ロルフ・ドベリのThink right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法の書評


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Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法
著者:ロルフ・ドベリ
出版社:サンマーク出版

本書の要約

私たちは、合理的に考えたり、論理的で理性的な行動をとろうとしたりするときに、一定の法則にしたがって陥る推論の誤りを犯します。この思考の落とし穴で失敗しないために、重要な選択をする時には、出来る限り慎重かつ合理的に判断を下すようにすべきです。

思考の落とし穴に気をつけろ!

(思考の落とし穴の)傾向を知っていると、自分の行動がどんな間違いにつながるかを、予測できるようになる。(ロルフ・ドベリ)

このブログでも何度も取り上げているロルフ・ドベリ氏のデビュー作が復刻されました。本書のテーマは「思考の落とし穴」で、私たちは、合理的に考えたり、論理的で理性的な行動をとろうとしたりするときに、一定の法則にしたがって陥る推論の誤りを犯します。

わたしたちはよく、誤った判断を下してしまいます。たとえば、自分の知識を「過小評価」するよりも「過大評価」することのほうがはるかに多いのですから、この対処法を考えることで、ミスを減らせます。著者は自分が体験した「思考の落とし穴」を、個人的なエピソードとともにリストにまとめ、自分のために活用していました。

ナシーム・ニコラス・タレブブラック・スワンを出版したことに刺激を受け、このリストが他者にも使えると考え、本書を出版したところ、300万部を超えるベストセラーになったのです。それほど、思考の罠に落ちる人が多いことがこの事実が証明しています。著者のリストを実践することで、多くの人が思考の落とし穴に陥ることを防ぎ、大きなダメージを受けずにすみます。

このリストや著者のエピソードを読むことで、賢くない行動をとっている人がすぐにわかり、どのように彼らと接したらよいかも学べます。この本を活用することで、よりよい選択ができるようになるのです。

文明に関係なく同じワナにかかるということは、狩猟・採集をしていたわたしたちの先祖も同じ間違いをおかしていたに違いない。  つまり、「思考の落とし穴」の中のいくつかは、原始時代から人間の中にしっかりと組みこまれている。それらはわたしたちが暮らす環境が〝突然変異〟したこととはまったく関係がないのである。

しかし、全ての思考の罠を防げると考えるのは無理があります。私たちは進化の過程で、最善の状態をよしとすれば生き残れたため、完璧を求めてこなかったのです。その間違いが深刻でさえなければ、命を守れたのです。

私たちはよりよい選択をするために、直感的な思考と論理的思考を上手に使い分けるべきです。しかし、真剣に考えなければいけない場面でも理性が調整に入る前に、直感を信じて行動してしまい、思考の落とし穴にハマってしまうのです。

わたしたちがそれほど大きな危険をおかさずに生きている限りは、わたしたちの決断が正しくても間違っていても、自然にとってはそれほど大きな問題ではないのだ。しかし、重要な場面では、どのような決断を下すべきかよく考えることが必要なのである。

私たち人間は、思考の落とし穴にハマりやすいと考え、プライベートやビジネスで重要な判断を下す際には、出来る限り慎重かつ合理的に判断を下すようにすべきです。

今日はこのリストの中から、「サンク・コストのワナ」を取り上げたいと思います。

サンクコストのワナとは?

プライベートでもビジネスでも、ひとつひとつの決定は、常に不安定な状況で下される。頭で思い描いていることは、実現するかもしれないし、しないかもしれない。だが、いつだって、その気になれば、自分で選んだ道から外れることができる。たとえば、続けてきたプロジェクトを中断し、その結果を受け入れることもできるのだ。不安定な状況であればあるほど、そうした選択は合理的な行動である。だが、「サンクコストのワナ」は”多大な”時間やお金やエネルギーや愛情を注ぎこむ場面で手ぐすねを引いている。

人は過去に費やした資金や時間を大事だと捉え、ついつい行動を継続してしまいます。投資(時間、労力、資材、資金など)が多くなればなるほど、つまり「サンクコスト」が大きくなればなるほど、プロジェクトを続けたいという欲求が高まります。

株に投資する人も、しばしば「サンクコストのワナ」の犠牲者になります。持ち株を売却するタイミングを、購入価格をもとに決定してしまうと、売却が先延ばしされます。株価が購入価格を上回っているときには売り、下回っているときには売らないという思考は、理性的な行動ではありません。購入価格を重視するのではなく、自分の株の価格がこれからどう動くかを考えなければなりません。誰もが、判断を誤る可能性はありますが、投資家は、失った金額が大きくなればなるほど、ますますその株を手放そうとしなくなります。

私もこのサンクコストの罠に陥り、何度か株で痛い目に遭いましたが、最近では損切りを早めに行い、持ち株全体での利益を重視するようになりました。私たちはプロジェクトを途中で打ち切ると、これまでしてきたことが間違っていたと認めることになることが怖いのです。しかし、意味のないプロジェクトを継続すれば、失敗を先送りできます。

サンクコストのワナは仕事でも起こりがちですが、有名なコンコルドの誤謬を知れば、失敗を減らせます。イギリスとフランスの両国とも、「超音速旅客機は決して採算がとれない」という事実に、かなり早い時期に気づいていました。それなのに彼らは巨額な資金の投入をやめませんでした。「サンクコストのワナ」は、しばしば「コンコルドの誤謬」とも呼ばれていますが、国や会社のメンツを優先すると損が、膨れがっていくことをこの事例は示しています。

何かに時間やお金を投資し続ける理由は、いくらでもある。だが、間違っている理由がーつある。すでにつぎこんだものを重視する、「もったいないから」という理由だ。ふくれあがった費用や損失を無視してこそ、合理的な決断ができる。これまでに何をどれだけ費やしていようが、現在の状況と今後の見通しだけに目を向けるべきなのだ。

このワナにハマると、費用がかさむばかりでなく、決定的な失敗に陥ります。ベトナム戦争が長引いたのも、まさしくこれが原因だと著者は言います。「サンクコストのワナ」の事例ををしっかりと頭の中に入れ、重要な決断を早めに行うようにしましょう!やめるべきタイミングを先伸ばしにすることで、損失がより大きくなります。その時間とお金を別のものに振り向けるのです。

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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