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イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
著者:クレイトン・M・クリステンセン
出版社:翔泳社
本書の要約
経営学の理論を、キャリア選択やプライベートな人間関係、子育てなどに応用することにより、私たちは幸せな人生を送れるようになります。人生は選択の連続ですが、よりよく生きるためには、出世や収入アップばかりではなく、家族や友人にもしっかりと時間を配分すべきです。
自分の人生に戦略を取り入れることで、人は幸せになれる?
あなたは人生の重要な決定を、過去の事例や他人の経験を参考にして下せばいいと思うかもしれない。もちろん、過去からはできる限りのことを学ぶべきだ。過去に問題に取り組んだ研究者や、将来自分が直面しそうな問題を経験した人たちから学ぶのはよいことだ。だがそれでは、未来へ向けて船出するとき、どの情報や助言を受け入れ、どれを聞き流すべきかという、根本的な問題の解決にはならない。これに対して、確かな理論を使ってこれから起きることを予測できれば、成功するチャンス格段に高められる。 優先事項、計画と機会のバランス、資源配分がすべて組み合わさるうちに、戦略が形成される。(クレイトン・M・クリステンセン )
優先事項を明確にし、計画をしっかり練り、時には創発的なアイデアを取り入れ、明確な資源配分を行うことで、戦略が生まれます。この経営者が活用する戦略を自分の人生に取り入れることで、幸せな人生を送れるようになるのです。
人生であなたの学ぶこと、新しい体験を全て戦略に反映することで、持続的なサイクルが生まれます。 この戦略プロセスを理解しうまく運営すれば、成功するチャンス、心から愛する仕事につけるチャンスが最も高くなります。これを仕事だけに活かすのではなく、 人生すべてに応用するのです。
高い報酬、権威のある肩書き、立派なオフィスも重要ですが、それは成功したことを友人や家族に示す証でしかありません。今度、昇給すれば幸せになれるという考えを追求すると人生のバランスが崩れ、幸せが遠ざかります。
そんな時には、動機づけ理論を採用し、自分への問いかけを重ねましょう。「この仕事は、自分にとって意味があるだろうか? 」「成長する機会を与えてくれるだろうか?」「何か新しいことを学べるだろうか?」「だれかに評価され、何かを成し遂げる機会を与えてくれるだろうか?」動機づける要因が明確になれば、嫌な仕事を引き受けなくなります。
「会社の方針」「職場環境」「給与」「人との関係」などの衛生要因と動機づけ要因の両方を与えてくれる仕事が、すでに見つかっているなら、そのキャリアをしっかりと歩むようにすべきです。意図的に設定した目標をどうやって達成するかに、思考を集中すればよいのです。
こうした条件を満たすキャリアがまだ見つかっていない人は、ベンチャー企業のように、創発的戦略をとるべきです。人生での実験を繰り返し、一つひとつの経験から学びつつ、戦略を修正していきます。
キャリアを歩むうちに、自分がどのような分野の仕事なら好きになれるのか、輝けるのかがわかってくる。そのうちに動機づけ要因を最大限に高め、衛生要因を満たせる分野がきっと見つかるだろう。だが象牙の塔に閉じこもり、問題をじっと考えていれば、いつか答えがひらめくというものではない。戦略は必ずと言ってよいほど、予期された機会と予期されない機会が組み合わさって生まれる。肝心なのは、外へ出ていろんなものごとを試しながら、自分の能力と関心、優先事項が実を結びそうな分野を、身をもって知ることだ。本当にやりたいことが見つかったら、そのときが創発的戦略から意図的戦略に移行するタイミングだ。
創発的戦略と意図的戦略の概念を理解すれば、自分のキャリアでこれという仕事がまだ見つかっていない状況で、積極的に行動しないのは、時間の無駄だとわかるはずです。状況に応じて、さまざまな機会を試し、方向転換し、戦略を調整し続ければ、衛生要因を満たすとともに動機づけ要因を与えてくれる仕事が見つかります。
問題に向き合うのを先延ばしにしていると、未来の自分を後悔させてしまいます。 企業であれ人生であれ、実際の戦略は、限られた資源を何に費やすかという、日々の無数の決定から生まれます。資源配分を間違えないようにすることで、はじめて戦略が価値を持つのです。
戦略はー企業戦略であれ人生の戦略であれー時間や労力、お金をどのように費やすかという、日々の無数の決定をとおして生み出される。あなたは一瞬一瞬の時間の過ごし方や、労力とお金の費やし方に関わる一つひとつの決定をとおして、自分にとって本当に大切なのはこういうことだと、公に宣言しているのだ。
自分のもてる資源を、戦略にふさわしい方法で投資しない限り、結果は残せません。そのために、自分の資源が流れている場所に、つまり資源配分プロセスに目を配るようにすべきです。以下の2つの質問をすることで、自分の資源が正しく配分されているかを確認できます。
■自分の気にかけている大義や組織に、それだけの時間やお金を費やしているだろうか?
■家族が何より大事だと言うなら、ここ一週間の時間の使い方の選択で、家族を最優先しているだろうか?
キャリアが人生のすべてなのか?
人生は、キャリアがすべてではない。あなたが職場でどのような気分で過ごし、どれだけの時間を費やすかは、プライベートで家族や親しい友人たちと過ごす時間に影響をおよぼす。わたしの経験から言って、達成動機の高い人たちは、仕事でこうなりたいと思う自分になることに没頭して、家庭でなりたい自分になることをおろそかにしがちだ。立派な子どもを育て、伴侶との愛を深めることに時間と労力をかけても、成功したという確証が得られるのは、何年も先のことだ。その結果、キャリアに投資するあまり、家族には十分な投資をしなくなる。
人生の一つの側面をほかの側面から切り離すのは、とても難しいことです。キャリアでの優先事項、つまりあなたを仕事で幸せにする動機づけ要因は、家族、友人、信仰、健康といった、人生の幅広い優先事項の一つでしかありません。本当に仕事だけが大事なのか?仕事のみに時間を費やしてよいのか?を真剣に考えるようにすべきです。
私たちは自分の優先事項に沿った方法で、時間やお金などの資源を的確に配分しなければなりません。自分の成功を評価するものさしを、自分にとって最も重要な問題に合わせる必要があります。人生の幸せをおろそかにして、収入や出世なその短期的な目標のみに集中するのをやめなければ、未来の自分を不幸にします。
時間と労力の投資を、必要性に気づくまで後回しにしていたら、おそらくもう手遅れだろう。キャリアを軌道に乗せようというときには、人間関係への投資は後回しにできると、思いたくもなる。それではいけない。大切な人との関係に実りをもたらすには、それが必要になるずっと前から投資をするしか方法はないの 家族や親しい友人との関係は、人生の最も大きな幸せのよりどころの一つだと、わたしは心から信じている。
私は2番目の子供が生まれた後で、家族との時間をなんとか確保しようと決めました。土日の仕事はなるべく断り、少しでも子育てに時間を使うことにしたのです。15年前の自分の決断によって、私は仕事だけではない人生を送れました。仕事と家庭のバランスを取り、幸せになると決めさえすれば、仕事に偏らない人生を送れます。
人はことあるごとにただちに見返りが得られるものに、自分の資源を投資したい誘惑に駆られます。家族や友人は優しい存在で、あなたの注目を得ようとあまり非難をしないものです。しかし、あなたのキャリアを応援したいという家族の気持ちにあまりに安住してしまうと、結局は家族や仲間が離れ、不幸になることを忘れないようにしましょう。
大切な人との関係を育み、築いていかなければ、長い人生の旅路で出会う困難を乗り越えようとするとき、そばにいて支えてくれる人がいなくなり、大切な幸せのよりどころを失うことになるだろう。 意外に聞こえるかもしれないが、人間関係に幸せを求めることは、自分を幸せにしてくれそうな人を探すだけではないと、わたしは深く信じている。その逆も同じくらい大切なのだ。つまり幸せを求めることは、幸せにしてあげたいと思える人、自分を犠牲にしてでも幸せにしてあげる価値があると思える人を探すことでもある。
「伴侶がわたしに一番求めているのは、どんな用事を片づけることだろう?」と自問すること、家族に役立つ自分であることを考えることで、適切な視点をもって、ものごとを考えられるようになると著者は言います。家族のために時間と労力を費やし、自分の優先事項や望みを喜んで我慢し、相手を幸せにするために必要なことに集中することが時には必要です。大切な家族が、離れないようにするために、自分の時間配分を間違えないようにしましょう。引退した時に孤独でいる人にならないためには、人生に戦略を取り入れる必要があるのです。
創発的戦略、イノベーションのジレンマ、ジョブ理論などクリステンセン教授の有名な経営理論を人生に取り入れることで、私たちは幸せになれるのです。先ごろ亡くなった著者のメッセージをより多くの人に知ってもらうために、今日は本書を取り上げました。
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