アダム・オルターの 僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかたの書評

ジョブズをはじめとするテクノロジー企業家たちは、自分が売っているツール――ユーザーが夢中になる、すなわち抵抗できずに流されていくことを意図的に狙ってデザインされたプロダクト――が人を見境なく誘惑することを認識している。依存症患者と一般人を分ける明確な境界線は存在しない。たった1個の製品、たった1回の経験をきっかけに、誰もが依存症に転落する。(アダム・オルター)

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現代人が行動嗜癖に注意を払うべき理由

行動嗜癖という言葉をご存知でしょうか?アダム・オルター僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかたを読むと、この行動嗜癖の恐ろしさを理解できます。行動嗜癖は、アルコールやドラッグやタバコなどの物質を伴わない依存症のことです。最近ではスマートフォン、ソーシャルメディア、ゲームに依存する若者が増え、これらの新しい行動嗜癖が社会問題になっています。行動嗜癖を引き起こす体験は、長期的にウェルビーイング(心身両面での健康)を妨げることがわかっています。

iPhoneのアプリやゲーム、ソーシャルメディアは、タバコと同じく、依存症になるようにデザインされています。スティーブ・ジョブズは自分の子供達にiPadを使わせないようにしていたほどです。現在では多くのテクノロジー系プロダクトができるだけ常習させるように作られているのですから、使い方には注意を払う必要があります。

行動嗜癖で実際に発症するのは人口の数%程度だと言われていますが、軽度の行動嗜癖はかなり一般的に広がっていると著者は警告を発します。こういった依存症を抱えていると、生活の質が低下し、仕事や遊びで力を発揮できず、他人との交流も希薄になります。重度の依存症と比べれば心に与える傷は軽度だが、軽度な傷でも積み重なれば、しだいに人生の価値を著しく損なっていくはずです。

2015年に行われた調査では、2億8000万人がスマートフォン依存症であることが確認されています。仮に彼らが集まって「ノモフォビア合衆国」を結成するとしたら、中国、インド、アメリカに次いで、世界で4番目に人口の多い国ができるほどです。

2000人の若い成人被験者を対象に、コンピューター画面に出てくる一連の数字や文字に注意を集中させる実験をマイクロソフトが実施したところ、ソーシャルメディアで過ごす時間が長い被験者は、そうでない被験者に比べて、集中して課題をこなす能力が低くなっていました。自分の生産性をアップし、人生の質を高めたければ、デジタルデバイスやソーシャルメディアと距離をおくべきです。

 

デジタルデバイスやソーシャルメディアから距離をおく

子どもは生まれたときからデジタルグッズを欲しがるわけではないのに、やがて、それがないと生きていけないと考えるようになる。中学校に入る頃には、友達付き合いはリアルな世界からデジタルの世界へと移行する。1日中、そして毎日、インスタグラムで膨大な数の写真を共有し、数えきれないほどのテキストメッセージを送りあう。いったん離れるという選択肢はない。そこが自分の存在意義と友情を確認する場所だからだ。

小学校高学年あたりから、スマートフォンとソーシャルメディアの依存が始まります。問題なのはオンラインでの交流は、リアルな世界の交流と異なるだけでなく、ある種の害をまたらします。人間は共感する生き物ですが、共感力の習得には時間がかかります。ソーシャルメディアやスマートフォンが、それを養う時間を奪ってしまうのです。

72本の研究論文を分析した結果、1979年から2009年のあいだ、大学生の共感力が下がっていることが明らかになりました。彼らは他人の目線で考えることができず、他者への配慮をあまり示せません。ある調査では、10代の少女の3人に1人が、「(自分を含め、同い年くらいの子は)ソーシャルネットワークのサイトでは他人に意地悪になる」と答えました。

10代の若者たちの多くは、通話または対面のコミュニケーションを嫌います。喧嘩をするときにもテキストメッセージでやりあうそうです。ソーシャルメディアやチャットツールに依存していては、コミュニケーション能力を高められません。子供達はオンラインの世界にしがみつき、友達と一緒に「時間を使う」ことに意図的に背を向けています。

神経科学者は長年、依存症状を刺激するのはドラッグやアルコールのような物質だけで、行動はまた別の反応であると確信していた。特定の行動をすることが快感になるとしても、薬物乱用に伴うような破壊的な切迫感にはつながらないと考えていたのだ。だが最近の研究では、依存行動と薬物乱用の反応は同じであることがわかっている。どちらの場合も、脳の奥深くにあるいくつかの領域がドーパミンを放出する。ドーパミンがドーパミン受容体にくっつくと、強烈な快感が生じる。

行動に依存する脳は2つの仕事をします。多幸感を放出するドーパミンの量を少なくすることと、ドーパミン生成量が少なくなった状態への対処方法を必死に探すことです。常習者が依存対象を追い求める一方で、脳は快感を得るたびにドーパミンの放出量を減らすという、負の無限連鎖ができあがっていき、依存状態から抜け出せなくなるのです。ゲームやソーシャルメディアに依存する時間が増えるのも、この脳の仕組みによるのです。では、どうすれば、ソーシャルメディアやスマートフォンの依存から抜け出せるのでしょうか?

iPhoneなどのデジタルデバイスなしで生きていくは難しいのが現状で、それを完璧に避けることは馬鹿げています。メールやニュースアプリやソーシャルメディアを上手に使うことで、私たちはパフォーマンスを上げたり、離れた人とのコミュニケーションを上手に行えます。

デジタルデバイスやソーシャルメディアのプラス面を最大化する一方で、マイナス面を最小限にすることで、生活の質を高められます。依存状態から逃れるために、スクリーンから離れる時間を作って、自分が好きな人や仲のいい友達に直接会うようにしましょう。デジタルデバイスとリアルな人間関係を両立させることで、孤独を防げ、人生をエンジョイできるようになります。

まとめ

行動嗜癖は、アルコールやドラッグやタバコなどの物質を伴わない依存症です。最近ではスマートフォン、ソーシャルメディア、ゲームに依存する若者が増え、これらの新しい行動嗜癖が社会問題になっています。スマートフォンやソーシャルメディアに依存せずに生活の質を高めたければ、それらと適度に距離を起き、リアルな人間関係を重視すべきです。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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