ジョナサン・ハスケルの無形資産が経済を支配する: 資本のない資本主義の正体の書評


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無形資産が経済を支配する: 資本のない資本主義の正体
著者:ジョナサン・ハスケル
出版社:東洋経済新報社

本書の要約

GAFAが台頭する中、無形投資の増大が世の中に大きな変化を及ぼしています。有形資産とは異なる無形資産には4つのS、サンクコスト、スピルオーバー、スケーラブル、シナジーという特徴があります。無形投資が作り出すシナジーやスピルオーバーによって、強力な企業が生まれ、世の中に様々な格差を生み出しています。

無形資産の4つのS

無形投資の増大は、経営者にとって大きな意味合いを持つが、その影響は企業ごとに違う。無形資産を構築する企業はシナジーを最大化し、他人のアイデアから学ぶ(つまり他人の無形資産からのスピルオーバーを活用する)機会を作り出し、才能を慰留したいはずだ。こうした職場は、ヒップな知識ベース企業という通俗イメージにかなり近くなるだろう。(ジョナサン・ハスケル)

無形資産の特徴は、サンクコスト、スピルオーバー、スケーラブル、シナジーという「4S」で表されます。無形資産が経済的な価値を持つことで、経営が劇的に変わり始めています。無形資産が重要になる中で、経営者には今までとは異なる思考や行動が求められています。

無形資産は全体として、伝統的に支配的だった有形投資とは、かなり違う経済特性を持っています。有形資産から無形資産にシフトする中で、無形資産についての理解を深めなければ、経済的な恩恵を得られなくなります。

サンクコストとは、掛けた費用がモノとして残らないことを指します。工作機械やオフィスビルといった有形資産は、必要に応じて売却できますが、無形資産は転売しにくいという特徴があります。無形資産はノウハウであり、その企業に固有のものであることが多く、他社への利用が限られる場合があります。トヨタ自動車はカンバン生産システムに何百万ドルも投資しますが、その投資を工場から引き剥がして転売するのは不可能です。一部の研究開発は特許となって転売できますが、多くはその投資を行った企業固有のニーズにあわせたもので、知的財産市場はきわめて限られたものとなります。

無形投資の第2の特徴は、それがスピルオーバー(波及効果)を作り出すことです。製造業は工場という形の有形資産を持ち、新設計という形の無形資産を持っています。その会社が工場からの便益を最大限に獲得できるようにするためには、工場のドアに鍵をかけさえすればよいのです。しかし、設計となると、話が変わってきます。ライバル企業が製品を買って、それをリバースエンジニアリングすれば、ノウハウが盗まれます。真似をされないように特許を取ることも可能ですが、迂回発明で特許が適用できくなることも予想できます。

無形資産の3つ目の特徴はスケーラブル(拡張可能)です。ジョージア州アトランタにあるコカ・コーラ社の最も価値ある資産は無形資産です。ブランド、ライセンス合意、コカ・コーラをコカ・コーラらしい味にするシロップを製造するためのレシピなどの無形資産が彼らの強みであることは間違いありません。

コーラ製造販売事業のその他ほとんどの部分は、コカ・コーラ社とは無関係のボトリング会社が行っており、そのボトリング会社のそれぞれは、世界のある地域でコーラを生産する合意を結んでいます。こうしたボトラーたちは通常、自前のボトリング会社、営業部隊、車両群を持っています。アトランタのコカ・コーラ社が持つ無形資産は全世界にスケーリングでき、日々価値を生み出しています。コカ・コーラの製法とブランドは、コーラが1日10億杯売れようと20億杯売れようと関係ありません。

最後に、無形投資はシナジーを持つ傾向があります。スティーブ・ジョブズは音楽プレーヤーにレコードレーベルとの契約やデザインを組み合わせて、iPodを生み出しました。これはきわめて価値の高いイノベーションです。無形資産を組み合わせることで、有形資産では実現できなかったイノベーションを起こせるようになったのです。グーグル、マイクロソフト、フェイスブックは、かつての製造業の巨大企業に比べて有形資産が少なく、無形資産が多いという特徴があります。彼らをスケールさせたのは無形資産の組み合わせだったのです。

無形資産への投資が経営者にとっての大切な理由

新技術はまた、企業が無形資産に生産的な形で投資する機会を増やしているようだ。最もわかりやすいのがITだ。情報通信には多くの無形投資が必要なため、これはほとんど定義からしてITが改善すれば効率が高まる。

ウーバーが、運転手の広大なネットワークを構築するのにITを活用しました。投資収益率はスマートフォンにより激増しました。スマートフォンは人々をすばやく結びつけ、運転手の評価と乗車の料金計測を行います。スティーブ・ジョブズが生み出したiPhoneが多くのスマホメーカーに波及し、ウーバーなどのスタートアップに利益をもたらしたのです。

無形資産の便益はスピルオーバーしますから、他の企業も生産性を高められます。 ウーバーが生み出した無形資産がアジアに波及することで、グラブやゴジェックが生まれたのです。スマートフォンとソーシャルメディアによるネットワーク効果が短期間のうちに巨大ビジネスを生み出しました。

グーグル、マイクロソフトなどのIT企業も無形資産に投資して売上をスケールアップしています。スターバックスやフェイスブックはブランドとITの力で、グロバールマーケットを席捲しました。

無形投資の台頭が3つの格差を増大させています。
1、所得格差
無形投資が作り出すシナジーやスピルオーバーは、競合する企業同士の格差を増し、この格差が従業員への報酬の差を大きくしています。
2、富の格差
活発な都市には、スピルオーバーとシナジーが大量に存在します。無形投資の増大は、都市をますます魅力的な場所にするので、一等地の価格は押し上げられ、富裕層をよりリッチにします。無形投資は移動性が高いことが多いため、国境を簡単に越えられます。その結果、資本の移動性が高まり、国は課税しにくくなります。資本は圧倒的に金持が保有していますから、再分配課税により富の格差を減らすことがが難しくなるのです。
3、自尊心の格差
経済的な格差が自尊心の格差を生み出し、政治的な分裂を起こします。トランプやブレクジットも富の格差によって、生み出されたのです。

無形資産によってプレミアムが生まれ、経営を強くできます。強力なシナジー効果を生み出し、経営をスケールさせるために、経営者は無形資産への投資を怠らないようにすべきです。

無形経済によってよい組織と管理にプレミアムが生じることだ。サンクコスト、スピルオーバー、スケールやシナジーの機会が増えるので、追加の調整の必要性が高まり、このためよい組織と経営の需要が高まる。

無形資産は創発的に生み出されます。不確実性とオプション価値の創造がサンクコスト、スピルオーバー、スケールやシナジーの4Sから生み出されます。どんな企業であれ、次の収益がどこから生まれるかは確実にはわかりません。無形資産が価値を持つ社会では、不確実性が増すために、経営者は様々なオプションを試す必要があります。収益は希少性に対して生じるというルールを信じて、経営者は無形資産を構築するための投資を恐れてはいけません。無形資産はスケーラブルという特徴があるので、一旦マーケットを取れれば、追随企業を引き離せるのです。

 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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