ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニーの書評


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ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニー
著者:トニー・シェイ、 ザッポス・ファミリー、 マーク・ダゴスティーノ
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

ザッポスのトニー・シェイはビジョナリー・カンパニーのジム・コリンズの教えを忠実に守っています。自社のコア・バリューに共感したメンバーのみを採用し、顧客と仲間を幸せにする経営によって、ザッポスをグレートな会社に成長させています。

GOOD(良いこと)はGREAT(素晴らしいこと)の最大の敵である!

私が意外に難しいと思うのは、コールセンターで働いた経験がある人を採用するときだ。研修で昔の悪習から解放しなければならないようなこともある。通話時間を最小限にする代わりに、顧客に「ワオ!」を提供するように集中することや、より良い顧客体験のためのコストは会社も歓迎することを教えている。顧客との通話を無作為に検証するチームは、「対応としては問題ないが、必ずしも素晴らしいサービスを提供していない」ときに、その担当者に助言をするようにしている。なんといっても私のお気に入りの格言は、ビジネス書の大御所ジム・コリンズの言葉、「GOOD(良いこと)はGREAT(素晴らしいこと)の最大の敵である」だから。(トニー・シェイ)

このブログでは何度もザッポスを紹介してきました。ザッポスはあのジェフ・ベゾスに見込まれ、アマゾンに買収されましたが、今でも独自経営を行い、顧客から熱狂的な支持を受けています。彼らはGOOD(良いこと)ではなく、GREAT(素晴らしいこと)な会社になることを目指しています。ザッポスのCEOのトニー・シェイはビジョナリー・カンパニーに書かれていることを実践し、親切な気持ちを世の中に伝染させています。

彼らはコールセンターのサービスが普通であることを許さず、顧客とのやりとりで気になることがあれば、他のスタッフが直接顧客に電話し、彼らの本当の課題を聞き出します。顧客を喜ばす、仲間を喜ばす、自分を喜ばすことで、ビジネスはうまく行きます。ザッポスのメンバーと癌患者の「赤い靴作戦」(#OperationRedShoes)のストーリーは感動的で、この話だけでザッポスのことを人に伝えたくなります。

今回、久々にザッポスの話を読んで、私は本書を周りの人に熱心にレコメンドしています。今日はザッポスのコアバリューについて語り、別の機会にホラクラシー(管理職のいらないマネジメント)の大変革を紹介したいと思います。(こちらにザッポスのホラクラシーの記事を公開しました!)

ブランド・ビジョン、人材獲得、社外カルチャー・トレーニング責任者のクリスタ・フォリーは、「触れ合う全ての人がカスタマー」だと言います。ザッポスは顧客を人として見ます。ザッポスと顧客にとって最善の関係は、互いに相手と真摯に向き合い、理想的な状況で、人としてふさわしい形で接することです。そのために採用する人とザッポスのコア・バリューが合致するかを見る必要があります。

ザッポスのコア・バリュー
No.1 サービスを通して「ワオー!(WOW)」という驚きの体験を届ける
No.2  変化を受け入れ、変化を推進する
No.3  楽しさとちょっと変なものを創造する
No.4  冒険好きで、創造的で、オープン・マインドであれ
No.5  成長と学びを追求する
No.6 コミュニケーションにより、オープンで誠実な人間関係を築く
No.7 ポジティブなチームとファミリー精神を築く
No.8 より少ないものからより多くの成果を 
No.9 情熱と強い意志を持て
No.10 謙虚であれ

「サービスを第一に考えることは、仕事と同じくらい、人生でも大切なことだ」とクリスタ・フォリーは言います。ビジネスにおいても、より人間らしく行動して、もう少し思いやりを持つことは可能です。そして、利益になることだけでなく、やるべきことをすれば、すべての人のためにより多くの「利益」を生み出すことができるのです。

ザッポスの歩みは、以下の2つの柱に集約できます。
1、コア・バリュー
ザッボスのコア・バリューは、社員を導くガードレールで、すべての決断と挑戦の基盤となっています。コア・バリューによって社員は自分の位置を常に確認することができ、コンパスが正しい方向を指していると信じて前進できます。

2、適切な人材
会社の成功はすべて、社員にかかっています。適切な人材を採用し、彼らが常に会社と顧客の最大の利益を心がけると信頼することは、ザッポスのようなビジネスを構築するうえで何よりも重要なことです。人がいなければ、会社は存在しません。そして、人を第一に考えることが、サービスそのものなのです。

優れたカスタマー・サービスとは、どのようなものでしょうか。あなたのことを心から気にかけて、あなたが当然受けるべきことを提供する権限がある人と電話で話をしたら、その日はずっと気持ちよく過ごせるでしょう。そして、自分にふさわしい扱いを受けた人は、家族や友人にその話をします。さらに家族や友人も含めて、リピーターになるのですそして、彼らはその恩を次の人に送るのです。本当なんです。親切は伝染します! (ケリー・スミス)

ザッポスは顧客がわざわざ電話をかけてきてくれる機会を、またとない好機だと捉えています。クレームに対処することで、すぐに「売り上げ」は作れませんが、彼らのネガティブな体験を聞き出し、顧客を感動させるWOWなサービスを提供すると、顧客とのつながりを作れます。一本の電話やクーポン券、顧客向けのギフトで、よい口コミやライフタイム・バリューを獲得できれば、どんなコストも安くつきます。

バスに乗る人を選べ!

バスに適切な人を乗せれば、満員のバスは自分で考えて進むのです。何が起きても、どんな障害物や落とし穴を前にしても、私たちは一緒に最善の道を見つけ出て、前に進み、乗り越えて、あるいは回り道をします。(ジーン・マーケル)

ザッポスの採用はまさに、ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則のバスの話を地で行きます。彼は最初に人を選部ことを徹底します。偉大な組織を築いた指導者は適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人を主要な席につけ、その後に、バスの行き先を決めています。

社員が会社の最大の資源なら、会社にふさわしい人を見つけるために努力するのは当然のことです。採用担当者は、最初の電話やメールでのやりとり、数回の面接など、なるべく早く応募者に私たちのコア・バリューを説明して、これらの価値観にフィットする人物かどうかを確認するために、行動に関する質問をします。優れたカスタマー・サービスについて。変化を理解すること、謙虚であること、チャンスを逃さないこと、リスクを取ること、学ぶ準備ができていることについて。(ホリー・デラニー)

ザッポスの採用は履歴書を見るだけではなく、応募者が個人としてどのような人物なのかを見極めます。最終選考では、丸1日、ときには数日間、応募者は会社で過ごさなければなりません。ザッポスの文化を体験し、それと相容れなければ入社が許されないのです。

採用されると4週間の新入社員研修が始まります。新たな「ザッポニアン」は4週間にわたり、ザッポスの歴史とコア・バリューについて、深く掘り下げて学びます。長い研修を終えて、彼らがザッポスのコア・バリューのいくつかにあまりフィットしないと判断されると、入社辞退が伝えられます。お互いが納得できない採用は意味がないとザッポスは考えます。

最高人事責任者(CHRO)のホリー・デラニーの言葉は刺さります。

私たちは人を採用するのではなく、ふさわしい人を採用しているのですから。サービス第一主義の考え方ができる人。自分が私たちと合っていると思うから、私たちと働きたい人。ほとんどの人は、私と同じように、ここで長く働くことになるでしょう。私たちがこれまで一生懸命に働いてきたことを彼らが引き継いで、会社をさらに良くしてくれることを願っています。(ホリー・デラニー)

半年、10カ月、1年と働き続けて、結局辞めることになれば、ザッポスは最初から採用をやり直さなければなりません。ザッボスでは新入社員研修を修了する前に会社を辞めることができて、その場合は給料1カ月分を支給するそうです。 

ザッポスの社員は顧客を喜ばすために、様々な権限や予算を与えられています。顧客も気持ちがよくなってザッポスのファンになり、自分や仲間の気持ちがよくなることで、会社は成長します。小さな共感は大きな効果をもたらすことをNPSが証明しています。ザッボスではあらゆるソーシャルメディアのコメントを追跡して、「推奨者」と「中立者」の割合をもとに、顧客ロイヤルティを随時確認しています。靴業界では一般に肯定的な評価が約60%ですが、ザッボスは約90%を維持しています。

ブランド戦略担当のケリー・スミスは、「顧客にポジティブな体験を提供することによつて、実際に世の中をより良くしている」と言います。 顧客体験を高める様々なサービスには、コストがかかりますが、これはブランドへの投資なのです。ザッポスは、スーパーボウルに1回CMを出すより遥かに安い費用で、何千人もの顧客をファンにしています。

ザッポスの売り上げデータを見ると、サービスで問題を経験した人のほうが、継続して利用する傾向が見られることがわかりました。例えば、2017年のクリスマスに、返品した人や返金を申し出た人を追跡調査したところ、ザッポスのサイトを再び訪れて、さらに多くの買い物をした人が、平均的な顧客よりも多かったのです。その後もしばらく追跡調査をしたところ、何か問題が起きるたびに、顧客を大切にして対応すれば、平均より長い生涯価値をもたらすことが裏付けられたのです。

COOのアラン・ラジャンは、「ダウンストリーム・インパクト」と呼ぶ指標でこれを説明します。「ある顧客のために今日何かをしたら、12カ月後、18カ月後、さらにその先に、顧客はどのように振る舞うか」を数値化した数字(ダウンストリーム・インパクト)を見ると、顧客のロイヤルティと長期的な価値は、2~5倍に増えることがわかりました。

例えば、平均的な顧客がもたらす長期的な価値を200ドルとします。ザッポスのサービスで何らかの不満を体験した顧客は、その否定的な体験に肯定的な対応をされた場合、12~18カ月後に400~1000ドルの長期的価値をもたらすことが明らかになったのです。目先のコストにとらわれず、顧客体験をアップさせれば、未来の売り上げが確実に上がるのです。

マット・トーマスは『ザッポスで働くということは、「周りの人が幸せになる手助けをすれば、世界をより良い場所にすることに貢献できる」』と述べています。顧客や仲間により良い体験を提供し、幸せになってもらいたいというザッポスのカルチャーが、多くのファンを引き寄せています。ザッポスのコアバリューに共感し、同じバスに乗る人を見つけることができれば、指示を与えなくとも顧客に最高な体験を与える素晴らしいチームがつくれます!

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