マシュー・ディクソン、ニック・トーマン、リック・デリシのおもてなし幻想の書評


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おもてなし幻想
著者:マシュー・ディクソン、ニック・トーマン、リック・デリシ
出版社:実業の日本社

本書の要約

顧客のロイヤルティを高めるために重要なことは、顧客の努力の軽減、すなわち顧客に手間をかけさせないことです。企業は、問題を解決するために顧客に課される作業量を減らし、喜びを与えるサービスではなくより手間のかからないサービスに注力すべきです。

ロイヤルティを高め、売り上げをアップさせるにはどうすべきか?

なぜ顧客はサービスの優れた会社をほめるより。サービスのお粗末な会社を切り捨てるほうがずっと早いのだろう?(マシュー・ディクソン、ニック・トーマン、リック・デリシ)

顧客の期待値が下回るサービスが提供されれば、当たり前ですが、その会社の未来は暗くなります。著者たちは、製品とサービスの優劣によって、顧客満足がどう変わるかを9万7千人の顧客に、サービスの対応経験についての統計的な調査を実施しました。その結果、「感動的な顧客サービスは、顧客ロイヤリティを上げていくことには関係がなく、ある程度の顧客サービスを行っていれば、顧客ロイヤリティは一定に保たれる」という答えが見つかったのです。

では、どうすれば、顧客との関係をよくできるのでしょうか?実は、調査から、顧客サービスはそこそこでよいことがわかりました。期待が満たされれば、その後、顧客のロイヤルティは上昇しないことが明らかになったのです。企業の認識と顧客の行動には、ズレがあったのです。大切なのは、顧客の努力の軽減、すなわち顧客に手間をかけさせないことだったのです。

ディスロイヤルティの因子を分析すると顧客がトラブル解決のための努力が大きな原因になっていることがわかりました。画一的な顧客対応も不満を高めてしまいます。実際、顧客努力の軽減を行っている企業が、ロイヤルティを飛躍させていたのです。

顧客努力が多ければ多いほど、その企業のプロダクトやサービスをリピートしなくなります。著者たちは顧客努力を減らして、ディスロイヤルティを緩和することに力を使うべきだと言います。顧客は、トラブルが起こったときにスピーディーに問題解決してくれることや、トラブルシューティングの方法が簡単にWeb上で見つかることを期待しています。「顧客の手間や努力を軽減すること」が顧客をファンにするために必要なことだったのです。

ロイヤルティを高める4つのベストプラクティス

カスタマーサービスが促すのはロイヤルティではなくディスロイヤルティ。平均的なサービス・インタラクションが顧客のロイヤルティを下げる可能性は、ロイヤルティを高める可能性の4倍ある。

まずいカスタマーサービスを行い、顧客に負荷を与えることで、ロイヤルティーよりもディスロイヤルティー(顧客のロイヤルティーを低下させること)が高まってしまうことも調査は明らかにしています。実際には、ロイヤルティを向上させない顧客サービスが多く、それが顧客の離反をもたらしているのです。

私たちは顧客努力を減らすべきで、以下の4つを実践すべきです。
1、顧客努力がそれほどいらない企業は、セルフサービス・チャネルの「有用性」を高めて顧客をそもそも電話せざるを得ない状況に置かないことで、チャネル転換を最小限に抑えています。顧客が求めるものは必要のない山ほどのオプション機能ではなく、顧客が望まない限り会社に電話する必要のない、シンプルで直感的な、問題を解決へと導くセルフサービスエクスペリエンスを作り出すことです。

2、顧客が電話せざるを得なくなったとき、(顧客にとって)努力がそれほどいらない企業は、ただ問題を解決して終わりにしません。彼らはサービス担当者に、電話をさせない仕掛けを作るように指示します。

 3、顧客努力がそれほどいらない企業はサービス担当者にサービス・インタラクションの「感情」面にうまく対応できるよう指導します。そのためにはただ感じよくすればよいわけではなく、人間の心理と行動経済学の原則に根差したさらに高度な経験工学戦術を使って、サービス担当者が顧客とのやりとりに積極的に対処できるようにする必要があります。

4、顧客努力がそれほどいらない企業は、単なるスピードと効率よりもエクスペリエンスの質を高評価するインセンティブ・システムを活用して努力いらずのエクスペリエンスを提供する権限を、現場のサービス担当者に与えています。顧客努力は、コンタクトセンター戦略というよりむしろ包括的なビジネスコンセプトだと考えるべきです。使いやすい製品を製造し、顧客が簡単に購入できるようにサポートし、努力がそれほどいらないサービスを提供できる企業が、顧客ロイヤルティという大きなリターンが得られます。

アップルの製品は買ったままのワクワク感を保持しながら、マニュアルを読まずにすぐにそれを体験できます。優れたプロダクトやサービスは顧客の時間を奪わないように設計されているのです。日本語版監修の神田昌典氏は楽天とアマゾンの買い物体験の違いを指摘します。アマゾンはストレスなく買い物ができますが、楽天では長いセールスコピーをスクロールして読まなければなりません。

顧客が多くの情報を持つ時代には、顧客の時間や手間を奪わないシンプルな設計の方が喜ばれます。顧客視点でカスタマーサポートやWEBサイト、電話対応などを見直し、顧客ロイヤリティを高めましょう。

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