧客とのタッチポイントを意識し、小さな改善策を実施することで、ラクサスは成功を手に入れたのです。同社のサブスクリプションの取り組みから、私たちは多くのことを学べます。

まとめ

サブスクリプションモデルで成功するためには、顧客至上主義を突き詰める必要があります。顧客とのタッチポイントを分析し、小さな改善策を提供することで、顧客とのWin-Winの関係を構築できます。ファンを喜ばすことで、顧客のチャーンを防げ、継続率を向上できるようになるのです。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

Loading Facebook Comments ...

コメント