アント・フィナンシャルサービスはなぜ強いのか?アリババ急成長の源泉はスマートビジネスにあるの書評


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アリババ急成長の源泉はスマートビジネスにある DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文
著者: 曽鳴
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

アリババが急成長できた理由は、小売りのあらゆる情報をデータ化し、ネットワーク化したエコシステムを一気に作り上げたことにあります。収集したビッグデータを徹底活用することで、アリババの金融部門のアント・フィナンシャルサービスは金融業界に革命を起こしたのです。

アント・フィナンシャルサービスはなぜ短期間で成長できたのか?

アントは現在、数百人民元(50ドル程度)の融資を数分で処理できる。なぜそんなことができるのか。融資希望者に対して、貸出機関は3つの基本的な問いに答えるだけでよい。融資すべきか、いくら融資するか、利子はどうするか。(曽鳴)

アント・フィナンシャルサービスがいよいよ香港市場と上海市場に同時に上場します。アントは中国最大のモバイル決済サービス「アリペイ(支付宝)」の親会社で、企業価値は1500億ドル(約16兆円)と評価されています。同社は、小さいけれどアリのように勤勉な会社に力を与えるという役割を担っていますが、同社のネーミングにアントが付けられている理由もここにあります。

では、なぜアントはこれほどまでに短期間に成長し、上場できるようになったのでしょうか?そのヒントが曽鳴アリババ急成長の源泉はスマートビジネスにあるに書かれていたので、今日は本書を参考にし、アリババやアントのフィナンシャルサービスの強みを考えてみたいと思います。著者はアリババグループの最高戦略責任者を務め、グループのデジタル化を推進したことで有名です。今はアリババグループのアカデミックカウンシルの会長として、活躍しています。

アント・フィナンシャルサービスはアリババグループのエコシステムの一部で、アリペイを運用しています。ビジネスはそれだけにとどまらず、モバイル決済、普通預金口座、投資、融資、信用スコアなどの包括的な金融サービスを提供しています。そして、彼らは顧客のビッグデータを瞬時に分析し、新たな顧客サービスを次々とリリースしています。例えば、融資を見ると他の金融機関にはない強みがあることがわかります。

同社は数分で顧客への融資を実行します。アルゴリズムが過去の取引データをもとに、その会社の業績状況、製品やサービスの市場競争力、パートナーの格付けなどを評価します。アントはそのデータを使って、よい借り手(期限通りに返済する会社)と悪い借り手(期限通りに返済しない会社)を比較し、両グループによく見られる特徴をあぶり出します。次に、これらの特徴を用いてクレジットスコアを計算します。

アントではすべての借り手、そのすべての行動データをリアルタイムで自動的に分析します。アリババグループでのあらゆる取引、売り手と買い手のあらゆるコミュニケーション、すべての行動が各企業のクレジットスコアに影響を及ぼします。

同時に、スコアを計算するアルゴリズム自体もリアルタイムで進化し、意思決定の質を少しずつ高めています。貸出額や利子を決めるには、アリババのネットワーク内で生み出される各種データの分析が必要となります。それらのデータには、売上総利益率や在庫回転率のほか、製品ライフサイクル、売り手の社会的関係や取引関係の質など、数学的にさほど精度が高くない情報も含まれています。

様々なデータを分析活用することで、同社のマイクロ融資事業は大きな成功を収めています。貸倒率は約1%で、世界銀行が算出した2018年の世界平均4%を大きく下回っています。著者はアリババが作り上げた「スマートビジネス」が同社の強みだと言います。業務上の意思決定をすべて自動化することで、アリババは意思決定をスピーディかつスマートに行っているのです。

スマートビジネスを成功させる4つのステップ

スマートビジネスを実現するには、できるだけ多くの業務上の意思決定を、人間が自身のデータ分析をもとに行うのではなく、実データに基づいて機械が行えるようにしなければならない。

こうした意思決定の変革プロセスは、以下の4つのステップから成ります。

1、顧客とのすべてのやりとりをデータ化する。
事業プロセスの中で、顧客をはじめとするネットワークメンバーとの交流やコミュニケーションの間に生まれた情報をすべて取得し、どのデータが適切かをアルゴリズムに判断させます。

2、すべての活動をソフトウェア化する。
スマートビジネスでは、ソフトウエアを使うことで、知識管理や顧客関係に留まらないすべての活動を構成し、それらに影響を与える意思決定を自動化します。

アリババグループの国内小売サイト「タオバオ」の成長は、小売プロセスのたえざるソフトウェア化に後押しされていると言います。タオバオ上でつくられた最初のソフトウェアは「ワンワン」というインスタントメッセージツールで、売り手と買い手はこれを通じて簡単に話ができるようにしました。売り手が買い手にあいさつしたり、製品を紹介したり、価格交渉したりと、従来の小売店でできるような会話が可能になったのです。

アリババはまた、売り手がさまざまな高機能オンラインショップを設計し、立ち上げるためのソフトウェアツールも開発しました。オンラインショップが稼働し始めると、売り手は他のソフトウェア製品にアクセスして、クーポンの発行、割引の提供、ロイヤルティプログラムの実施などの顧客関係を構築する活動ができます。こうした活動はすべて、相互につながり、調整されていきます。

事業活動をソフトウェア化することで、実データが事業プロセスの一環として、自動的に収集されます。それが基盤となり、AIの機械学習が効果を発揮できるようになるのです。

3、データを流す
ネットワークを流れるデータが多くなればなるほど、ビジネスはスマートになるのです。アリババというエコシステムのデータが同じように利用されるように仕掛けを作ることで、データが資産に生まれ変わったのです。

4、アルゴリズムを適用する。

すべてのオペレーションをオンラインで実施するようになったら、大量のデータを扱うことになる。データを最大限取り入れて、解釈かつ利用するには、最適化しようとする基本的な製品ロジック、市場ダイナミクスを明確にするモデルやアルゴリズムをつくらなければならない。

タオバオは画期的なチャットボットを生み出します。このチャットボットは、タオバオを代表する経験豊かな業者たちにより「訓練」されています。同じカテゴリーの製品についてはすべてを熟知し、アリババのプラットフォームの仕組み返品条件、配送費、注文の変更方法や、顧客がよく尋ねるその他の質問について詳しいため、顧客に的確な行動を起こさせます

他社のチャットボットのように単なる静的な応答にではなく、意味理解、コンテキスト・ダイアログ、ナレッジグラフ、データマイニング、ディープラーニングなど、幅広い機械学習テクノロジーを用いて、チャットボットは顧客の問題を自動的に診断・解決する能力を素早く改善してゆきます。

チャットボットは売り手の売上げにも大きく貢献すると言います。たとえばアパレルブランドのセミル(森馬)は、チャットボットを導入することで、ポットの売上げが同社のトップ店員の26倍に上ることを発見したのです。人間の顧客担当者が複雑な問題や個人的な問題を扱う必要はなくなりませんが、よくある問い合わせにチャットボットで対応できると、本来人がやるべき仕事に優秀なスタッフを配置できます。

以上4つのステップによって、強い企業が誕生します。ビジネスのソフトウェア化によって、ワークフローや重要な関係者をオンラインで展開・管理できるようになるのです。標準規格やAPlを整備し、リアルタイムのデータフローおよびコーディネーションを可能にします。そして、機械学習アルゴリズムを適用して、「スマート」な意思決定を生み出せるようになります。当然、ビジネスがスマート化することで、リーダーの役割も従前のものとは変わります。

デジタル企業はネットワークを展開してビジョンを実現しなければならない。そのためには、ネットワークを構成する従業員やパートナー、顧客をリーダーが鼓舞する必要がある。伝統的な企業のリーダーとは違って、デジタル企業のリーダーは、明確なビジョンを持つ伝道師(エバンジェリスト)として、積極的に発言しなければならない。トップとしての立場で、デジタルエバンジェリストは、未来がどのようになるか、社会・経済・技術の変化を受けて業界がどう進化するかを理解している必要がある。

デジタルリーダーの仕事は、もはやマネジメントではなく、従業員がイノベーションを起こせるようにすることなのです。テスラのイーロン・マスクやアリババのジャック・マーがビジョンを語るデジタルエバンジェリトとして積極的に発言する理由がここにあります。

スマートビジネスモデルでは、機械学習アルゴリズムがシステム全体の効率を高めるような調整を自動的に行い、事業を少しずつ改善します。そのため、リーダーの役割も変わります。デジタルリーダーの最も重要な役割は、創造性を養うことなのです。デジタルリーダーは社員のやる気を引き出すために、イノベーションの成功率を高める必要があるのです。

アリババやアント・フィナンシャルの動きを知ることで、デジタル化の重要性が理解できます。すべてのデータを取り込み、それを機械学習することで、イノベーションが生まれ、顧客を虜にできるのです。今や日本のベンチャー企業はシリコンバレーだけでなく、アリババやテンセントの動きを注視していると言いますが、その理由がよくわかりました。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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