ハイディ・グラント・ハルバーソンのやる気が上がる8つのスイッチ コロンビア大学のモチベーションの科学の書評

Business photo created by rawpixel.com – www.freepik.com

やる気が上がる8つのスイッチ コロンビア大学のモチベーションの科学 (コロンビア大学モチベーション心理学シリーズ)
著者:ハイディ・グラント・ハルバーソン
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

本書の要約

私たちは3つの軸をよくすることで、人生を変えられます。マインドセットの軸では「成長」を目指し、
自分が得るものにフォーカスし、自分に自信を持つことで、結果を出せるようになります。他人との比較をやめ、過去の自分と比較し、成長を楽しむようにしましょう。

証明マインドセットと成長マインドセット

証明マインドセットを持つ人は「すごい人と思われたい」。成長マインドセットを持つ人は「すごい人になりたい」。(ハイディ・グラント・ハルバーソン)

社会心理学者のハイディ・グラント・ハルバーソンは、モチベーションを上げるための3つの軸と8つタイプを作りました。
① マインドセットの軸=「証明」を目指すか?「成長」を目指すか?
② フォーカスの軸=得るものにフォーカスするか?失うものにフォーカスするか?
③ 自信の軸=自信が大きいか?小さいか?

タイプ1 中二病(Teenager)
タイプ2 うざいやつ(Showoff)
タイプ3 臆病者(Neurotic)
タイプ4 退屈な人(Stick in the mud)
タイプ5 やる気の空回り(Eager Beaver)
タイプ6 まじめな見習い(Alert Apprentice)
タイプ7 新星(Star Who’s (almost)Born)
タイプ8 熟練の匠(The Expert in the Making)
私たちはモチベーションを上げる3つの軸をよくすることで、自分の人生を変えられます。

マインドセットには、証明マインドセットと成長マインドセットがあります。証明マインドセットは、自分の実力を人に認めさることが目的になり、それさえできれば、努力を途中でやめてしまいます。一方の成長マインドセットの持ち主は他人の目をあまり気にしないという特徴があります。他人がたとえ認めてくれなくても、やると決めたことを日々実行します。彼らは昨日の自分をライバルにすることで、日々成長を目指します。
このマインドセットの人は、困難に直面したときも粘り強く頑張り続けます。困難を苦にせず、さらにやる気を出し、努力を重ねます。実際、多くの研究でこの成長マインドセットを持つ人は、難しいと感じれば感じるほど、さらに力を発揮できているということが明らかになっています。
 
目標を達成した場面ばかりを想像して、そのための準備を何もせずに待っている人よりも、目標を達成するために乗り越えるべき障害を考え、自分にはそれを乗り越える力があると信じて対応策を検討する人のほうが、成功する可能性はかなり高いのです。すばらしい成長の機会に恵まれたとしても「成長することなどできない」とネガティブな感情にとらわれると、現実を変えることはできません。 自分は変われると信じて、行動を起こしましょう。自信を持つことで、行動することが楽しくなります。結果ではなく、プロセスを評価すると積極的に行動できるようになります。
 
「成長すること」にフォーカスすると「仕事の意味」が変わってきます。誰でも、自分が成長している実感があるとき、仕事を心から楽しみ、喜びを感じることができます。楽しい仕事ほど、人のやる気をかき立てるものはないと考え、成長マインドセットを持つようにしましょう。

マインドセットを変える5つのステップ

ステップ1、目標を考えるときには「成長」を意識したものにする
そのためには以下のトリガーワード(引き金になる言葉)を使います。
・学び
・改善
・発展
・成長
・前進
まずは、将来的にいつも自分がこうしたいと思っていることを書き出してみみます。その後で、右の成長を意識させる言葉に言い換えてみるのです。その際、「証明」するのではなく「成長」することを意識します。以下の例を参考に、成長マインドセットを手に入れましょう!
①私はよきリーダーになりたい。→私はよきリーダーになるために必要なことを学びたい。
②時間配分をうまくしたい。→私は時間配分を上手にこなせるようなスキルを身につけたい。
③体によいものを食べ、運動を定期的にしたい。→私は食生活と生活習慣を改善していきたい。
④よい人間関係の中に身を置きたい。→私はよい人間関係を持つために必要なスキルを学びたい。
 
ステップ2、if-thenプランニングをする
「こうなったらこれをする」とあらかじめ決めておく「if-thenプランニング」を取り入れましょう。このif-thenプランニングをすることで成功確率が2倍から3倍も上がることがわかっています。「どんな行動をするかを事前に具体的に決めておく」ことで、それが実行される確率が高まります。ただ決めるのではなく、事前に「いつ」「何を」やるかを、はっきりと決めておくことで、実行できる確率は2倍から3倍も高くなります。
 
例えば、「16時になったら、何があっても、今日かけるべき電話はすべてかける」といったように決めるのです。誘惑に打ち勝ち、自分の行動をコントロールすることで、結果を出せるようになります。
①(if)もし、午前中に報告書を書き終えられなかったら、②(then)午後最初の仕事は、その報告書を書き上げることにする。
①(if)もし、同僚とのおしゃべりで仕事がはかどらないなら、②(then)おしゃべりタイムを5分と決めて、5分後には仕事に集中する
①(if)もし、午後6時になったら、②(then)会社のジムで汗を流す。

ステップ3、期待値を変えてみる

成長マインドセットを持つには今までとは違った目で世界を見直していくことが必要になるかもしれません。能力があれば何でもすぐにうまくいくという考えを捨てましょう。困難や難題にぶつかったときには逃げたり手っ取り早く解決しようとしたりするのではなく、腰を据えてじっくりと取り組むことが必要だと考えましょう。その過程でミスもするかもしれませんが、それでいいのです。

時には人の力を借りましょう。どんな人も自分一人ですべてをこなすことはできないと考え、良いチームを作るのです。

ステップ4、他の人と比べない
他人との比較をするのをやめ、自分の成長にフォーカスしましょう。昨日の自分と今日の自分を比較することが重要です。

ステップ5、根気よく続ける
気がついたときに自分のマインドセットを変えることをしていけば、そのうちにそれが自然にできるようになっていきます。何年もの間、証明することにいつも焦点を当てて考えてきたのであれば、それを変えることはすぐにはできません。自分の行動を変え、あきらめずに続けることで、成長できるようになります。

たとえ、失敗しても自分が「努力不足だった」「戦略を間違えた」「プランを練らなかった」などと考える人は、努力を続けることができます。自分でコントロールできることに原因があると考えれば「成功は自分のがんばり次第」と信じることができるからです。成長マインドセットを手に入れることで、人は結果を出せるようになります。

ポジティブ・シンキングの罠

ポジティブ・シンキングに頼り過ぎると、失敗することがあります。「非現実的な楽観主義」が目標達成を妨げてしまうのです。心理学者のガブリエル・エッティンゲンは、病的に肥満している女性たちにダイエットプログラムへの参加を依頼しました。そして参加者には事前に「このダイエットに成功できると思うか」を質問しました。プログラムの終了後の結果は「成功できると思う」と答えた人は「わからない」と答えた人より13キロも減量に成功しました。

エッティンゲンは参加者たちに、「食べ物の誘惑に打ち勝つのはたいへんだと思うか」あるいは「ドーナッツや食べ放題の誘惑に簡単に打ち勝てると思うか」を質問していました。結果は驚くべきものでした。「簡単に食べ物の誘惑に打ち勝てる」と答えた人は「そう簡単にはいかない」と答えていた人に比べて13キロも重いままだったのです。

エッティンゲンは、就職活動中の大学生や、婚活中の独身者、股関節手術をした高齢者など、他のさまざまな分野でも同様のパターンを発見しています。

現実的に物事を見て、同時に楽観的でいられる人は、就職活動では、より多くの会社に履歴書を送ります。婚活では、より多くの結婚相手の候補者にアプローチし、手術後のリハビリには、より辛抱強く取り組む傾向がありました。現実的な楽観主義者のこうした態度が、成功確率を格段に高めるのです。

「成功するのはたいへんだ」と思っている人は「最善の努力をしなければならない」と考えるので、大きな成功をつかむことができるのです。彼らは惜しみなく努力し、問題が起きることを予見し、対処方法を計画し、いざ問題が起きたら粘り強くことに当たります。その結果、成功にたどり着けるのです。

「自分の望むことしか起こらない」と考える非現実的な楽観主義者は、成功への道に転がるさまざまな障害や困難を考えに入れることができません。そして、深く考えずに、危ない賭けに出てしまいます。そんな人たちは、「成功するのは簡単ではない」と心配する人に「ネガティブな人物」とレッテルを貼ります。不安を抱く人を笑い飛ばして、障害を予測することを嫌がるのです。しかし多くの研究でも証明されている通り、「不安に思って障害を探すこと」は成功への大切なステップなのです。

では、どうやったら「現実的な楽観主義者」になれるのでしょうか?まずは「自分の前に横たわる課題や困難から逃げないで、しっかり見つめること」そして「課題や困難がどの程度のものなのかを検討すること」が重要だと著者は指摘します。

自分のゴールを明らかにし、様々なオプションを用意するのです。「プランAがだめなら、その次のプランBは?」といったように、多くの選択肢を考えておくと、成功する確率を高められます。最短距離だけでなく、寄り道や抜け道も考えておく人が最終的に目標達成する人なのです。

私たちは3つの軸をよくすることで、人生を変えられます。マインドセットの軸では「成長」を目指し、
自分が得るものにフォーカスし、自分に自信を持つことで、結果を出せるようになります。他人との比較をやめ、過去の自分と比較し、成長を楽しむようにしましょう。

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
イノベーションセレクト習慣化書評生産性向上ブログアイデアクリエイティビティライフハック
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました