AIがファッションのサブスクを進化させる?『洋服借り放題』のメチャカリの躍進の秘密

サブスク事業の利点は積み上げ式で、会員の増加と共に安定して収益を得られる点にある。たとえ、ストライプが明日から広告宣伝を完全にストップしたとしても、会員が辞めない限りは安定的な収益が見込める。モノのサブスクの草分けであるメチャカリの収益水準が黒字に達したことは、サブスクという消費形態の日本定着に向けた大きな前進と言えよう。(日経クロストレンド)


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『洋服借り放題』のメチャカリとは何か?

日経クロストレンドサブスクリプション2.0 衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル書評を続けます。 私たちのライフスタイルの中にもサブスクが浸透し始めました。SpotifyやNetflixだけでなく、ファッション分野でもサブスクが当たり前になってきました。今日はファッション業界の成功事例であるメチャカリを紹介したいと思います。

メチャカリは月額5,800円(税別)で3枠までストライプが展開するブランドの最新作を借りられます。メーカー発の「アパレルレンタルサービス」として2015年9月にビジネスをスタートしています。利用は簡単で、スマートフォン向けアプリを使うことで、ストライプのブランドの洋服を選んで借りられるのが特徴です。借りた洋服を返却すれば、他の新しい洋服を借りることができます。プランは月額7,800円で4着まで借りられる「スタンダード」と同5着で月額9,800円の「プレミアム」の3プランがあります。

2017年にアイドルグループの棒坂46を採用したテレビCMを放映し、メチャカリはサービスの定義を大幅に刷新します。これが同社の飛躍のきっかけになったのです。

月額制ファッションという新消費形態を定着させるには、覚えやすい言葉を作って文化を醸成する必要がある。(石川康晴)

同社の石川康晴社長は「ファッションもサブスクへ」というメッセージを打ち出すことで、世の中に「サブスク」という言葉が浸透するに連れ、認知を高めることに成功します。「ファッションのサブスクならメチャカリ」というブランド認知が進むことで、『洋服借り放題』というコミュニケーションが顧客に受け入れられるようになったのです。

このマーケティング戦略が功を奏し、有料会員数は1万2000人に達しました。昨年度は広告宣伝費を除けば、年間での黒字化が視野に入りました。一度顧客を獲得したメチャカリは、チャーンを防げれば、毎月確実に利益を出せるようになります。ファッション業界が不況の中、早くからサブスクにシフトした同社の戦略は素晴らしいと思います。

 

AIがファッションのサブスクを進化させる?

サービス設計時に重視した便益は「コスト優位性」でしたが、顧客の期待値は異なる所にありました。利用者へのアンケートから「時短」「選ぶストレスからの解放」に便益を感じている人が多いことが分かったのです。  例えば、派遣という雇用形態で働く利用者は、一定期間で職場が変わるために、転職のたびに洋服を買い換える必要があると言います。それまでに着ていた洋服は着づらくなり、タンスに不良在庫が増えていきます。借りられる洋服も「オフィスカジュアル系の人気が高い」ことがデータ分析で明らかになりました。

ストライプはデータで利用者のニーズを読み解き、「圧倒的利便性」をサービス価値として提供することを重視する。圧倒的利便性を提供するために強化に取り組んでいるのが「提案力の向上」だ。

メチャカリの利用者が新しい洋服を借りる場合、それまで借りていた洋服を一度返却する必要があります。この返却時のチャーンを防ぐことが重要なのです。次に借りたい洋服が見つからないと、そのまま解約されてしまいます。常時1万点を超える商品を同社は貸し出しているため、メチャカリの有料会員に登録するような層にとって、借りたい洋服がないということはあり得ません。逆に、商品数が膨大すぎるがゆえに、探せない可能性が高いのです。

そこで、ストライプは借りていた洋服を返却して枠が空いた瞬間に、データに基づき利用者の趣味に合った洋服を推奨するマーケティング施策を強化しました。同社はAIのコーディネート提案で顧客の時短を実現したのです。

ストライプは新たにDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を導入。提案力向上を実現するためのデータ取得は、既に始めている。アプリ上にストライプで制作したコーディネート写真を投稿して、それぞれのコーディネートには「ママコーデ」「オフィスカジュアル」「女子会コーデ」といったメタデータを付与することで、利用者の閲覧情報から好みを分析。このデータを基に利用者に合わせた提案をする。

チャットとAI(人工知能)を活用して、利用者の嗜好性に合ったコーディネートを提案する「パーソナライズスタイリングAIチャツトボット」がチャーンを防ぎ、顧客の洋服選びのストレスを減らしました。

同社はプッシュ通知を活用したレコメンデーション強化にも取り組んでいます。レンタルの枠が空いた瞬間に、アプリへのプッシュ通知で次に借りる商品をお薦めすることで、アクティブ率の向上を狙っています。会員登録から3カ月が経過すると、継続率が高くなる傾向があることがデータで明らかになっています。まずは、顧客に3カ月間、しっかり利用してもらえれば、収益の基盤を確保できるようになるのです。利益を圧迫する配送料を減らすために、借り換えの頻度も抑える必要があります。AIやチャットボットを通じて、顧客のファッション体験をよくすることができれば、ストライプの成長は続きそうです。顧客データを活用して、満足度を高めることがサブスク成功の鍵なのです。そのためにはテクノロジーを味方にすることが必要です。

まとめ

『洋服借り放題』のメチャカリの成功の秘訣は顧客データを分析し、顧客の洋服選びのストレスを減らしたことです。AIやチャットボットを通じて顧客にフィットする提案をすることでチャーンを防ぎ、同社は利益を生み出すビジネスモデルを生み出したのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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