デザインシンキング論文ベスト10 デザイン思考の教科書の書評 4つの恐怖を克服し、イノベーションを起こそう!


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ハーバード・ビジネス・レビュー デザインシンキング論文ベスト10 デザイン思考の教科書
著者:トム・ケリー、デイビッド・ケリー
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

私たちは、①やっかいな未知なるものへの恐れ ②評価されることへの恐れ ③第一歩を踏み出すことへの恐れ
④制御できなくなることへの恐れ によってアイデアを生み出せなくなっています。デザイン思考を取り入れ、小さな一歩を踏み出すことで、恐怖をコントロールし、イノベーションを起こせるようになるのです。

イノベーションは恐怖の克服から始まる。

ほとんどの人間は生まれながらにして創造的である。子どもの頃は空想的な遊びを大いに楽しみ、突飛な質問をしたり、よくわからないものを描いてそれを恐竜だと言ったりする。しかし成長するにつれて、社会化や学校教育により、多くの人間のこうした衝動は抑圧されていく。もっと用心深く判断し、より慎重に、より分析的になることを学習するのだ。世界は「創造的な者」と「創造的ではない者」に分けられているように見え、圧倒的多数の人が意識的あるいは無意識的に自分は後者だと諦めてしまう。(トム・ケリー、デイビッド・ケリー)

デザインコンサルティング会社のIDEOのゼネラルマネージャーのトム・ケリーと創立者兼会長であるデイビッド・ケリーは、多くの人が子供の頃の創造性を失っていると指摘します。2人は創造性を教えることよりも、子どもの頃に身に付けていた創造性を再発見させることが重要だと考え、学生たちの力を引き出す教育を行っています。

彼らは学生たちに以下の4つの恐れを克服する戦略を授けています。
■やっかいな未知なるものへの恐れ
■評価されることへの恐れ
■第一歩を踏み出すことへの恐れ
■制御できなくなることへの恐れ
この4つの恐れを克服することがイノベーションの第一歩となるのです。

スタンフォード大学教授で世界的に有名な心理学者のアルバート・バンデューラの研究によって、人は恐怖を克服できることが明らかになりました。長年ヘビ恐怖症だった人々を対象にして、徐々にヘビと接する機会を増やすことで恐怖症を克服させる試みがありました。以下の4つのステップを減ることで、ヘビ恐怖症の人たちの人生を変えることができたのです。
1、マジックミラー越しにヘビを見る。
2、開いたドア越しに観察する。
3、他者がヘビに触る様子をじっくり見て、その後、厚い革手袋をつけてみずからヘビに触る。
4、この一連の行動で、多くの人は数時間でヘビに素手で触れるようになる。

バンデューラは、この小さな成功を積み重ねていくプロセスを、「案内付きの習得」と呼んでいます。これを成し遂げた人は、治療不能と思っていたひどい恐怖心を克服するだけでなく、人生の他の領域でも不安が軽減し、うまくやれるようになったと言います。

トム・ケリーとデイビッド・ケリーの2人は、過去30年にわたり、人々の創造性を妨げる恐れを克服できるように支援を行ってきました。課題を小さな段階に分け、一つずつ成し遂げることで、自信がつくというルールを教育に持ち込み、学生たちのマインドセットを変えていったのです。

ビジネスにおける創造的思考は、顧客(社内外を問わない)への共感とともに始まる。机に座っていては得ることはできない。たしかに、オフィスの中は快適である。すべて安心感のある慣れ親しんだものばかりだ。ありきたりの情報源から情報を集め、矛盾するデータは除去され無視される。外の世界はもっと混沌としている。予期せぬ発見や不確実性、聞きたくないことを言ってくる腹立たしい人々に対処しなければならない。

ビジネスで新しいアイデアを生み出したければ、オフィスから外に出て、インサイトや創造的なブレークスルーが見つけるようにすべきです。何かを学ぼうと思い切って足を踏み出せば、仮説を立てなくても、新たな情報に目を向けられるようになり、曖昧だったニーズを発見できるようになります。

■やっかいな未知なるものへの恐れを克服する。
スタンフォード・ビジネススクール教授のジェームズ・パテルの「エクストリーム・アフォーダビリティ」というクラスの学生はチームを組んで外に出ます、コンピュータサイエンティスト1人、エンジニア2人、MBAの学生1人のチームは、発展途上国の新生児のために低価格の保育器を研究し設計するものでした。彼らはこの実験をカリフォルニアで行うことは無理だと感じ、ネパールの農村部を訪れました。

そこに暮らす家族や医者と話をして、最も深刻な危険にさらされているのは、病院から遠く離れた地域で未熟児として生まれてくる子どもたちであることを理解しました。ネパールの村人が必要としていたのは、保育器ではなく、医師が近くにいない時でも、彼らが手際よくやるように、新生児を確実に暖かく保つ方法でした。

チームはこのインサイトにより、小型の「スリーピングバッグ」を設計しました。特殊な蓄熱性ワックスを入れた「赤ちゃん保温ポーチ」の価格は、従来の保育器の100分の1で、外部電源がなくても6時間まで適切な温度を保てるようにしました、このイノベーションによって、毎年生まれてくる数百万の未熟児を救えるようになったのです。

dスクールのローンチパッド・コースに参加したアクシャイ・コタリとアンキット・グプタは、「おたく」でしたが、テクノロジーに精通し、分析力も高い優秀な学生でした。彼らは、当時発売されたばかりのiPad用のニュースリーダーのアプリを設計するプロジェクトを、校外のパロアルトのカフェで行いました。

内気なコタリは見知らぬ人になかなか話しかけられませんでしたが、何とかその恐怖心を克服し、カフェの常連客に試作品を試してもらい、フィードバックを集めました。グプタは何百もの小さなバリエーションをコーディングし、毎日テストしながら、製品をアップデートしていきました。最終的に「パルス・ニュース」は、わずか数カ月後に開催された世界開発者会議でスティーブ・ジョブズから表彰を受け、1500万人がダウンロードし、アップルの殿堂入りアプリの最初の50に入りました。

恐怖を克服し、新たなプロダクトを生み出すデザイン思考

■評価されることへの恐れを克服する。

常に自分を検閲しているようでは、創造的になれるはずがない。戦いの半分は、自分を評価しないようにすることだ。直観に従ってアイデア(良いものも悪いものも)をもっと受け入れるようになれば、恐れの一部はすでに克服されている。

ビジネスの世界では、人は失敗をさらす出すことはしません。多くのビジネスパーソンは、創造性を秘めたアイデアを押し殺し、「安全な」解決法や提案にしがみ付きます。

あなたが、もしアイデア出しに恐怖感を感じたなら、バンデューラのヘビ恐怖症の患者たちのように少しずつ前に進めばよいのです。思い付いた考えを消えていくままにせず、メモ帳に書くなどして体系的につかまえるようにします。浴室にホワイトボードとペンを設置し、毎日の予定表に思考や散歩、空想のための「空白の時間」をつくるのです。

アイデアを生み出そうとする時は、10個ではなく100個挙げ、アイデアを量産します。評価は後回しにすることで、多くのアイデアを考えられるようになります。また、フィードバックする場合も、ネガティブな評価をせずに相手が次の行動を起こせるようなアドバイスをするようにしましょう。

dスクールのフィードバックでは、通常、「よい点は」から始め、「~だとよい」へと移行します。最初は肯定的なフィードバックで始め、次に一人称を使い、「これは私個人の意見にすぎませんが、お役に立てればと思っています」と、聞き手がアイデアをより受け入れやすい形で提案をしていきます。

トム・ケリーとデイビッド・ケリーはニュージーランド航空と、長距離便の顧客体験の改革に取り組みました。2人は懐疑主義と慎重さという文化規範を克服するために、突拍子もないアイデア創出を狙いとするワークショップを始めました。

ブレインストーミングを行い、経営幹部に、型にはまらない(一部はおそらく実行不可能な)コンセプトをたくさんつくってもらいました。誰もが意見を出すので、評価されることを恐れる人はいませんでした。突飛な意見を積極的に考え、判断を保留することにより、ニュージーランド航空のチームは最終的に創造的なブレークスルーを遂げたのです。それは、エコノミークラス用のフラットシート「スカイコーチ」で、新しいデザインによってそれを実現しました。スカイコーチは現在、ニュージーランド航空の多くの国際線に導入され、業界賞をいくつも獲得しています。

■第一歩を踏み出すことへの恐れを克服する
創造的なアイデアを活用したいと思っても、それを実践するには独特の難しさがあります。よいアイデアを実現するためには、計画を立てるのはやめて、ただちに始める必要があります。最善の方法は、大きな課題全体に照準を合わせるのではなく、すぐに取り組める小さな断片を見つけることです。

dスクールの卒業生でWNYCラジオ局シニアエディターのジョン・キーフは、バスの運行システムというアイデアにチャレンジします。キーフは800で始まるフリーダイヤル番号を購入し、リアルタイムでバス情報にアクセスできるようにし、それをテキスト音声変換技術にリンクさせました。バス利用者が電話をかけ、停留所番号を入力し、次のバスの位置を問い合わせるサービスを24時間以内に生み出したのです。通常バス事業者がこれをやれば、とてつもない時間がかかったはずですが、キーフはアイデアの力と実行力で短時間でシステムを完成させました。

合い言葉は「準備などはやめて、始めよう!」だ。ごく小さな1歩にして、ただちに始めるようみずからに強いる。そうすれば、最初の一歩ははるかに恐ろしいものではなくなる。先伸ばしにして不安が膨らむのを待たずに、ただヘビに1インチ近づくことを始めよう。

デザイン思考ではプロトタイプを作り、そこからフィードバックをもらうことを意識します。プランでなはく、プロトタイプを作ることを優先し、最初の一歩を踏み出すのです。

■制御できなくなることへの恐れを克服する

自信とは、単純に自分のアイデアがよいものだと信じることではない。うまくいかないアイデアは捨て去り、他者のよいアイデアを受け入れる謙虚さを持つということだ。現状維持を捨て去り、協力して取り組めば、自分の製品やチーム、事業のコントロールを断念することになる。しかし、それによって創造的な面で得るものは大きい。繰り返しになるが、始まりは小さくてよい。

難しい課題に直面しているのならば、そのテーマは初めてだというメンバーを会議に集めてみましょう。あるいは参加者のうち一番の若手に議題の設定と進行を任せ、週次会議のマンネリ化を打破するのです。

2007年に雪嵐のためにJFK国際空港が6時間閉鎖され、その後6日間にわたり旅客機運行に混乱が生じた時、ジェットブルー航空の空港計画担当ディレクターのポニー・シミは、トップダウンではなくボトムアップで、解決策についてブレインストーミングすることを提案しました。まず、最前線の従業員(パイロット、客室乗務員、運航管理者、制限区域内作業員、乗務員スケジュール管理者、その他のスタッフ)120人のチームを1日だけ招集したのです。次に、復旧に必要な活動(黄色の付箋)と、直面する困難(ピンクの付箋)を洗い出しました。その日が終わる頃には、シミの草の根的なタスクフォースは新しいインサイトに到達し、今後の方向性を決定しました。

各部署に戻った参加者たちは、その後の数カ月間、1000を超えるピンクの付箋の課題に取り組み、解決策をつくっていったのです。答えはみんなの中にあると認めることで、シミは独力では成しえないことをやり遂げました。ジェットブルー航空はいまや、大きな混乱が生じた場合に以前よりも格段に早く復旧できる力を手に入れました。

「勇気とは、小さな一歩の積み重ねにすぎない」とコンラード・ジェルジは述べていますが、恐怖を克服するためには、スタートラインで待っていてはいけません。筆者たちのアドバイスに従い、4つの恐れを振り払い、デザイン思考を身に付け、アイデアを実現するための一歩を踏み出しましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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