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科学的に証明された究極の「なし遂げる力」
著者:ショーン・ヤング
出版社:東洋経済新報社
本書の要約
簡単なルーチンを繰り返すことで、習慣力は強化されます。脳に刻み込むパワーを活用し、やりたいことをただただ繰り返すだけで、脳はそれを自動的に記憶します。脳に新しい習慣を学ばせるには、同じような行動を組み合わせ、まず簡単なものから着手して、難しいものをやりやすくする「磁気的行動」が効果的です。
行動を繰り返すことで、習慣力が強化される!
脳の効率化は徹底している。音や匂い、風景などの情報だけではなく、人が繰り返す行動も刻み込もうとする。(ショーン・ヤング)
ショーン・ヤングの科学的に証明された究極の「なし遂げる力」の書評を続けます。 脳の効率化は徹底していて、人が繰り返す行動を脳に刻み込もうとします。たとえば、毎日同じ道を通って通勤していると、脳はこの情報を記憶して簡単にそのルートを覚えます。そのルートを通る回数が増えるほど、その情報が脳に刻み込まれ、道順を考えずに職場にたどり 着きやすくなります。
脳はこの仕組みをあらゆることに当てはめます。私たちが無自覚に見たり行ったりしているものすら、その対象になるのです。繰り返しによって習慣力が強化されますから、よい行動を意識するようにしましょう。脳は、行動が頻繁に(特に、毎日、同じ場所、同じ時間帯で)繰り返されると、覚えておく必要があるべきものだと認識します。その結果、行動を簡単に継続しやすくなります。
脳はエネルギーを浪費させないために、将来の時間を少しでも節約しようとします。アメリカ人の被験者に漢字の画像を見せる実験を行いました。漢字を見せる提示速度は極めて短時間でしたので、被験者はその画像を見たと自覚できなませんが、脳はそれを知覚できました。一方のグループには複数の漢字をそれぞれ1回のみ、もう一方のグループには(被験者の無意識に強く印象づけるという実験意図で)5回見せ、その後で被験者全員に、先ほど表示した漢字と、未見の新しい漢字を見せ、それぞれをどれくらい好むかと尋ねました。
漢字を5回提示されたグループは、1回のグループよりも、その漢字を強く好むと答えました。つまり、本人がその漢字を見たことを意識していないにもかかわらず、脳はその情報を刻み込んで、後で認識しやすくしようとしていたのです。さらに、無意識で見た漢字を好むという感情まで生じさせていました。
潜在意識に訴える広告を繰り返し見た消費者が商品を購入しやすくなる広告のパワーもこれに当たります。無意識下で何度も繰り返し訴えられることで、人はその商品に親しみやすさを覚え、良い印象を抱くようになるのです。
人間の脳は、生まれた瞬間から身近なものを記憶しようとする。赤ちゃんは、母親の声や顔を他の女性のものよりも好むのと同じように、自分と同じ人種の人たちを好きになる。
新生児の段階では特定の人種への好き嫌いが見られませんが、生後3カ月になると、自らが所属する人種や民族集団への明確な好みを示すようになることがわかっています。子供たちが自分と外見が似た人(たとえば、肌の色が同じ人)を繰り返し目にすると、”この肌の色の人は、他の肌の色の人より、親しみやすく、安全で、好ましい”という情報が脳に刻み込まれるからです。
このプロセスによって、人は人種や宗教、服装など、慣れ親しんだものを好むようになります。脳で好き嫌いが形成されるメカニズムを理解していることで、私たちは自分の好みを望ましい方向に導き、変えていけるようになります。
「磁気的行動」によって、よい習慣を身につけよう!
脳に新しい習慣を学ばせるには、同じような行動を組み合わせ、まず簡単なものから着手して、難しいものをやりやすくする「磁気的行動」と呼ぶ方法もある。
ランニングをしたければ、”靴を履く”というすでに習慣化している行動と組み合わせることを意識しましょう。靴を履くという日常的行動は脳に刻み込まれているので、革靴やカジュアルシューズの代わりにランニングシューズを履くのに、それほどの労力は必要ありません。ランニングシューズはランニングと結びついているので、履いてしまえば走ることへのハードルは低くなります。
ある行動(ランニングシューズを履く)が磁石のように作用することで、関連する別の望ましい行動(ランニング)を引き起こせるようになります。この磁気的行動によって、私も日記を習慣化できるようになりました。朝のソーシャルメディアの投稿でFacebookのアプリを閉じる際に、日記のアプリを開くことにしたのです。ソーシャルメディアという魅力あるアプリに、日記のアプリを組み合わせることで、過去になんども挫折した日記をついに習慣化できました。
オリンピックの通算最多金メダルの記録保持者であるアメリ力人水泳選手マイケル・フェルプスもこの磁気的行動で成功を手にしました。フェルプスは競技の前に決まり切った儀式を行います。彼は12歳のときから、毎回、お決まりの方法でストレッチをし、ヒップホップ音楽に耳を傾け、両腕を胸の周りで前後に揺り動かしてから、スタート台に上ります。
この儀式を始めてからスイマーとして成功を収め、自信を深めていったのです。 成功を夢見る選手たちは、フェルプスが試合前にどんな曲を聴いているのかを知りたがりますが、曲そのものに秘密があるわけではありませんん。成功のカギを握っていたのは、その曲や他のルーチンだったのです。音楽やルーチンが、フェルプスにとっての磁気的行動になり、彼のパワーを引き出していました。
フェルプスにとって、音楽を聴き、ストレッチし、腕を胸の前後で叩き合わせるのは簡単です。難しいのは、疲れていたり気分が乗らなかったりするときに、泳ぐ意欲を高めることだったのです。そんなとき、脳に刻み込まれているおなじみのルーチンが、泳ぐことを引き寄せる磁気的行動になり、彼のマインドを強化していました。
過去に成功に導いてくれた簡単なルーチンを繰り返すことで、将来にも同じような成功を達成しやすくなる。過去を振り返れば、何かを続けるのを失敗したことが思い出されるかもしれな い。外国語の勉強、楽器の練習、新製品の販売どれも長続きしなかった、と。だが、終わったことを悔やむ必要はない。過去は、新しい行動で置き換えられる。大切なのは、次に何かに挑戦するときに、それを続けるための手がかりや方法を知っていることだ。「ルーチン化する力」は、そのための強力な助けになる。
毎日運動がしたいのなら、それを行う時間を決めましょう。アラームやリマインダーを設定し、その時間に行動をスタートするのです。そして、スポーツウエアを来て、ベイビーステップで小さな運動を始めるのです。小さな行動を繰り返すことで、それが脳に刻み込まれ、続けやすくなるのです。
私も朝一で日記を書くと決め、ソーシャルメディアを磁石にすることで日記を習慣化できました。日記アプリを開いて、文章を書き始めれば、10分後には日記を書き終えています。やりたい行動を脳に刻み込むことで、習慣力が強化され、結果を出せるようになります。
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