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不況を乗り切るマーケティング図鑑――成功企業16社でわかるサバイバル・マニュアル
著者:酒井光雄
出版社:プレジデント社
本書の要約
AIなどのテクノロジーやFacebookをはじめとしたSNSを活用したダイレクトリクールティングによって、企業は今までとは異なるアプローチで優秀な人材を見つけられるようになりました。ここから人材の流動化が起こり、強者と弱者の差がますます広がります。経営者はコロナ禍の中で変化に適応する術を本書から学べます。
ダイレクト・リクールティングの時代が到来
今回の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は、完全な終息までに時間がかかるため、生活者の消費行動はそれまで抑制されてしまいます。そのためコロナ不況からの回復も時間がかかると予想されます。あらゆる状況において3密(密閉・密集・密接)を避ける新しい生活様式を強いられる中で、いかに企業は迅速にこの苦境を乗り切るかが試されています。(酒井光雄)
今回のコロナ不況で社会の前提が激変し、企業は真剣に生き残り対策を考えなければ、生活者からそっぽをむかれてしまいます。元々、弱体化していた企業はコロナ禍により、何もしなければ、撤退を余儀なくされます。そういったが弱者はM&Aされ、人材の流動化が起きていきます。今後、時代にフィットしない古いビジネスモデルが置き換えられ、新たなサービスが次々と生まれていくはずです。
また、今回のコロナ禍でキャッシュの重要性が明らかになりました。企業は将来性のある事業分野に戦略的に投資を継続していく必要があり、企業のネットキャッシュ(キャッシュリッチの度合い)の大きさは、企業にとって大きな強みになります。当然、キャッシュリッチ企業はM&Aでも優位性を発揮します。
不況を乗り切るマーケティング図鑑で、マーケティングコンサルタントの酒井氏は、過去の不況時に企業が行った対策を研究し、以下の8つのパターンを明らかにし、それぞれの勝ち組企業を紹介しています。
1.不況耐性型 サカタのタネ、ケンタッキーフライドチキン
2.適者生存ダーウィン型 ドン・キホーテ、トレジャー・ファクトリー
3.顧客との関係づくりを強化し、需要を創造するプロモーション型 JR東海、無印良品
4.キャッシュ・コンバージョン・サイクル短縮型 Apple、Amazon
5.不況逆手型 アパグループ、ニトリホールディングス
6.リアルとバーチャルの融合最適型 Peloton、Bonobos
7.ダイレクトリクルーティング型 Linkedin、LAPRAS
8.働き方支援型 タニタ、助太刀
今日はこの中からダイレクトリクルーティング型という新たな採用法とそのケーススタディを紹介したいと思います。「ダイレクトリクルーティング」とは、企業の経営者、事業責任者、人事・採用担当者が、その企業にマッチした人材を自ら探し、ダイレクトにアプローチする採用手法です。AIなどのテクノロジーやFacebookをはじめとしたSNSを活用することで、企業は今までとは異なるアプローチで優秀な人材を見つけられるようになったのです。
LAPRAS SCOUTなどのダイレクトリクルーティングが企業の採用を変える。
日本のビジネスパーソンは日本型雇用システムに守られてきたため、自身の仕事に対するリスクヘッジやリスクマネジメントを行う風土がなく、無防備に暮らしてきた面があります。しかしながら社会構造と雇用制度が変われば、1社でいつまでも雇用が保証されることはなくなります。また不況による人員整理の対象になって初めて転職活動を始めていては手遅れになる場合もあります。社会に有益な情報発信を行い、ビジネス社会で活躍している人たちと交流を深め、人的ネットワークを世界中につくることは、これからのビジネスパーソンに欠かせない取り組みになります。また転職意向の有無にかかわらず、自分のビジネススキルを社会にアピールすれば、実力を備えた人にはチャンスが広がることにもつながってくるでしょう。
今回のコロナ禍は人材の流動化を加速します。また、副業がトレンドになる中で、新しい働き方を求めるビジネスパーソンもSNSや新しいテクノロジーを使って、パーソナルブランディングを行っています。自分のビジネススキルをアピールするベンチャーが転職意向者をサポートし、ダイレクトリクールディングのマーケットを拡大しています。
私も10年前にソーシャルメディア経由で本を出版してから、自分のキャリアを劇的に変えることができました。チャンスをつかまえたければ、自分のスキルをどんどんアウトプットすればよいのです。当時、世界的大企業から突然採用のオファーを受けたことがありますが、ネット上に情報を置くことで、自分の可能性を広げられることに気付けました。今は新たなテクノロジーによって、簡単に転職できるようになったのですから、ビジネスパーソンは遠慮せずに積極的にパーソナルブランディングを行うべきです。
今日はLAPRAS SCOUTをケーススタディに、ダイレクトリクルーティングについて考えていきます。LAPRAS SCOUTでは、従来の採用サービスのように候補者が自ら情報を入力するのではなく、TwitterやFacebookといったSNS、GitHub、Qiitaのような技術的アウトプットをクローリング技術で収集し、それらを個人に紐付けてポートフォリオを自動生成します。
LAPRAS SCOUTは、AI技術をもとにインターネット上のデータから他のサービスでは見つからない
トップレベルのエンジニアの情報を自動的に取得します。また個々のエンジニアの能力を分析し、
本人が入力した転職意欲など確かな情報を元に貴社に最適な候補者を採用します。(LAPRAS SCOUTのHPより)
紐付けられた情報は、機械学習を活用して解析し、従来の履歴書ではわからなかったスキルや志向性を企業は可視化できるようになりました。例えばその人は以前の勤務先を何年で退職し、現在の企業は平均して何年で人が辞めるかなどをAIが分析します。またSNS上に転職に関する言葉を使った投稿をすると自動検知して、離職スコアに反映していきます。
LAPRAS SCOUTがネット上から収集・紐付け・解析した候補者のポートフォリオ数は150万件を超え、日本国内のエンジニア職種に特化した採用サービスでは最多の実績を誇っています。
企業が希望する人材について採用条件を入力すると、インターネット上のオープンデータの中から最適な候補者を、独自のアルゴリズムを使って推奨します。企業が情報をフィードバックするごとに、レコメンドの精度がアップしてきます。
採用したい人材を貯めておく「タレントプール」には、LAPLASが見つけた候補者はもとより、リファラル(社員からの紹介)など他から集まった候補者も含めて一括管理できるようになります。また、Google Chromeのブラウザ用拡張機能を使うことで、SNSページから直接LAPRAS SCOUTの候補者プロフィールが確認でき、タレントプールに追加できます。
タレントプール内の候補者が転職を検討する可能性があると知らせてくるタレントプール内の候補者がSNSに掲載した活動内容や経歴の傾向などから転職の可能性を機械学習が算出し、可能性があると判断すると、転職アラートという知らせが企業に届きます。企業は転職アラートを受け取ったら、その人にスカウトメールを送るだけで、ダイレクトに転職希望者にアプローチ可能です。
LAPLASに登録していない候補者にも、「カジュアルスカウト」という機能を使うことでアプローチが可能です。候補者にはメールで企業からカジュアルスカウトが届き、候補者がそのメールに反応すれば、カジュアル面談などの選考プロセスに移行します。あとは、面談して両者の条件をすり合わせ、合致すれば採用に至ります。採用活動のプロセスがテクノロジーにより簡略化されるだけでなく、採用コストを大幅に削減できます。当然、ミスマッチも防げ、優秀な人材を確保できるようになるのです。
著者は名刺の時代が終焉し、個人がネット上でビジネススキルをアピールする社会が始まると述べています。
ビジネスで有能な人材を採用したい場合に必須化するのは、個人のビジネススキルや実績に関するデータの有無です。企業がホームページを立ち上げて自社をアピールするのが当たり前になった現在、これからは個人が自身のビジネススキルをネット上でアピールする取り組みが必然化してきます。実名を使うSNSにはFacebookがありますが、ここはプライベートの利用が多く、ビジネススキルの向上や職探し、転職といったビジネス案件に関しては使い勝手が良くありません。そうなれば海外では既に一般化しているビジネス特化型SNSの活用が、日本でも加速していくことになります。
名刺の時代は終わり、ネット上で自分のプロフィールが検索されることが当たり前になります。ダイレクトリクルーティングが普及していく中で、インターネットやSNS上に自分のスキルを書き込んでいくことがますます重要になっていきます。日本でもそろそろビジネス特化型SNSのLinkedinが流行り始めそうです。
これまで転職する際には、求人広告・エージェントからの紹介・会社説明会・SNS・リファラル採用などの方法が使われていましたが、今後はダイレクトリクルーティングが本格化していくはずです。有能な人材を求める企業は、本人の転職意識の有無にかかわらず、ダイレクトリクルーティングを活用して、有利な条件を提示し、スカウトを行っていきます。
実力を備えたビジネスパーソンは本人に転職する気がなくても、好条件のオファーが数多く舞い込み、自分の可能性にチャレンジできるようになります。今後、大企業の優秀な社員が草刈り場になることが予想されます。ITや専門性のある知財コンサルタントや社内士業、CFOのスキルのある人間にオファーが集まるはずです。企業は自社に必要な人材をリストアップし、ダイレクトにスカウトすることで、競合に打ち勝つことができるようになります。
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